【統合失調症療養のコツ】妄想には一歩引く

はじめに

統合失調症の代表的な症状として「幻聴」と並び「妄想」が挙げられます。

妄想とは、一般的に「独特な考えが強くなり、周囲が訂正しようとしても難しい状態」と定義されます。薬物療法によって改善が見込まれるものの、個人差があり、慢性的に残る場合もあります。
その際に大切なのは、妄想の影響を少しでも減らすことです。

本記事では、その方法として「妄想には一歩引く」という考え方を紹介し、どのように向き合っていくべきかを考えていきます。

統合失調症とは?

統合失調症とは?

統合失調症は、脳の働きに不調が生じ、主に「陽性症状」と「陰性症状」が現れる病気です。
特に、悪化時には幻聴や妄想などの陽性症状が強まる傾向があります。
治療の基本は抗精神病薬の継続的な服用であり、これにより症状の改善や再発予防が期待されます。

しかし、一部の患者においては、治療を行っても妄想が慢性的に残ることがあります。

妄想の特徴と影響

妄想とは、「特定の考えに固執し、第三者の訂正を受け入れにくい状態」です。
代表的なものとして「被害妄想」が挙げられます。例えば、「誰かに狙われている」「悪意を持って監視されている」といった考えが強くなることがあります。

妄想にはさまざまな種類がありますが、特に注意が必要なのは以下の2つの影響です。

  1. 妄想に支配された行動
    被害妄想が強くなると、「自分は狙われているのだから、先に攻撃しなければならない」と考えてしまうことがあります。その結果、他害行為が正当化され、暴力などの犯罪行為に発展する可能性があります。
    これは本人だけでなく、周囲の人々にも危険を及ぼすリスクがあるため、十分な注意が必要です。
  2. 妄想に追い詰められる精神状態
    「常に誰かに狙われている」という感覚が続くことで、持続的なストレスを抱えることになります。その結果、不安が強まり、不眠や急性の混乱状態に陥るリスクが高まります。

妄想への対処法:「一歩引く」という考え方

妄想への対処法:「一歩引く」という考え方

妄想への対処には、まず第一に薬物療法が重要です。
抗精神病薬の服用によって、妄想の強さを抑えたり、ぶり返しを防ぐことが期待されます。しかし、薬の効果にも限界があり、妄想が完全になくならないケースもあります。
その場合、妄想の影響を少しでも和らげる方法として「一歩引く」考え方が有効とされています。

「一歩引く」ための具体的な方法

  1. メタ認知を活用する
    「メタ認知」とは、自分自身の考えを客観的に捉える能力を指します。
    妄想が強くなると、「自分の考えは絶対的に正しい」と思い込んでしまうことがありますが、一歩引いて「本当にそうなのか?」と考えてみることが大切です。
    例えば、「この考えは自分の主観だけではないか?」と疑問を持つことで、思考の柔軟性が生まれます。
  2. 別の視点を探す
    認知行動療法(CBT)では、「異なる視点から物事を考える」ことを重視します。
    例えば
    • 「この出来事を他人が見たらどう思うだろう?」
    • 「別の状況だったら、同じように感じるだろうか?」
    • 「この考えとは正反対の証拠はあるだろうか?」

      こうした視点の切り替えを意識することで、妄想の影響を弱めることができます。

認知行動療法による妄想へのアプローチ

イギリスなどでは、妄想に対する認知行動療法(CBT)が研究されています。
この方法では、「妄想がどのように生まれるのか?」という疾患教育を行いながら、妄想に対して一歩引いた視点を持つことを目指します。妄想の根本には「独特な視点に固定されている」ことがあるため、対策として「より広い視野で考える」訓練を行います。

しかし、ここで注意すべき点もあります。

  1. 薬物療法なしで妄想を改善するのは難しい
    認知行動療法は補助的な手法であり、妄想の根本的な改善には薬物療法が欠かせません。
    まずは、薬の服用を継続しながら、認知行動療法を並行して取り組むことが重要です。
  2. 妄想の強さを過小評価しない
    認知の歪みを修正するのは簡単ではありません。
    特に、妄想のように強く固定された考えは、数回のセッションで解決するものではなく、長期的な取り組みが必要になります。
  3. 他の症状の影響にも配慮する
    幻聴や認知機能の低下がある場合、認知行動療法の効果が得られにくいこともあります。
    そのため、個々の状況に応じた柔軟なアプローチが求められます。

長期的な視点での取り組み

長期的な視点での取り組み

妄想が慢性的に続く場合、10年、20年と付き合っていくことも珍しくありません。
そのため、「完全になくす」というよりも、「影響をできるだけ減らす」という視点を持つことが重要です。

長期間にわたって妄想と向き合うためのポイントとして、

  • 「妄想は完全に消えなくても、少しずつ緩和するもの」と理解する
  • 「すぐに別の視点を見つけるのは難しくても、時間をかけて取り組む」
  • 「考え方を柔軟にする習慣をつける」
    といった意識を持つことが大切です。

まとめ

本記事では、統合失調症の妄想に対処する方法として「一歩引く」ことの重要性を解説しました。
妄想は「独特な考えが強まり、訂正が難しい」という特徴を持ちます。
薬物療法によって改善は可能ですが、慢性的に残ることもあります。
その際に、妄想に囚われすぎないよう「一歩引く」ことが、影響を和らげる鍵となります。

この取り組みは短期間で成果が出るものではなく、年単位での継続が必要です。
しかし、少しずつでも別の視点を探し、思考の柔軟性を高めることで、妄想との付き合い方を変えていくことが可能です。焦らず、着実に取り組んでいくことが大切です。