はじめに
発達障害(ASD・ADHD)を持つ人の多くが、「どうすれば社会に適応できるのか?」という疑問を抱えています。発達障害の特性には強みもあれば弱みもあり、社会適応には「強みを活かし、弱みを補う」ことが基本的な方針となります。
しかし、その前提として最も大事な考え方があります。それが、「与える、奪わない」 ということです。
社会での人間関係において、人は何かを「もらう」と嬉しくなり、逆に「奪われる」と嫌な気持ちになります。この原則を理解し、意識的に「与える」ことを増やし、「奪う」ことを減らすことができれば、社会適応の大きな助けになります。本記事では、この「与える、奪わない」について詳しく解説し、発達障害の人がどのように実践していくべきかを考えていきます。
この考え方は、発達障害の有無にかかわらず、人間関係の基本となるものです。
例えば、誰かが風邪をひいて咳をしていたとします。その人を心配するのが自然な反応ですが、「他人に移るかもしれませんよ」と冷たく言われたら、どう感じるでしょうか?多くの人は嫌な気持ちになるでしょう。
人は基本的に、「助け合う」ことを大切にする生き物 です。しかし、「助ける」ことができるのは、自分が余裕のあるときだけです。もし、誰かに何かを奪われ続けていたら、余裕がなくなり、助けるどころではなくなってしまいます。
つまり、「他人に負担をかけない(奪わない)」ことが、良好な人間関係を築くための基本であり、さらに「何かを与える」ことができれば、より良い関係を作ることができる のです。

発達障害(ASD・ADHD)の認知が広がり、支援制度も充実してきました。しかし、その一方で、「発達障害の人が加害者になり得る」という問題も浮上しています。
例えば、「カサンドラ症候群」 という言葉があります。これは、発達障害の特性によってパートナーが精神的に疲弊してしまう現象を指します。職場においても、発達障害の特性が原因で部下や同僚がストレスを感じ、疲弊してしまうケースがあります。
社会の中で生活する以上、発達障害の有無にかかわらず、一定の社会的責任を果たす必要があります。その責任を果たすためには、以下の2つのポイントを意識することが大切です。
この2点を意識することで、発達障害の特性による対人関係の問題を減らし、社会適応しやすくなります。
発達障害の特性は、知らず知らずのうちに相手に負担をかけることがあります。これを「奪う」行動として意識することで、改善への第一歩を踏み出すことができます。
① ADHDの不注意による「奪う」行動
② ADHDの多動・衝動性による「奪う」行動
③ ASDの対人面の特性による「奪う」行動
④ ASDのこだわりによる「奪う」行動
このように、発達障害の特性によって無意識のうちに相手から何かを奪ってしまうことがあります。だからこそ、意識的に「奪わないようにする」ことが大切です。
① 障害のある現実を受け止める
まず、自分の特性を理解し、無意識に奪ってしまっていることがあると認識することが重要です。
② 無意識の「奪う」行動を観察する
日常生活の中で、自分がどのような場面で相手に負担をかけているのかを観察し、改善点を見つけていきましょう。
③ できることから徐々に改善する

「奪う」ことを減らすだけでなく、意識的に「与える」ことを増やす ことも重要です。そのためには、発達障害の特性を強みに変える工夫が必要です。
① ADHDの衝動性をサービス精神に活かす
② ASDのこだわりを成果物に活かす
発達障害があるからといって、社会適応ができないわけではありません。意識的に行動を調整し、「奪わずに与える」姿勢を持つことで、社会との良好な関係を築くことができます。