敗血症性ショックは、適切な対応が遅れると生命に関わる危険な状態です。
本記事では、敗血症および敗血症性ショックについて詳しく解説し、適切な観察ポイントや治療法についてもご紹介します。

敗血症性ショックを理解するためには、まず敗血症そのものについて知ることが重要です。
日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG)では、敗血症を 「感染に対する調節不能な宿主反応によって重篤な臓器障害が引き起こされた状態」 と定義しています。
つまり、細菌やウイルスなどの感染症に対する免疫反応が過剰に働くことで、体に大きな負担がかかり、臓器が正常に機能しなくなる病態を指します。
敗血症の診断には SOFA(Sequential Organ Failure Assessment)スコア が用いられます。
これは、ICU(集中治療室)などで重症患者の臓器障害の程度を評価する指標です。
特に、感染が疑われる患者において SOFAスコアが2点以上急上昇した場合、敗血症と診断されます。
ICU以外の一般病棟や救急外来では、簡便な評価方法として クイックSOFA(qSOFA) が活用されます。
これは、次の3項目のうち 2項目以上を満たす場合 に敗血症の可能性が高く、集中治療が必要と判断されます。
敗血症の治療では、まず感染症に対する適切な抗菌薬(抗生剤)の投与が行われます。
感染源の特定と早期治療が鍵となるため、迅速な対応が求められます。

敗血症の中でも特に重篤な状態が 敗血症性ショック です。
日本版敗血症診療ガイドラインでは、これを「敗血症のなかで循環障害や細胞レベルでの代謝異常によって死亡率を増加させる可能性のある状態」と定義しています。
敗血症に加えて、以下の 2つの条件 を満たす場合、敗血症性ショックと診断されます。
ここで注意が必要なのは、「低血圧 = ショック」ではない という点です。
ショックとは、組織への血流が低下し、酸素が十分に供給されなくなった状態 を指します。
つまり、血圧が90mmHg以下であっても、組織への酸素供給が保たれていればショックとは限りません。逆に、血圧が正常範囲でも組織の酸素不足があればショック状態に陥る可能性があります。
敗血症性ショックを理解するためには、次の 2つのキーワード が重要です。

敗血症では、感染症による全身性の炎症反応が引き起こされます。
この際、ヒスタミンや一酸化窒素、炎症性サイトカインといった物質が放出され、血管が拡張します。
炎症による血管拡張は、以下のような症状を引き起こします。
血液中の酸素は ヘモグロビン によって運ばれるため、血流が低下すると酸素供給も不足します。
さらに、血管内の水分量が低下すると、心臓が送り出す血液量も減少し、血圧が低下してしまうのです。
血中乳酸値は、細胞への酸素供給不足を反映する重要な指標です。
私たちの体はエネルギーを作るために ATP という物質を合成します。
ATPの生成には 酸素 が必要ですが、ショック状態に陥ると酸素供給が不足し、代わりに 嫌気代謝(酸素を使わない代謝) が行われます。その結果、副産物として 乳酸 が産生されるのです。
血中乳酸値の上昇は 組織レベルでの酸素不足 を意味します。
ただし、他の要因でも乳酸値が上昇することがあるため、医師による総合的な判断が必要です。

敗血症では、臓器障害の有無や酸素供給の評価が非常に重要です。
これらは、血液検査データだけでなく、患者の身体所見からも判断できる ことが多いです。
脳は 酸素不足に最も敏感な臓器 です。そのため、酸素供給が低下すると 不穏状態や意識レベルの低下 が現れます。些細な変化でも注意を払い、早期に異常を察知することが大切です。
腎臓もまた血流の低下や酸素不足に敏感です。敗血症性ショックでは、腎機能の低下により 尿量の減少(乏尿) が見られます。目安として、0.5mL/kg/hr以下 の尿量は要注意です。
敗血症性ショックでは、膝や前胸部に紫色のまだら模様(網状皮斑)が見られることがあります。
これはショックの重要なサインであり、予後を判断する指標としても利用されます。
敗血症性ショックの早期発見と迅速な対応が、患者の予後を大きく左右します。
適切な観察と判断が求められる疾患であることを理解し、日々の医療現場で活かしましょう。