敗血症性ショック②

敗血症とは?

敗血症とは?

敗血症(Sepsis)とは、感染症による全身性の炎症反応が過剰に働き、臓器障害を引き起こす状態を指します。敗血症が進行し、輸液を大量に投与しても血圧が回復しない状態や、乳酸値の上昇を伴う場合は「敗血症性ショック(Septic Shock)」と呼ばれ、生命の危機に直結します。

ここで重要なのは、「ショック=低血圧」とは限らないという点です。ショックとは、組織への酸素供給が不十分な状態を指し、低血圧だけでなく、細胞レベルでの代謝異常が進行していることが特徴です。

敗血症の初期治療

敗血症の初期治療

敗血症の治療は時間との戦いです。迅速な介入が必要であり、特に初期治療は以下の3つが重要になります。

  • 抗生剤の投与(感染源の制御)
  • 酸素投与と人工呼吸管理(組織への酸素供給)
  • 大量輸液と昇圧剤の使用(血圧と循環動態の安定化)

① 抗生剤の投与

敗血症の原因は細菌感染によるものが多いため、適切な抗生剤の投与が治療の最優先事項となります。しかし、感染源となる菌を特定する細菌培養検査には2~4日程度かかるため、治療を待つことはできません。

初期治療の抗生剤選択

  • 培養結果が出る前:広域抗生剤(グラム陽性菌・陰性菌・嫌気性菌に幅広く効くもの)
  • 培養結果が判明:原因菌に適した抗生剤に切り替え

注意点

抗生剤の長期投与は、耐性菌の発生を引き起こすリスクがあるため、培養結果が判明し次第、適切な抗生剤へ変更することが重要です。

② 酸素投与と人工呼吸管理

敗血症では全身の血管透過性が亢進(こうしん)し、組織への酸素供給が低下するため、十分な酸素供給が必要となります。

酸素投与の方法

  • 軽度の場合:酸素カニューレや酸素マスク
  • 酸素化不良(PaO₂ 低下、SpO₂ 低下):リザーバーマスクや人工呼吸器管理が必要

敗血症による肺の障害(肺水腫(すいしゅ))

  • 血管透過性の亢進により肺の毛細血管から水分が漏れ出す
  • 肺胞が水浸しになり、酸素の取り込みが困難となる(ARDS/急性呼吸窮迫症候群)
  • 人工呼吸管理やPEEP(呼気終末陽圧)をかけることで酸素化を改善

呼吸状態の評価

  • SpO₂(経皮(けいひ)的酸素飽和度)
  • PaO₂(動脈血酸素分圧)
  • 呼吸様式(頻呼吸、努力呼吸、チアノーゼの有無)

低酸素の兆候を見逃さず、迅速な対応が必要です。

③ 大量輸液の投与

敗血症では、血管透過性の亢進により血管内の水分が外へ漏れ出すため、血圧低下(循環不全)が起こります。そのため、十分な血液循環を維持するために大量輸液が必要になります。

目標輸液量

30ml/kg以上の輸液を投与(生理食塩水、乳酸リンゲル液などの晶質(しょうしつ)液が第一選択)

大量輸液のリスク

  • 過剰輸液による心不全の悪化
  • 生理食塩水の大量投与による高クロール性アシドーシス(血圧低下・臓器血流低下・凝固異常)

心機能のモニタリング

  • 敗血症の患者には心不全の合併がある場合も多く、過剰な輸液による心負荷増加に注意が必要
  • インアウトバランス(水分出納(すいとう))を確認しながら輸液量を調整

④ 昇圧剤(ノルアドレナリン)の使用

大量輸液を行っても血圧が改善しない場合、昇圧剤(ノルアドレナリン)を投与します。

昇圧剤の作用

ノルアドレナリンは、α1受容体を刺激して血管を収縮させ、血圧を上昇させる薬剤です。これにより、血管拡張によって低下した後負荷(こうふか)を回復させます。

ノルアドレナリンの使用方法

  • シリンジポンプを用いて持続投与
  • 急に中断すると血圧低下が起こるため、2台のポンプでシリンジ交換時の血圧低下を防ぐ
  • 平均血圧(MAP)65mmHg以上を目標に調整

ノルアドレナリンの副作用

末梢血管収縮により、皮膚血流が低下し皮膚トラブルの原因となるため注意。

まとめ

敗血症の初期治療は迅速な対応が求められます。特に、以下のポイントが重要です。

抗生剤の適切な投与

広域抗生剤を早期投与 → 原因菌が判明次第、適切な抗生剤へ変更。

十分な酸素投与

低酸素の兆候(SpO₂低下・頻呼吸・努力呼吸)を見逃さず、適切な酸素投与を行う。

大量輸液の投与

  • 30ml/kgの輸液を投与し、血圧と循環動態を安定化
  • 心機能が低下している場合は、過剰輸液による心不全悪化に注意

昇圧剤(ノルアドレナリン)の使用

血管収縮作用により血圧を安定させるが、皮膚トラブルに注意。

敗血症性ショックは一刻を争う状態です。看護師は治療の目的を十分に理解し、迅速な判断と対応が求められます。