【パニック障害などの治療】系統的脱感作法

はじめに

日常生活の中で、不安を感じる場面は誰にでもあるものです。しかし、その不安が強くなりすぎると、パニック障害や不安障害などの症状につながり、日常生活に支障をきたすことがあります。そんな不安への対処法として、「系統的脱感作法」という手法があります。

この記事では、系統的脱感作法とは何か、その基本的な考え方、具体的な実践方法、注意点、そして応用例について詳しく解説していきます。

系統的脱感作法とは?

1. 基本的な考え方

「系統的脱感作法(Systematic Desensitization)」は、1950年代に精神科医ジョセフ・ウォルピ(Joseph Wolpe)によって開発された行動療法の一つです。この手法は、不安を引き起こす刺激に対して、少しずつ慣れていくことを目的としています。

「系統的」とは、段階的に進めていくことを意味し、「脱感作」とは、不安を感じる対象に慣れることで反応を弱めることを指します。つまり、系統的脱感作法とは、「少しずつ段階的に不安の対象に触れることで、徐々に慣れていき、不安を克服していく方法」と言えます。

2. 回避行動と克服の違い

不安を感じる場面に直面した際、多くの人が「回避行動」をとることがあります。例えば、電車が苦手な人が電車を避ける、対人関係に不安を感じる人が人と話す機会を減らすなどの行動です。短期的にはこの回避行動で不安を感じることは少なくなりますが、長期的には克服につながらず、むしろ不安を強めることになります。

一方で、系統的脱感作法では、不安を感じる対象に少しずつ触れることで、その不安を弱め、最終的に克服していくことを目的とします。

系統的脱感作法の具体的な進め方

系統的脱感作法を実践する際には、次の2つのポイントが重要になります。

1. 程よい強さで進める

系統的脱感作法では、不安を感じる刺激を一気に強めるのではなく、適度な強さから始めます。

例えば、ジムでのウェイトトレーニングを考えてみてください。負荷が軽すぎると効果がなく、逆に重すぎるとケガをしてしまいます。ロールプレイングゲーム(RPG)で例えるなら、レベル1の状態で強敵に挑むのは無謀ですが、適切な敵と戦いながら徐々にレベルを上げていけば、無理なく強くなれます。

系統的脱感作法も同じで、最初は「不安を感じるが、耐えられる範囲」のレベルから始めます。例えば、電車が苦手な場合、まずは1駅(2分間)だけ乗ることから始め、慣れたら2駅、4駅と距離を伸ばしていくといった方法をとります。

2. 徐々に負荷を強める

慣れてきたら、少しずつ負荷を増やしていきます。電車の例でいうと、最初は各駅停車を利用し、次に快速、最終的には急行に乗るというように、段階を踏んでステップアップしていきます。また、混雑が苦手なら、空いている時間帯の電車から始め、次第に混雑した時間帯の電車に挑戦するという方法も有効です。

系統的脱感作法を実践する際の注意点

系統的脱感作法を成功させるためには、以下の3つの注意点を意識することが重要です。

1. 体調が良いときに実践する

体調が悪いときに無理をしてしまうと、逆に不安が増大し、悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、スポーツでも体調が悪いときに無理をするとケガのリスクが高まりますし、RPGでHPが低い状態で強敵に挑むと負けてしまいます。

同様に、系統的脱感作法も無理をせず、体調の良いときに取り組むことが大切です。

2. リラックスしながら実践する

不安を克服する際に、緊張したままだとストレスが増し、効果が薄れることがあります。準備体操をしてから運動をするのと同じように、リラックスした状態で不安に向き合うことが大切です。深呼吸やリラックス法を取り入れることで、スムーズに進めることができます。

3. 実践後はしっかり休養をとる

系統的脱感作法は、目に見えない部分でエネルギーを多く使うため、終わった後はしっかりと休養をとることが大切です。トレーニング後のクールダウンや、RPGでの宿屋での回復と同じように、十分な休息を取ることで次のステップへスムーズに進むことができます。

系統的脱感作法の応用例

系統的脱感作法は、さまざまな不安の克服に応用することができます。ここでは、代表的な3つの例を紹介します。

1. パニック症

電車やエレベーター、飛行機など特定の場所で強い不安を感じる場合、いきなりそれらを利用するのではなく、まずは短い距離や時間から慣らしていくことで、少しずつ克服していきます。

2. 社会不安障害

人と話すことに不安を感じる場合、まずは家族や親しい友人との会話から慣れていき、その後、職場や学校での会話、最終的にはプレゼンテーションや会議などの場面へと進んでいく方法が有効です。

3. 強迫性障害

何度も確認してしまう癖がある場合、「1回だけ確認する」といったルールを設け、少しずつ確認回数を減らしていくことで、強迫行動を抑えていきます。

まとめ

系統的脱感作法は、不安を克服するための効果的な方法です。ポイントは、「適度な強さから始め、徐々に負荷を増やしていく」こと。そして、「体調が良いときに行い、リラックスしながら進め、終わった後はしっかり休養をとる」ことが重要です。

この方法を正しく実践すれば、不安に向き合いながら少しずつ克服していくことが可能になります。ぜひ、日常生活の中で活用してみてください。