躁うつ病(双極性障害)は、うつ状態(気分が落ち込む状態)と躁状態(気分が高揚する状態)を繰り返す脳の疾患です。治療の基本は、気分安定薬による症状のコントロールと再燃予防ですが、治療が進み病状が安定した後も、患者本人にとっては「現在の状態がつらい」と感じることが少なくありません。
特に、治療がうまくいって「安定期」に入ったとしても、多くの場合は軽度のうつ状態(軽うつ)が続くことが多く、それに対する葛藤が生じることがあります。この葛藤に適切に対処できなければ、治療を中断したり、生活リズムを乱したりしてしまい、結果として再燃のリスクが高まってしまいます。
本記事では、躁うつ病の治療の流れと、安定期における患者の葛藤、その対処法について詳しく解説します。
躁うつ病の治療は、大きく分けて次の2段階で進められます。
しかし、この安定した状態において、多くの患者が軽うつ状態にとどまり、「気分が晴れない」「生き生きとした感覚が戻らない」といった心理的な葛藤を抱えることが少なくありません。

安定した状態に達しても、多くの躁うつ病の患者が以下のような葛藤を抱えています。
躁状態や軽躁状態では、頭の回転が速くなり、気分が高揚し、エネルギッシュに活動できます。しかし、治療によって安定すると、その時と比べて「パッとしない」「曇った感じがする」と感じることが多いです。
また、病気になる前の自分と比べても、気分が落ち込みがちであるため、「なんとか抜け出したい」という気持ちが強くなることがあります。
多くの場合、軽うつ気味の状態で安定するため、強い喜びや充実感を得にくくなります。そのため、変化の少ない毎日に「空虚感」や「虚無感」を抱くことがあるのです。
といった思いが湧いてくることがあります。
このような思いから、「何とか病気がなかったことにできないか」という気持ちが生じることがあります。

これらの葛藤が強くなると、治療に悪影響を及ぼす可能性があります。
治療を続けながら、安定期における葛藤を軽減するには、以下の考え方が役立ちます。
焦らず時間をかけて、躁うつ病と向き合うことが大切です。「病気になったことで失ったもの」に目を向けるのではなく、「病気になったからこそ気づけたこと」「新しい視点が持てたこと」に注目すると、少しずつ受け入れやすくなります。
軽うつの状態では、大きな喜びを感じるのは難しいかもしれません。しかし、「ちょっとした楽しみ」や「穏やかに過ごせること」に価値を見出すことで、安定した生活に意味を感じやすくなります。
全く変化がないと、虚無感が強まることがあります。無理のない範囲で、新しい趣味や軽い運動、読書など「少しの刺激」を取り入れることが大切です。
心理カウンセリングやピアサポート(同じ経験を持つ人との交流)を活用することで、自分の気持ちを整理し、病気との向き合い方を見つけやすくなります。
躁うつ病の治療では、気分安定薬を続けることが再燃予防の基本ですが、安定期においても「軽うつ状態が続くことによる葛藤」が生じることがあります。
この葛藤に適切に向き合わないと、薬をやめてしまったり、生活リズムを崩してしまったりすることで、再燃のリスクが高まります。
そのため、焦らず時間をかけて病気と折り合いをつけることが重要です。躁うつ病になったからこそ見えたことや、新しい価値観を大切にしながら、小さな楽しみを見つけ、安定した生活を続けることが、長期的な回復につながるでしょう。