サヴァン症候群とは、自閉スペクトラム症などの障害を持ちながらも、驚異的な記憶力や曜日、カレンダー計算などの特定の分野で飛びぬけた能力を持つ人々を指します。
特定の分野で非常に高い能力を発揮する一方で、IQテストや学力テストでは低い点数を取ることが多く、日常生活に支障をきたす場合もあります。
一般的には「自閉症」「知的障害」「発達障害」「脳機能障害」「知覚障害や聴覚障害」を持つ人の中で、特定の分野において非常に優れた能力を持つ人として、サヴァン症候群が認識されています。
サヴァン症候群は、1887年にイギリスの医師ジョン・ラングドン・ダウンによって報告されました。彼は膨大な量の情報を一度読むだけで記憶し、逆からも読み上げるという超人的な能力を持つ男性を「賢い白痴(イディオ・サヴァン)」として報告しました。
ジョン・ラングドン・ダウン(John Langdon Haydon Down)
└イギリスの内科医
└先天性疾患の一つであるダウン症候群「ダウン症」の発見で知られる
サヴァン症候群の人は、主に「芸術」「音楽」「カレンダー計算」「数字」「空間認識」のうち、一つ以上の能力が特に優れています。場合によっては、複数の能力を持つこともあります。
特殊能力の例として、「特定の分野での驚異的な記憶力」「ハイパーレクシア(幼い子供が極端に文字の読み書き能力を持つこと)」「時計を見ずに時間を把握できる」「驚異的な嗅覚や触覚」などがあります。
スティーブン・ウィルシャー(Stephen Wiltshire)
└1973年、イギリスのロンドン生まれの建築画家
└3歳の時に自閉症と診断される
└一度見た風景を詳細に記憶し、再現できる能力を持つ
アメリカの心理学者バーナード・リムランドが、特殊能力を持つ子供543人に対して行った調査によると、サヴァン症候群の能力は①記憶力 ②芸術 ③疑似的言語 ④数学 ⑤空間認識 ⑥一致 ⑦カレンダー計算 ⑧超感覚的知覚(ESP)の順に多いとされています。
ただし、ESPの具体的な内容は不明確であり、信憑性には欠けます。
バーナード・リムランド(Bernard Rimland)
└米国の研究心理学者、作家、講演家
└自閉症・ADHD・学習障害・知的障害の子どもたちの支援を行う
└映画「レインマン」で自閉症に関する技術アドバイザーを務める
今回は、特定の分野で飛びぬけた能力を持つサヴァン症候群について理解を深めましょう。

サヴァン症候群は「症候群」とされていますが、明確な定義はなく、ICD-10やDSM-5などの診断マニュアルでは精神障害や病気として認識されていません。
そのため、どの分野がどれほど優れているかでサヴァン症候群と診断することはできません。
一般的には「自閉症」「知的障害」「発達障害」「脳機能障害」「知覚障害や聴覚障害」を持つ人の中で、特定の分野において非常に優れた能力を持つ人がサヴァン症候群と認識されています。

サヴァン症候群は、自閉症や発達障害のある人が必ずしも持っているわけではなく、現在のところ原因も明確にはわかっていません。
自閉症や発達障害以外にも、脳が病気や怪我で損傷を受けた場合や、出産時の低体重や無酸素状態などで脳に影響が出た場合にも発症することがあります。
発達障害や自閉症が先天的な脳の機能障害が原因であることから、脳の特定の機能に問題が発生した結果、他の脳機能で補うことが原因と考えられています。これにより、通常の人とは異なる記憶方法や思考を持ち、サヴァン症候群となることがあります。
サヴァン症候群が見られる障害や病気:
・自閉症
・ウイリアムズ症候群
・プラダー・ウィリー症候群
・トゥレット障害
・頭部への障害

サヴァン症候群の発生率は、自閉症で約10%、自閉症以外の知的障害者や脳の損傷者では0.1~0.05%とされています。
バーナード・リムランドの調査によると、自閉症児5400人のうち約10%にあたる531人が「特別な能力を持っている」と報告されています。
男女比では6対1と、自閉症と同様に男性のほうが多いです。

サヴァン症候群の主な能力:
・指定された任意の日の曜日を答えることができる
・一度聴いた曲を再現できる
・一度見た風景を詳細に描くことができる
・一度読んだ書籍を暗記できる
・非常に大きな数を暗算できる
・円周率や電話帳の内容を暗唱できる
・複数の言語を話すことができる
・任意の数が素数であるか答えられる
多くの自閉症の人と関わったことのある人は、自閉症の人の中にはサヴァン症候群でなくても、特殊な能力を持っている人がいると感じることがあります。
「誕生日や記念日など日付に詳しい」「耳にした音楽をキーボードやスマホのアプリで再現できる」「車のナンバーや車種に詳しい」「膨大な数の国旗や地名を覚えている」「アニメや特撮もののキャラクターや歴史に詳しい」などがあります。
しかし、サヴァン症候群の人は物事を記憶していたり、計算ができたりする一方で、意味を理解していない場合もあり、日常的な計算や人とのコミュニケーションに問題を抱えていることが多いです。
サヴァン症候群の人は、実際にはどのような分野で高い能力を持っているのでしょうか。
以下に、今までに見つかっているサヴァン症候群の主な特殊能力をいくつか紹介します。
*驚異的な記憶力
記憶に優れた人は、一度読んだ本の内容やアメリカ全土の都市と道路を覚えているなど、
非常に優れた記憶力を発揮することがあります。
*計算能力
難しい計算を暗算するだけでなく、「1981年の4月1日は何曜日?」といった質問に対して
計算によって「水曜日」と答えることができます。
このカレンダー計算は、多くのサヴァン症候群の人に見られます。
*芸術的な能力
細かい描写に優れ、写真と見間違えるほどの精度で絵を描くことがあります。
*音楽的才能
絶対音感があり、一度聴いただけの曲を完全に再現して演奏することができる人もいます。
*知覚的な能力
目で見た光景をまるで写真を撮ったかのように記憶したり、母国語でない言語の会話を聞いただけで
正確に再現することができる場合もあります。
*時間・空間的認知に関する能力
時計を見ずに正確な時間を把握したり、道具を使わずに正確な距離を答えることができる例も
報告されています。
サヴァン症候群の人は、これらのような分野で常軌を逸した能力を一つ、あるいは複数発揮することがあります。
ただし、サヴァン症候群だからといって、常人離れした能力を持っているのではないかという誤解が、当事者にとっては生きづらさにつながる可能性があることも心に留めておく必要があります。
映画「レインマン」のモデルとなったキム・ピーク氏も、生涯で9000冊以上の本の内容を暗記したり、アメリカの地図を暗記して案内したりする驚くべき能力を持っていましたが、日常生活では重度の知的障害のために自分のシャツのボタンも留められないなどの困難がありました。
このように、突出した能力があっても、日常生活に支援が必要な場合が多くあります。
サヴァン症候群はテレビや映画の影響もあり、天才のようなイメージと結びつくことがありますが、これらはあくまで症候群の一例に過ぎず、実際にはもっと多様な人々がいます。
サヴァン症候群の偏ったイメージを押し付けることで誤解が生じたり、過剰な期待を持たれて追い込まれる人もいます。
そのようなことを防ぐために、サヴァン症候群を正しく理解することが大切です。
また、この記事で紹介したサヴァン症候群の能力は、あくまで傾向に過ぎません。
それぞれの人をよく観察し、個々の苦手分野と得意分野を理解して、その人の得意分野を伸ばす支援を行うことが重要です。
以上がサヴァン症候群についての説明でした。
サヴァン症候群は驚異的な能力を持つ一方で、日常生活での支援が必要なことも多いため、正しい理解と適切なサポートが重要です。
個々の特性を尊重し、彼らが持つ独自の才能を最大限に活かせるような支援を行うことが求められます。
サヴァン症候群に関する認識を広めることで、彼らの生活の質を向上させる手助けになるでしょう。