ADHD【注意欠如多動症】の人の特徴と診断,本人や家族支援について

今回は、ADHD(注意欠如・多動症)の主な3つの症状である不注意、多動性、衝動性について具体的な行動や診断内容、そして自閉症との併存についても確認していきます。

ADHDは日本語で注意欠如・多動症多動性障害と呼ばれ、行動抑制の遅れ、すなわち行動コントロールの問題として見られます。

主な症状として不注意、過活動、衝動性の3つが挙げられます。

では、これらの特徴を具体的に見ていきましょう。

ADHDの三つの主な症状

① 不注意

注意を適切に持続したりコントロールするのが難しい状態を指します。

  • 教室で先生の話に集中できず、他のことを考えてしまう。
  • 周囲の物に気を取られてしまう。
  • 教科書を読み飛ばしてしまう。
  • テストで見落としが多く、名前を書き忘れたり問題を飛ばしてしまう。
  • 宿題を忘れないようにメモをしても、どこに書いたかを忘れてしまう。
  • 宿題を始めても5分と持たず、最後までやり遂げられない。
  • 完成した宿題を机の上に置き忘れてしまう。
  • ランドセルに入れていても、文房具を元に戻すのを忘れ、毎日のように失くしてしまう。
  • 毎日持ち物のチェックをしているのに、忘れ物が多い。
  • 絵の具セットを忘れるため、図工の時間に作品を完成できない。
  • 時にはランドセルを忘れて学校に行くこともある。
  • 朝の準備や帰宅後にすべきことが決まっていても、言われないと行動を起こせない。
  • 道を歩いていると電信柱にぶつかることがある。
  • 小さな段差に気づかず、つまずいて転ぶことがある。
ADHDの三つの主な症状

②過活動

多動性ともいい、体の動きをコントロールできない状態を指します。

  • 幼児期には外に出るとすぐに走り出してしまう。
  • 家の中でも常に動き回り、じっとしていられない。
  • 学校では授業中に立ち歩き、教室の外に出てしまうことがある。
  • 椅子に座っていてもじっとしていられず、絶えず体を動かしてしまう。
  • 列に並んでいると同じ場所に立っていられない。

③衝動性

何かの刺激に対する反応をコントロールできない状態を指します。

  • 話を最後まで聞かずに相手を遮って話をする。
  • アイディアを思いつくと、今していることを全て放り出してしまう。
  • 他人のゲームに割り込んで邪魔をする。
  • 悪口を言われたと思うと手を出してしまう。
  • 不適切な行動であることは理解していても、行動を止めることができない。
     

ADHDの人には注意・行動・感情のコントロールができないという特徴があり、日常生活に大きな困難が生じます。

自分や周囲の人に当てはまる点があるかもしれません。

例えば、物の置き場所を忘れてしまう、ボーっとして大事なことに気が付かない、じっとしているのが苦痛、口を滑らせてしまうなどの経験がある人は少なくないでしょう。

ADHDの特徴は珍しいものではないため、その程度によって障害かどうかの境界線を引くのは難しいです。

ADHDの臨床的特徴

  1. 幼児期から学齢期にかけてADHDを疑い受診するケースの多くは、実際には広汎性発達障害と
    判明することが多い。

  2. ADHDの特徴がある子どもの多くは、同時に読み書き障害などの学習面の問題を抱えている

  3. 意図しない失敗や周囲からの叱責から、うつ状態、不安障害、反抗挑戦性障害などの
    二次的な問題が生じる。

このように、診断の難しさはあるものの、ADHDの特徴が日常生活に著しい障害をもたらす場合は
それを考慮した支援が有効です。

また、多動不注意が本当にADHDによるものかどうかを見極めることが重要です。
年齢と比較して正常範囲内にある場合は診断に至りませんし、感覚の問題や学習障害が原因の場合もあります。

広汎性発達障害では特に幼児期に多動落ち着きのなさが見られることがあります。
この場合、不安や興味の限局の問題など広汎性発達障害の特徴で説明できる場合は
ADHDの診断にはなりません。

DSMやICDでは、広汎性発達障害の診断がつく場合、ADHDの診断はつかないというヒエラルキーが
ありますが、実際には支援の観点から併存する場合もあります。

WISC-Ⅲ ウェクスラー式知能検査の実施

ADHDの傾向がある子供にWISC-Ⅲを実施すると、注意記憶の群指数を構成する
「算数」や「数唱」の得点が低くなることがあります。

これは、聴覚的な刺激に集中して数を記憶したり暗算したりすることが苦手なためです。

短時間で正確に迅速に作業する処理速度の群指数を構成する
「符号」や「記号」も低くなることがあります。

見本と同じように「符号」を書く際に間違いや書き飛ばしが見られ、数多くの項目を処理できません。

また、「記号」でも見落としや見誤りがあり、並んだ刺激を適切に処理できないことがあります。

知覚統合

  • 「絵画完成」は、絵の中の欠けている部分を見つける課題ですが、絵刺激を注意深く観察できず
    欠けている部分を見落とすことがあります。
  • 「絵画配列」では、絵の細かい違いに気づけず、ストーリーの順番に並び替えることが
     難しい場合があります。
  • 「迷路」では、筆を止めることができずに衝動的に袋小路に入り込んでしまうことが見られます。

共通する傾向は見られますが、ADHDの特徴がどのように検査結果に現れるかは個人差があります。

KABC心理教育アセスメントバッテリーでは、同時処理よりも継次処理が低くなる傾向にあります。

これは次々と提示される刺激に適切に注意を払い、段階的に処理することが
苦手なためと考えられます。

課題の内容

  • 一連の手の動作の模倣や聴覚的に数を記憶する数唱、言われた単語を記憶してその順に指すといった課題が含まれます。
  • 知能検査は忍耐と集中力を求められるため、持続して取り組むことが難しく、途中で放棄してしまうこともあります。

検査結果にばらつきが見られる場合、なぜその項目ができなかったのか、どの部分でつまずいたのか
その原因を探る必要があります。

代表的な仮説「Barkley,R・Aの仮設」

ADHDは実行機能の障害であり、注意欠陥ではなく自己抑制の欠陥と考えられています。
作業記憶に欠陥があり、行動自体を忘れてしまうとされます。

内言語を使って自己抑制することができず、時間感覚を持つことが難しいため
未来の出来事を時間軸で理解できず、意図することやその実行が困難です。

自己動機づけ、計画立案、問題解決能力が欠けています。

行動療法

ADHDの一次的な問題は注意や行動のコントロールにあるため、行動の次元で
アプローチする方法がよく用いられます。

行動分析行動変容の考え方が基本で、治療に適用するのが行動療法です。

行動分析
  • 主観や情緒的な解釈を除き、行動のレベルで問題点を明らかにします。
  • 行動の引き金となる先行刺激が存在し、行動が強化されたり消去されたりするのは
    結果に左右されます。
  • ある状況で適切な行動が自発的になされれば、ご褒美を与えてそれを強化します。

忘れ物をする課題について、感情的に叱責するのではなく、行動のレベルで問題を考え
客観的に観察します。

例えば、学校から持ち帰るべきプリント類を忘れるのは、授業終了時に持ち帰るべきものが
判別できないからかもしれません。

大きなカバンを持たせ、帰り際に先生に声をかけてもらって机の中のものを全て
入れるようにすれば、忘れ物を防げます。

具体的な目標設定

  • 目標は達成可能なレベルに設定し、成功体験を積ませます。具体的な行動レベルの目標を立てることが重要です。
  • ADHDの人は失敗が多いため、周囲の人はその失敗を伝えたくなりますが、実際には次の失敗を防ぐことは少ないです。その場面でどう行動するのが適切かを具体的に伝え、そのきっかけを与える方が効果的です。

二次的な問題の予防

失敗を指摘して反省を促すのではなく、どうすればうまくいくかを具体的に工夫し
プラスのフィードバックを得られるようにします。

この積み重ねが二次的な問題の予防につながります。


生活上の困難が大きい場合は対処療法として薬物療法が考えられます。
服薬については発達障害の専門医に相談し、診断を受ける必要があります

ADHDの子供を持つ親は疲労困憊していることが多く、具体的な対応方法を伝えるとともに
その心情を共感的に受け止め、支えることが求められます。

二次的な問題の予防