はじめに
今回は、「認知行動療法の全体像」についてお話しします。
うつ病や適応障害の治療の一環として、薬物療法に加えて認知行動療法に興味を持つ方が増えています。「薬以外のアプローチを取り入れたい」「自分自身の考え方を見直したい」といった声をよく耳にしますが、一口に認知行動療法と言っても、その意味するところは人によってさまざまです。
そこで本記事では、認知行動療法の基本的な考え方や具体的な技法をわかりやすく解説していきます。
認知行動療法の3つの側面
認知行動療法には、大きく分けて3つの側面があります。
それぞれの意味を理解することで、自分に合った方法を選ぶ手助けになるでしょう。
- カウンセリングの代わりとしての認知行動療法
- 「誰かに話を聞いてもらいたい」「心の内を整理したい」という目的で認知行動療法を求める方もいます。これは、従来のカウンセリングに近いイメージです。
- 共同関係による問題解決型の認知行動療法
- カウンセラーと一緒に問題を解決していくスタイルです。
いわゆる「ロジャース派」のカウンセリングでは、話を聞いてもらいながら自己理解を深めることが中心ですが、認知行動療法では、カウンセラーが積極的にアドバイスや課題を提示し、問題解決に向けて共に取り組む姿勢が特徴です。
- 具体的な技法を用いた認知行動療法
- 認知の歪みを見直したり、行動パターンを変えたりするための具体的な技法を使う方法です。これが狭義の認知行動療法と言われることもあります。
認知行動療法を受ける方法
認知行動療法のアプローチ方法は、大きく3つに分けられます。
- 自己学習型
- 認知行動療法の本やオンライン教材を活用し、自分自身で考え方の癖を見直し、行動を変えていく方法です。自分のペースで進められる一方、継続には自己管理が必要です。
- 心療内科での実施
- 心療内科では、医師の診察の一環として認知行動療法の考え方や簡単な技法を教えてもらうことがあります。ただし、診察時間が限られているため、深く学ぶには難しいこともあります。
- 専門のカウンセリング施設での実施
- 臨床心理士などの専門家とじっくりと時間をかけて取り組む方法です。
特に共同関係を重視した認知行動療法を希望する場合には、専門施設の利用が推奨されます。
認知行動療法の基本的な考え方
認知行動療法の土台には、「人の心には4つの要素が相互に関係している」という考えがあります。
- 認知(考え方)
- 行動(実際の行動)
- 身体反応(体の感覚)
- 感情(気持ちや気分)
これらは互いに影響し合っており、特に認知と行動は調整しやすい要素です。感情や身体反応は直接コントロールするのが難しいですが、認知と行動を整えることで間接的に感情や身体反応も安定させることができます。
認知行動療法の代表的な技法
次に、認知行動療法の具体的な技法についてご紹介します。今回は代表的な4つの技法を取り上げます。
- 認知再構成法
- 「考え方を見直す」技法です。たとえば、コップに半分の水が入っている状況を「もう半分しかない」と捉えるか「まだ半分もある」と捉えるかで、気持ちの持ちようが変わります。このように、自分の考え方の癖を理解し、バランスの取れた思考へと変えていく方法です。
- 行動活性化
- うつ状態にあると行動範囲が狭くなりがちです。そこで、小さな行動から始め、達成感を積み重ねることで活動量を増やしていく技法です。たとえば、「今日は家の周りを5分歩く」といった具体的な目標を設定します。
- 暴露療法
- 不安や恐怖に立ち向かう技法です。苦手な状況に少しずつ慣れることで、過剰な反応を和らげます。たとえば、人前で話すことが怖い場合は、まず親しい友人の前で話す練習から始め、段階的に慣れていきます。
- マインドフルネス
- 今この瞬間に意識を向ける技法です。過去や未来への不安に囚われるのではなく、「今、ここ」に集中することでストレスを軽減します。呼吸に意識を向ける簡単な瞑想などが取り入れられます。
おわりに
認知行動療法は、「考え方」と「行動」に働きかけることで心のバランスを整える方法です。カウンセリングの代わりとして、共同関係を重視した問題解決として、あるいは具体的な技法を用いた実践方法として、自分に合ったスタイルを選ぶことが重要です。
ぜひ、自分の考え方の癖や行動を見つめ直し、一歩ずつ前向きに進んでいきましょう。