うつ病や適応障害の治療・予防には、考え方のクセを見直し、ストレスを軽減することが重要です。
認知行動療法の代表的な技法の一つである「認知再構成」は、自分の思考パターンを見直し、より現実的で前向きな視点を持つことを目的としています。
本記事では、認知再構成の方法や実践のコツ、限界について詳しく解説します。

認知行動療法では、脳の働きを大きく4つの要素に分けて分析します。
これらの要素は互いに影響し合っており、特に「認知」と「行動」は比較的調整しやすい要素です。
そのため、認知再構成では「考え方のクセ」を修正することで、ストレスの軽減や気分の改善を目指します。

認知再構成は、以下の2つのステップで進めます。
まず、自分がどのような考え方をしているのかを振り返ることが重要です。
うつ病や適応障害の方は、特に以下のような思考パターンを持ちやすい傾向があります。
• 白黒思考:「成功か失敗か」「完璧かダメか」と極端な考え方をする。
• 自己批判:何か問題が起こると、自分のせいだと決めつける。
• 過度の一般化:1つの失敗をもとに、「自分はいつもダメだ」と考える。
• マイナス思考: 物事のネガティブな面ばかりに目を向ける。
例えば、コップに半分の水が入っている場合、「半分しかない」と考えると気分が沈み、「半分もある」と考えればポジティブな気持ちになれます。同じ出来事でも、捉え方によって気分が変わりうるのです。
自分の考えに偏りがあると感じたら、意識的に別の視点を持つようにします。
その方法として、以下の3つが有効です。
物事を冷静に分析し、バランスの取れた見方をする方法です。
現在、直面している出来事の背景にAという原因が思い浮かんだ時、Aとは無関係なもののBというありうる原因を考え、両者を天秤にかけます。
例:「隣の人が不機嫌なのは自分のせいかもしれない」⇒「確かに前にイライラさせたことがあるかもしれない」が、「今回は何もしていない。別の理由で不機嫌かもしれない」と考える。
自分が他人に相談されたらどう答えるかを考える方法です。
例:「隣の人が不機嫌なんですが、自分のせいでしょうか?」と部下に相談されたと想像する⇒「たぶん関係ないと思うよ」と答えるのではないか?
他にも、身近にポジティブ思考の人がいれば、その人ならどう考えるかと想像してみたりするのも有効です。
例: 「隣の人が不機嫌なのは自分のせいかもしれない」⇒あの人なら「ほかの原因かもしれないし、仮に自分のせいだとしたら、謝って話を聞き、尾を引かないようにしよう」と考えるだろう
自分と他人の関係を俯瞰的に捉え、感情に流されずに判断する方法です。
例: 「隣の人が不機嫌なのは自分のせいかもしれない」⇒「2人の人がいて、一方がイライラしている。でも他方が原因とは限らない」と考える。
認知再構成を行う際、細かく分析しすぎると疲れてしまい、続けられなくなります。
「完璧に考え直さなければならない」と思わず、ある程度大まかでも構わないので、無理のない範囲で取り組みましょう。
認知再構成は一度やっただけでは効果が出にくいため、繰り返し行うことが大切です。
毎日の生活の中で意識し、少しずつ自然にできるようになることを目指しましょう。

認知再構成は有効な方法ですが、すべてのケースに適用できるわけではありません。
以下のような場合には、別のアプローチも考慮する必要があります。
うつ病の急性期では、脳の機能低下が強く影響しているため、認知再構成を行うこと自体が難しい場合があります。この段階では、まず薬物療法や休養を優先し、回復してから取り組むことが推奨されます。
幼少期からこだわりが強く、視点の切り替えが苦手な場合、認知再構成が難しいことがあります。
この場合、少しずつ取り入れるか、専門的なサポートを受けることを検討しましょう。
幼少期の経験によって「自分はダメだ」と強く思い込んでいる場合、認知再構成だけでは十分な効果が得られないことがあります。その場合、カウンセリングや心理療法を併用することが有効です。
• 認知再構成は、考え方のクセを見直し、ストレスを軽減する認知行動療法の技法の一つ。
• まずは自分の思考パターンを知り、次に意識的に別の視点を持つことが大切。
• 完全主義にならず、繰り返し練習することで習得を目指す。
• 適用が難しいケースでは、無理をせず専門的なサポートを活用する。
認知再構成は、時間をかけて取り組むことで効果を発揮する技法です。
焦らず、自分のペースで進めていきましょう。