突然の動悸やめまい、発汗とともに恐怖を感じ、発作によって生活に支障をきたすパニック障害は、周囲から怠けていると誤解されることもあり、その苦しさは理解されにくいものです。パニック障害を正しく理解し、適切な支援と治療を行うことが大切です。
今回は、パニック障害の種類や症状、原因、診断基準、治療法について詳しく解説します。
パニック障害は、突然の動悸やめまい、発汗とともに恐怖を感じる精神障害です。
発作を繰り返すことで「また発作が起こるのではないか」という不安が生じ、できなくなることや行けなくなる場所が増え、生活に大きな影響を及ぼします。そのため、周囲からは怠けていると誤解されやすい疾患です。
パニック障害が進行すると、うつ病を併発する可能性もあります。
不安障害とは、過剰な不安を感じることで生活に支障をきたす疾患の総称です。不安や恐怖を実際の対象よりも過剰に大きく感じ取り、その結果として精神的および身体的に多様な影響が現れ、通常の社会生活に支障をきたす疾患を指します。
パニック障害は、不安障害の中でも「理由なく突然に起こるパニック発作」を特徴とします。検査では体の異常が見つからないことが多く、発作が繰り返されるほか、24時間いつでも発作が起こる可能性があります。
パニック障害の「パニック発作」には、同じような発作が再び起こるのではないかという「予期不安」、同じ状況で発作が起きるのではないかという場所や状況に対する不安である「広場恐怖」の症状が現れ、悪化していく可能性があります。
では、パニック発作、予期不安、広場恐怖の各症状について詳しく見ていきましょう。
パニック発作とは、繰り返される予期しない発作のことで、何の前触れもなく突然に起こります。
パニック障害の中でも最も代表的な症状であり、パニック障害と診断されるための条件となります。発作が起こると、多くの場合、強い不安や恐怖を感じます。特定の状況で生じることが多いですが、再発の頻度や状況には個人差があります。
パニック発作の主な症状:
予期不安とは、「以前に発生した症状が再び起きたらどうしよう」という恐怖を抱くことを指します。
一度パニック障害を発症すると、発作への恐怖心や不安が強くなり、それが長期間続くことが多いです。通常、予期不安は約1か月間続くことが多く、急性期や発症初期には、パニック発作が起こった時の状況がフラッシュバックのように思い出されることがあります。
しかし、治療が進み発作が起こらなくなると、予期不安も徐々に薄れていきます。
予期不安の具体例:
広場恐怖とは、「広場」に限らず、パニック障害に関連する「場所に関係する恐怖」を意味する医学用語です。
これは、以前に発作を起こした場所やそれに似ている場所に行くと、「また発作が起きるのではないか」という恐れを抱く状態を指します。
広場恐怖が現れる場所の特徴:
具体的には、駐車場や市場などの広い場所、映画館や劇場などの周囲を囲まれた場所、公共交通機関や群衆の中など、即座に逃げ出すのが困難な場所や状況において不安や恐怖が現れます。
広場恐怖が進行すると、行けない場所が増え、行動範囲が狭くなることが多いので、適切な治療と管理が重要です。

パニック障害の要因は、気質要因、環境要因、遺伝子要因・生理学的要因があります
気質要因とは、否定的な感情や不安に対して敏感であることが、パニック障害を発症する一つの要因とされるものです。
パニック障害になりやすい性格の特徴:
環境要因とは、個人の周囲の環境や経験がパニック障害の発症に寄与することを指します。
アメリカ精神医学会のDSM-5によると、以下の要因がパニック障害のリスクを高めるとされています。
遺伝子要因・生理学的要因とは、パニック障害の発症に遺伝子や生理的な要因が関与していることを指します。
以下にそれぞれの要因について詳述します。
現在、複数の遺伝子がパニック障害になりやすい特性に関係していると考えられています。家族内でパニック障害の発症率が高いことから、遺伝的な要因が影響していることが示唆されています。しかし、具体的にどの遺伝子がどのように関与しているかについては、まだ詳しく特定されていません。研究が進むにつれて、パニック障害の遺伝的基盤が明らかになることが期待されています。
生理学的な要因もパニック障害に影響を与えることがわかっています。
特に以下の点が重要です。

パニック障害は、アメリカ精神医学会が定めた診断基準であるDSM-5を用いて「パニック症」または「パニック障害」として診断されます。
DSM-5におけるパニック症/パニック障害の診断基準は以下の通りです。
A 繰り返される予測しないパニック発作とは、突然、激しい恐怖または両烈な不快感の高まりが数分以内でピークに達し、その時間内に、次の症状のうち4つ(またはそれ以上)が起こる。注:突然の高まりは、平穏状態、または不安状態から起こりうる。
B 発作のうち少なくとも1つは次に述べる1つまたは両者が1か月(またはそれ以上)続いている。
C その障害は、物質の生理学的(例:乱用薬物、医薬品),または他の医学的疾患(例:甲状腺機能亢進症、心肺疾患)によるものではない。
D その障害は、ほかの精神疾患によってうまく説明されない
(例;パニック発作が生じる状況は、社交不安症の場合のように、恐怖する社交的状況に反応して生じたものではない/局所性恐怖症のように、限定された恐怖対象または状況に反応して生じたものではいない/強迫症のように強迫観念に反応して生じたものではない/心的外傷後ストレス障害のように、外傷性出来事を想起させるものに反応して生じたものではない/分離不安症のように、愛着対象からの分離に反応して生じたものではない。)
(日本精神神経学会:編『DSM-5 精神疾患の診断・設計マニュアル』医学書院:刊 P207より引用)
パニック障害の治療方法には、主に薬物療法と精神療法の二種類があります。
症状や状態に応じて、薬の種類や量を調整しながら治療を進めます。
薬物療法は、薬を用いて治療を行う一般的な方法です。
パニック障害に対しては、パニック発作を抑えるための抗うつ剤や、精神を安定させるための抗不安剤が使用されます。
精神療法は、病気に悪影響を与える考え方や視点を変えるために医師からアドバイスを受ける方法です。
最初にカウンセリングが行われ、医師や臨床心理士が患者の本心を聞き出します。これにより、病気の原因となる問題を特定し、専門家のアドバイスを受けながら改善を図ります。
認知行動療法は、物事に対する考え方や受け止め方を見直す治療法です。
例えば、心臓が少しドキドキしただけで「死ぬのではないか」と不安になるような、薬では解決できない「考え方の癖」を自覚し、行動を改善していきます。
曝露療法(エクスポージャー)も含まれており、不安や恐怖が生じやすい場所や状況に少しずつ慣れることで、不安感を軽減します。うつ病を併発している場合にも、よく利用される療法です。
自律訓練法は、リラックスするための方法を身に付けることで、予期不安や広場恐怖などの症状を和らげる精神療法です。
感覚に過敏に反応しないようになり、不安や恐怖を自分でコントロールできるようになります。
具体的な実践方法:
パニック発作が起こった際には、上記の方法を試してみるとよいでしょう。
以上がパニック障害についてでした。
パニック障害と付き合うためには、ストレスを減らし、規則正しい生活を送ることが大切です。過労や睡眠不足もストレスの原因となるため、無理をせず、周囲の理解と協力を得ることも重要です。治療は医師の指示に従い、独断で中止しないようにしましょう。