【丁寧に解説】大動脈解離ってどんな症状からのどんな手術されるの?

はじめに

大動脈解離は、突然発症し、命に関わる可能性の高い重篤な疾患です。本記事では、大動脈解離の基本的なメカニズム、原因、症状、手術の種類、そして術後の看護について詳しく解説していきます。医療従事者の方だけでなく、一般の方にも分かりやすく説明しますので、ぜひ最後までご覧ください。

1. 大動脈解離とは?

大動脈は 外膜・中膜・内膜 の3層構造になっています。
大動脈解離とは、何らかの原因によって 内膜に亀裂が生じ、中膜が裂ける ことで発症する疾患です。この際に、内膜と中膜の間にできるスペースを 偽腔(ぎくう) と呼びます。

また、大動脈解離には以下の2種類があります。

❶ 偽腔閉鎖型

  • 偽腔が 血栓化しており、血液が流れていない状態
  • 大動脈解離が 進行しにくい ため、比較的リスクは低め。

❷ 偽腔開存型

  • 偽腔に 血液が流れ続けている状態
  • 血圧が高いと 解離が進行しやすく、危険な状態 になる可能性がある。

このように、偽腔の状態を把握することが、治療方針の決定において重要なポイントとなります。

2. 大動脈解離の原因

大動脈解離の発症には 生活習慣や疾患 など、さまざまな要因が関係しています。

  • 高血圧
  • 喫煙
  • 過度なストレス
  • 糖尿病
  • 重量挙げなどの過負荷運動
  • マルファン症候群(遺伝性疾患)
  • 交通事故などの外傷

特に 寒い季節は注意が必要 です。室内外の温度差によって血圧が急上昇し、大動脈解離を引き起こすことがあります。

3. 大動脈解離の症状

❶ 主な症状

  • 突然の激しい胸痛・背部痛
  • 痛みが移動する(解離の進行に伴う特徴的な症状)
  • 冷や汗・意識消失・吐き気

❷ 合併症

大動脈解離は、他の重篤な疾患を引き起こすことがあります。

  • 大動脈弁閉鎖不全症(AR)
    • 大動脈弁が拡張し、血液が逆流してしまう。
    • 心臓に負担がかかり、心不全や呼吸困難を引き起こす可能性。
  • 心タンポナーデ
    • 大動脈からの出血が心嚢(しんのう)に溜まり、心臓が圧迫される。
    • 血圧低下やショック状態 になり、非常に危険。

大動脈解離は 緊急性・重症度が極めて高い疾患 であり、迅速な治療が求められます。

4. 大動脈解離の分類と治療方針

治療方針を決定する際に、 Stanford(スタンフォード)分類 という基準が使われます。

分類特徴治療方針
A型上行大動脈 に解離がある緊急手術(人工血管置換術)
B型上行大動脈に解離なし内科的治療(血圧管理など)

特に Stanford A型 の場合、発症から 48時間以内に破裂するリスクが高く、合併症を併発しやすいため、 緊急手術 が必要となります。

5. 大動脈解離の手術:人工血管置換術

手術では、損傷した大動脈の一部を 人工血管 に置き換えます。

❶ 標的となる部位

  • 大動脈弓部(脳や腕に向かう重要な血管が分岐する部分)

❷ 手術の種類

手術の方法は 置換する範囲 によって異なります。

手術名置換範囲
部分弓部大動脈置換術(ヘミアーチ)1~2本の血管+大動脈弓部の一部
全弓部大動脈置換術(トータルアーチ)3本の血管+大動脈弓部全体

❸ 手術中の工夫

  • 人工心肺装置の使用(血流を維持するため)
  • 脳分離循環法(脳への血流を確保)
    • 順行性選択的脳灌流(SCP)
    • 逆行性脳灌流(RCP)

6. 術後の看護ポイント

大動脈解離の手術後は、以下の点に特に注意が必要です。

❶ 出血リスク

  • 術中の人工心肺使用で血小板が消費される
  • 低体温管理による凝固異常
  • 抗凝固薬の影響

看護ポイント

  • 体温管理(電気毛布で保温)
  • 血圧コントロール(降圧剤の使用)
  • ドレーンの観察(出血の有無)

❷ 脳梗塞・脳出血リスク

手術中に脳の血流が一時的に遮断されるため、術後の神経症状に注意します。

看護ポイント

  • 意識レベルの確認
  • 四肢運動のチェック
  • 瞳孔反射の確認

❸ 呼吸・嚥下機能の低下

  • 人工呼吸器関連肺炎のリスク
  • 手術による反回神経損傷で嚥下障害のリスク

看護ポイント

  • 口腔ケアを徹底
  • 早期離床・リハビリ
  • 言語聴覚士(ST)と連携し、嚥下機能評価を実施

7. まとめ

大動脈解離は緊急性・重症度ともに高い疾患である
手術後は出血・脳梗塞・呼吸機能に注意し、適切なケアを行うことが重要
多職種連携を活用し、質の高いケアを提供することが求められる

本記事では、大動脈解離の 原因・症状・手術・術後管理 について詳しく解説しました。特に医療従事者の方にとって、 術後管理の重要性 を理解することが患者の回復に大きく影響します。迅速かつ適切な対応を心がけましょう。