今回は「はじめの一歩(先送りを減らす)」というテーマでお話ししたいと思います。
ADHDの特性を持つ方にとって、「先送り」の問題は避けて通れない課題です。例えば、学校では宿題を後回しにしてしまったり、仕事では資料作成に手をつけられなかったりすることがあるでしょう。それが原因で締め切りに間に合わなかったり、焦りを感じたりといった問題が生じることも少なくありません。これらはADHDの特性によるものですが、工夫次第で少しでもその影響を軽減することができます。
今回の目標は、「はじめの一歩を踏み出す」ための具体的な方法を知り、実践することです。特に、先送りを減らして行動を起こすきっかけを作るために有効なテクニックをご紹介していきます。

ADHDの方が物事に取り掛かるのが苦手な理由には、大きく分けて2つの要因があります。
ADHDの方は、特に長時間取り組む必要がある課題や、単純作業には手をつけにくい傾向があります。頭では「やらなきゃ」と思っていても、なかなか行動に移せないのです。これは、行動を開始するまでに膨大な精神的エネルギーを必要とするためです。
さらに、過去に「頑張って取り組んだけれど途中で集中が切れてしまった」「やろうとしたけれどうまくいかなかった」という経験があると、「今回もどうせまた同じことになるんじゃないか」と考えてしまい、ますます取り掛かれなくなるという悪循環に陥ります。
このように、行動を始めるまでのハードルが非常に高いことが、先送りの大きな原因になっています。
しかし、ADHDの方がすべてのことに取り掛かれないわけではありません。むしろ、瞬発力が求められることや、シンプルで短時間で終わることには素早く対応できる場合が多いのです。思い立ったらすぐ行動する力は、ADHDの特性の一つでもあります。
苦手なことは「じっくり取り組む持久力が必要な課題」である一方、得意なことは「素早く反応して行動する瞬発力が求められる課題」です。この得意分野を活かしながら、苦手なことを少しでもやりやすくする工夫が必要です。
そこで今回は、次の3つのテクニックをご紹介します。

大きな課題に対して「30分かかる作業だ」と思うと、取り掛かること自体が億劫になります。そこで、有効なのが「問題を小分けにする」方法です。
例えば、30分かかる作業を1分の作業に細分化してみましょう。「資料のタイトルを決める」「ファイルを開く」「1つ目の見出しを考える」など、1つ1つのステップをとにかく細かく分けます。
こうすることで、「30分の作業をやる」から「1分だけやる」に変わり、行動を開始するハードルがグッと下がります。結果として、「1分の作業」を積み重ねることで、気がついたら30分分の作業が完了していた、ということも少なくありません。
この方法では、「持久力が必要な課題」を「瞬発力で片付ける課題」に変換することができます。成功体験が積み重なれば、自信につながり、次の行動も起こしやすくなるという好循環を生み出します。
ADHDの方は「今を生きる人」とも言われます。目の前の刺激に反応しやすく、楽しいこと、嬉しいことへの反応は素早いです。この特性を活かして、自分にご褒美を用意することが効果的です。
例えば、「10分作業をしたら好きなお菓子を食べる」「課題を1つクリアしたら、YouTubeを5分観る」など、すぐに得られる報酬を設定します。
子どものペアレントトレーニングでは、行動ができた瞬間に褒めることが重視されますが、大人になると他人からすぐに褒められる機会は少なくなります。だからこそ、自分自身でご褒美を設定し、作業と報酬を結びつけることが重要です。
この方法により、「作業をすること=楽しいことが待っている」という関連付けが生まれ、次も取り掛かりやすくなります。
完璧にやろうとすると、作業に取り掛かるハードルが上がり、先送りが加速します。特にADHDの方は、長時間集中するのが苦手なため、「最初から丁寧にやる」という姿勢が逆に作業を遠ざけることになりかねません。
そこで、「雑でいいからまず始める」ことを意識しましょう。とりあえず6割の完成度で構わないので、作業に取り掛かるのです。
例えば、
といった簡単なステップから始めます。もし丁寧に仕上げる必要がある場合は、最初に雑に終わらせてから、後日修正する時間を設ければいいのです。
雑でも始めてしまえば、次第に作業は進み、結果として行動を起こせた達成感が生まれます。
今回は、「はじめの一歩(先送りを減らす)」というテーマで、ADHDの方が行動を起こすための3つのテクニックをご紹介しました。
これらを実践することで、苦手な「長時間作業」を得意な「瞬発力の行動」に置き換え、はじめの一歩を踏み出しやすくします。一度成功体験を積むことで、自信が生まれ、次の行動もスムーズになる好循環を作ることができます。
少しずつで構いません。一緒に、はじめの一歩を踏み出していきましょう。