
今回は「頭蓋内圧亢進(Intracranial Pressure Elevation)」について詳しく解説していきます。
私たちの脳は、頭蓋骨という硬い殻の中で守られており、通常、「脳(約87%)」「脳脊髄液(約9%)」「血液(約4%)」の3つの要素が適切なバランスを保っています。これらのバランスが崩れずに維持されていることで、健康な状態が保たれています。
しかし、何らかの原因によってこのバランスが崩れてしまうと、頭蓋内圧が上昇し(頭蓋内圧亢進)、脳にダメージを与え、さまざまな症状を引き起こします。
それでは、頭蓋内圧亢進がどのような原因で発生し、どのような症状が現れるのかを見ていきましょう。
頭蓋内圧亢進が起こる主な原因は、以下のようなものがあります。
これらの原因を見てみると、共通しているのは「頭蓋骨の中の容量が増えることによる圧迫」です。頭蓋骨は伸縮性がないため、わずかなバランスの変化でも大きな影響を及ぼします。
頭蓋内圧亢進による症状として、以下のものが挙げられます。
1. 頭痛
頭蓋内圧が上昇すると、頭蓋内の痛覚を司る構造が刺激され、持続的な頭痛が発生します。特に朝方に強く、横になっていると悪化することが多いです。
2. 吐き気・嘔吐
頭蓋内圧が上がることで、延髄にある嘔吐中枢が刺激され、吐き気や突然の嘔吐が起こることがあります。特に消化器疾患とは異なり、食後や特定の動作に関係なく嘔吐することが特徴です。
3. うっ血乳頭
眼底検査で確認される特徴的な所見で、視神経乳頭の腫れが見られます。自覚症状が出にくいため、診断には眼科的検査が必要です。
4. クッシング現象
頭蓋内圧亢進に伴い、「収縮期血圧の上昇」と「徐脈(脈拍の低下)」が同時に起こる現象です。
これは、脳への血流が低下した際に交感神経が刺激されて血圧を上昇させる一方で、血圧を安定させるために心拍数が減少することによって発生します。
この現象が見られた場合、頭蓋内圧亢進の可能性が高いため、迅速な対応が必要となります。
5. 意識障害
頭蓋内圧の上昇が進行すると、脳の機能が低下し、意識障害が現れます。
軽度では「ぼんやりする」「反応が鈍くなる」といった症状ですが、重度になると昏睡状態に至ることもあります。
6. 複視(ものが二重に見える)
外転神経(眼球を動かす神経)の麻痺によって、ものが二重に見える症状(複視)が現れます。
外転神経は脳神経の中で最も長い経路を通るため、頭蓋内圧亢進の影響を受けやすい神経の一つです。
頭蓋内圧が持続的に上昇すると、「脳ヘルニア」を引き起こすリスクが高まります。
脳ヘルニアとは、頭蓋内の圧力が極端に高まることで、脳の一部が正常な位置から押し出されてしまう状態です。
初期症状としては、以下のものがあります。
さらに進行すると、両側瞳孔の散大、呼吸停止、心停止が発生し、最終的には死に至る危険があります。
そのため、頭蓋内圧亢進が疑われた場合、できるだけ早急に対応することが重要です。
頭蓋内圧亢進の治療では、脳ヘルニアへ移行させないことが最も重要です。主に以下の方法が取られます。
1. 内科的治療
2. 外科的治療
治療を行う際には、医療スタッフ間の迅速な連携が不可欠です。特に看護師は、患者の状態を観察し、異常があればすぐに医師へ報告することが求められます。
また、患者自身も不安な状態にあるため、精神的なケアが重要です。患者の話に耳を傾け、安心できる声かけを行うことで、精神的な負担を軽減できます。看護師の一言が、患者の安心感につながることを忘れてはいけません。

今回は「頭蓋内圧亢進」について詳しく解説しました。
頭蓋内圧亢進は、命に関わる重大な状態であり、迅速な対応が求められます。症状の特徴を理解し、適切な対処ができるよう、常に知識を深めておくことが大切です。
この記事が、少しでも皆さんのお役に立てれば幸いです。