発達性協調運動障害(DCD)は、複数の身体部位(手と手、目と手、足と手など)を同時に動かす運動が非常に難しい障害です。例えば、消しゴムを使うと紙が破れてしまう、キャッチボールが苦手といったように、日常生活において運動に困難を感じることがあります。今回は発達性協調運動障害(DCD)について、その定義や特徴、原因、家庭でできる対策などを解説します。この機会に、発達性協調運動障害(DCD)への理解を深めていただければと思います。

発達性協調運動障害(DCD)は、日常生活における協調運動が本人の年齢や知能に見合ったレベルよりも明らかに劣っている障害です。運動能力の評価は通常、「MABC-2(Movement Assessment Battery for Children, 2nd version)」や「JPAN(日本版感覚統合検査)」などのテストによって行われ、医師が発達性協調運動障害かどうかを判断します。アメリカ精神医学会の『DSM-5』では、次のような診断基準が設けられています。
運動には「粗大運動」と「微細運動」があり、人間はこれらを段階的に習得していきます。粗大運動は姿勢や移動に関する大きな運動で、微細運動は指先などの小さな筋肉を使う運動です。発達性協調運動障害のある人は、これらの運動が同年代に比べてぎこちなく、遅かったり不正確だったりします。
発達性協調運動障害の原因は、まだはっきりとは分かっていませんが、研究によっていくつかの原因が考えられています。妊娠中・母親のアルコール摂取であったり、それによる早産、低体重で産まれた場合、発達性協調運動障害を発症する確率が高くなるという研究があります。
注意欠如多動症、学習障害、自閉スペクトラム症などの発達障害との併発が非常に多いため、何らかの遺伝的要因があるのではないかと言われています。発達障害のある子どもは、定型発達の子どもよりも発達性協調運動障害を発症する可能性が高いと言われています。5歳から11歳の子どもでは「5~6%が発症」します。また、女児よりも「男児のほうが発症率が高い」こともわかっています。注意欠如多動症(ADHD)、学習障害、自閉スペクトラム症などの発達障害と併発することが多く、遺伝的要因が関与している可能性があります。特に発達性協調運動障害との併発率は高く、「DAMP症候群(注意・運動制御認知における複合的障害)」と呼ばれることもあります。
発達性協調運動障害と注意欠如多動症(ADHD)との関係については、注意欠如多動症(ADHD)のある子どもがよく転んだり、物にぶつかったりしてしまうのは、注意欠如多動症(ADHD)による注意散漫や衝動性に原因があるのか、それとも発達性協調運動障害によってなのかを注意深く観察する必要があります。子どもの運動に対する困難さ・不器用さは必ずしも注意欠如多動症(ADHD)だけが原因、発達性協調運動障害が原因というわけではなく、両方が原因となっていることもあります。特に注意欠如多動症(ADHD)の場合、発達性協調運動障害との併存確率は「50%」と非常に高いことがわかっています。
主な支援・治療方法には「作業療法」と「理学療法」があります。
作業(子どもの場合、主に遊び)などをして複合的な動作をできるようにしていく運動。日常生活、学習などの動作をスムーズに行えるようにするために、基本的な動作に加え、動きと動きの統合が必要な協調運動への支援を行います。発達性協調運動障害のある子どもは、一つ一つの行動の統合が苦手であることが分かっているので、作業療法は障害の改善に効果があると言われています。
広義には高齢・障害などによって運動機能が低下した状態にある人に対して、運動機能の維持・改善を目的に運動、温熱、水などの物理的手段を用いて行われる療法です。特に運動による理学療法が発達性協調運動障害の改善に役立つとされています。「運動療法」とも言われています。
発達性協調運動障害は、一つ一つの運動を関連付けたり、統合することが困難な障害ですが、運動の得意・不得意はどんな人、子どもにも見られるため、ただの不器用な人で済まされる場合も少なくてはありません。しかし、発達性協調運動障害のある子どもが見過ごされ、その子どもが集団に適応することが困難になることもあります。子どもが発達性協調運動障害かどうか心配な場合は、早めに相談機関に相談し、必要に応じて専門家の支援を受けながら、家庭でできる工夫を行っていきましょう。楽しめるペースや方法で、できることを少しずつ増やしていけば、自信にもつながり、日常生活へも良い影響が出ることでしょう。
以上が、発達性協調運動障害(DCD)についてでした。
