大人のADHDというと、多くの場合「不注意」や「ミス」といった側面がクローズアップされます。しかし、ADHDの特徴には「多動性」や「衝動性」も含まれており、これらが日常生活に影響を与えることがあります。
子どもの場合、衝動性は目に見える形で表れることが多く、たとえば「授業中に歩き回ってしまう」といった行動が典型的です。しかし、大人になるとこうした目立つ行動は少なくなります。そのため、大人のADHDにおける衝動性はあまり注目されない傾向がありますが、実際には「ついやってしまう」「ついカッとなる」「気分の波が激しくなる」といった形で、生活に影響を及ぼすことがあります。
そこで今回は、「衝動に一歩引く」という視点で、衝動的な行動をコントロールする方法について考えていきたいと思います。

ADHDのある方とそうでない方の違いとして、「出来事が起こってから、それを行動に移すまでの距離」が挙げられます。一般的には、何かしらの刺激を受けた際に、ある程度の時間をかけて判断し、行動に移ります。しかし、ADHDの方はこの「行動に移るまでの距離」が短く、衝動的に反応してしまうことが多いのです。
この特性が良い方向に働けば、決断力や行動力といった長所となりますが、一方で、衝動的な言動がトラブルにつながることもあります。そのため、自分の衝動性をコントロールすることが大切になってきます。
では、具体的にどのように「衝動に一歩引く」ことができるのでしょうか?
衝動をコントロールするためには、「行動に移る前に一旦冷静になる時間を作る」ことが重要です。そのための具体的な方法を3つご紹介します。
衝動を感じた際に、すぐに行動せず、数秒の間を置くように意識します。これは、アンガーマネジメントでよく言われる「6秒ルール」と同じ考え方です。怒りの感情は6秒ほどでピークを過ぎると言われており、その間に冷静さを取り戻すことができます。
「何かを言いたくなった」「すぐに行動したくなった」と感じたら、まずは心の中でゆっくり数を数えるだけでも効果があります。
呼吸を意識することで、気持ちを落ち着かせることができます。衝動に駆られた際は、ゆっくりと深呼吸をすることで、一旦冷静になれる時間を作ることができます。
具体的には、「4秒かけて鼻から息を吸い、4秒止め、8秒かけて口から息を吐く」という「4-4-8呼吸法」がおすすめです。この方法は、自律神経を整え、衝動をコントロールするのに役立ちます。
衝動的になりそうな状況では、一旦その場を離れることでクールダウンを図ることができます。たとえば、怒りを感じたときにその場にとどまると、感情がさらに高ぶりやすくなります。しかし、場所を変えることで気分を切り替え、冷静に考える時間を作ることができます。
具体的には、「席を外して一人になれる場所に行く」「トイレに行って気持ちを落ち着ける」「散歩をする」など、状況に応じて実践できる方法を選びましょう。

これまで紹介した方法を活用しながら、衝動を抑えるためには、日頃から次のような考え方を意識すると効果的です。
自分がどのような状況で衝動的な行動をしやすいのかを把握しておくことは大切です。たとえば、「ストレスが溜まると衝動的になる」「特定の人との会話でカッとなりやすい」など、自分の傾向を知ることで、対策を立てやすくなります。
衝動を抑えようと意識しすぎると、かえってストレスになり、逆効果になることもあります。衝動的な行動には「良い面」もあり、決断力や行動力につながることもあるため、すべてを抑え込もうとするのではなく、「必要な場面では活かしつつ、コントロールする」という考え方を持つことが重要です。
アンガーマネジメントは、「怒りの感情」をコントロールするための技術ですが、ADHDの衝動性を抑える際にも有効です。たとえば、「怒りの感情の正体を理解する」「怒りを記録して分析する」「自分がコントロールできることとできないことを区別する」などの方法を取り入れることで、衝動的な行動を減らすことができます。
今回は、「衝動に一歩引く」というテーマで、大人のADHDにおける衝動性の特徴と、その対策についてお話しました。ADHDの衝動性は、「ついやってしまう」「気分の波が激しくなる」といった形で現れますが、良い方向に働けば行動力につながり、悪い方向に向かうとトラブルにつながることもあります。そのため、衝動を感じたときに一歩引いて冷静になることが大切です。
具体的な対策として、
といった方法を取り入れることで、衝動的な行動をコントロールしやすくなります。
また、自分の衝動のパターンを知り、衝動を敵視せず適切にコントロールする意識を持つことが、より良い対策につながります。アンガーマネジメントの考え方も活用しながら、自分に合った方法を見つけていきましょう。
日々の生活の中で少しずつ実践し、無理のない範囲で取り組んでいくことで、衝動性と上手に向き合いながら、より良い日常を築いていけるはずです。