敗血症(はいけつしょう)とは、感染症が原因で全身に炎症反応が広がり、臓器障害を引き起こす重篤な状態を指します。特に高齢者や免疫機能が低下している方、糖尿病を持つ方は発症リスクが高いとされています。一般的に、細菌が体内に侵入しても、免疫機能が適切に働くことで自然に治癒することが多いですが、免疫が対応できなかったり、抗生剤が効果を発揮しなかったりすると、細菌が増殖し毒素やサイトカインの過剰産生が起こります。これにより、身体に悪影響を及ぼし、重症化することがあります。
本記事では、敗血症の定義、病態、診断基準、治療方法について詳しく解説していきます。

敗血症は、感染症が原因で引き起こされる全身性の炎症反応と臓器障害を伴う病態です。通常、免疫系が病原体を排除し、感染を制御しますが、敗血症では免疫反応が過剰に働くことで、健康な組織まで損傷されてしまいます。
このような過剰な免疫反応は、「サイトカインストーム」とも呼ばれ、全身に異常な炎症を引き起こします。サイトカインとは、細胞が分泌するタンパク質で、免疫細胞の活性化や情報伝達を担っています。通常、炎症を引き起こす「炎症性サイトカイン」と炎症を抑える「抗炎症性サイトカイン」のバランスが保たれていますが、敗血症ではこのバランスが崩れ、炎症が制御不能になることがあります。
敗血症の診断には、以下の基準が用いられます。
SIRSは、敗血症の早期指標となる状態で、以下の4つの基準のうち2項目以上が該当すると診断されます。
SIRSの診断基準を満たし、感染症が背景にある場合に敗血症と診断されます。しかし、軽度の感染症でも一時的な脈拍の増加や呼吸の変化でSIRS基準に該当することがあるため、敗血症の診断には慎重な判断が求められます。
SOFA(Sequential Organ Failure Assessment)スコアは、臓器障害の程度を評価する指標で、以下の6つの項目を評価します。
SOFAスコアが2点以上急上昇した場合、敗血症と診断されます。
qSOFA(quick SOFA)は、SOFAスコアより簡易的に敗血症の重症度を判断する指標です。以下の3項目のうち2つ以上を満たすと、敗血症の可能性が高いと判断されます。
qSOFAは病院外や一般病棟でのスクリーニングとして活用され、迅速な診断と治療の開始を助けます。
敗血症では、炎症反応の過剰によって血管内に微小血栓(免疫血栓)が形成されます。これは病原体の拡散を防ぐ生理的な反応ですが、過剰に発生すると血流が阻害され、臓器虚血が引き起こされます。これにより、酸素や栄養の供給が不足し、多臓器不全に至ります。
さらに、血管透過性の亢進による体液の移動や血管拡張により、血圧が低下し、適切な輸液投与を行っても血圧の維持が困難な場合、敗血症性ショックと診断されます。この状態では、昇圧剤を用いた治療が必要となります。

敗血症の治療では、感染源を特定し、適切な抗生剤を投与することが最優先となります。しかし、抗生剤投与前に血液培養の採取を行うことが重要です。血液培養は、原因菌の特定や薬剤の感受性試験に役立ちます。
培養検査の精度を高めるため、2セットの採取が推奨されます。これは、細菌が常に血中に存在するわけではないため、1セットだけでは検出が難しくなること、また、皮膚の常在菌が混入する(コンタミネーション)リスクを低減するためです。
敗血症の患者では血圧低下や臓器への血流不足が問題となるため、輸液療法が実施されます。特に、敗血症性ショックの患者では、迅速な輸液投与が必要です。
敗血症性ショックでは、ノルアドレナリンが第一選択の昇圧剤として使用されます。これは、血管の収縮を促し、血圧を上昇させる作用があります。また、平均動脈圧(MAP)を65mmHg以上に維持することが目標となります。
平均動脈圧の計算式
MAP =(収縮期血圧 – 拡張期血圧)÷3 + 拡張期血圧
敗血症では、肺の血管透過性が亢進し、肺水腫を引き起こすことがあります。これにより、酸素の取り込みが困難となり、人工呼吸器の適用が必要となることがあります。
敗血症が重症化し、循環動態が不安定な場合には、透析の機械を用いた急性血液浄化療法が行われます。これは、炎症を引き起こす物質を除去し、状態を安定させるための治療です。
敗血症は、軽度の感染症から急激に悪化することがあるため、早期発見と迅速な治療が鍵となります。特に、呼吸回数やバイタルサインの変化を注意深く観察し、異常を見逃さないことが重要です。
敗血症に関する理解を深め、適切な対応ができるよう心掛けましょう。