今回は 心電図(ECG:Electrocardiogram) について詳しく解説していきます。前回の記事で 心筋梗塞 に触れた際に、心電図について少し説明しましたが、皆さんは心電図の解析が得意でしょうか?
私自身、最初は心電図の波形を見ても全く理解できませんでした。しかし、後輩から質問を受けた際に「きちんと説明できるようになりたい!」という気持ちが湧き、勉強を重ねることで少しずつ理解を深めることができました。
本記事では、心電図の基本から 波形の読み解き方のポイント までをわかりやすく説明します。必要な部分をスキップして読んでいただいても構いませんので、ぜひ最後までお付き合いください。

まず、心電図を理解するうえで重要な 生理学の基礎 からおさらいしましょう。
心臓は 電気刺激 を発生させ、その電気を利用して 心房 → 心室 の順に筋肉を収縮させることで、ポンプとしての役割を果たしています。この 電気活動の様子 を記録し、心臓の異常を調べる検査の一つが 心電図 です。
それでは、心臓の電気刺激がどのように伝わり、心筋が収縮するのかを詳しく見ていきましょう。
心電図を読み解くためには、心臓内での電気刺激の伝わり方(刺激伝導系)を理解することが不可欠 です。しかし、難しく感じるかもしれませんが、基本を押さえれば理解はそれほど難しくありません。
心臓の電気刺激の伝わる順番は以下の通りです。
このように、心臓の電気刺激は 洞結節 → 房室結節 → ヒス束 → 右脚・左脚 → プルキンエ線維 の順に伝わり、心筋の効率的な収縮を実現しています。
心電図の波形 は、心臓の各部位の電気活動を反映しており、それぞれの波形には意味があります。
正常な心電図の波形(Ⅱ誘導) を例に、波形の名称と役割を確認しましょう。
| 波形 | 説明 |
| P波 | 心房の収縮(脱分極)を示す。 |
| QRS波 | 心室の収縮(脱分極)を示す。Q波・R波・S波に分かれる。 |
| T波 | 心室の拡張(再分極)を示す。 |
| ST部分 | 心筋が強く興奮している時間帯。心筋梗塞の診断に重要。 |
特に QRS波 は心室の収縮の強さを示し、その形状や大きさが異常を示す重要なポイントになります。

心電図を正しく解釈するために、以下の2つのルールを理解しておくことが重要です。
① 電気はプラスからマイナスへ流れる
電気の流れの方向を理解すると、心電図波形の意味が見えてきます。
② 電極に近づく電気は上向き、離れる電気は下向きに波形が振れる
例えば、Ⅱ誘導のP波は上向き です。これは、洞結節から発生した電気が 心房全体に広がり、電極(Ⅱ誘導)に向かって進む ためです。
同じように、QRS波のR波が上向き なのは、心室の収縮の電気が電極に向かって進むためです。
このルールをもとに 異常な波形(ST上昇・異常Q波・逆転T波など) を見つけることができるようになります。
T波が なぜ上向きなのか を説明します。
心臓が興奮していないとき、細胞内は マイナスの電位 になっています。脱分極が始まると、電気刺激が心室の 内側から外側へ 流れます(QRS波)。
しかし、再分極の際には 外側から内側へ電気が戻る ため、波形の向きが プラス(上向き) になるのです。
この成り立ちを理解すると、異常T波(陰性T波など)の解釈も容易になります。
心電図を読み解くために必要なポイントは以下の2つです。
この2つと 刺激伝導系の流れ を押さえておけば、心電図の理解が深まり、異常波形にも気づきやすくなります。
ただし、心電図はあくまで 検査の1つ です。看護師や医師としては、波形を読むだけでなく、波形の変化に気づき、緊急性を判断し、適切な対応を取ることが求められます。
次回は 十二誘導心電図 について詳しく解説しますので、お楽しみに!