自己肯定感に悩んでいます【うつ病・自殺予防週間、精神科医が約8分でご質問にお答えします】

はじめに

「自己肯定感に悩んでいます」というご質問をいただきました。

結論から申し上げますと、自己肯定感を高めるための近道はありません。しかし、日々の行動の積み重ねによって、自分自身を信じる力を養うことはできます。

この記事では、自己肯定感の概要、その影響、形成要因、そして実践的な向上方法について詳しく解説していきます。

自己肯定感とは?

自己肯定感とは、「自分を信じる感覚」を指します。この感覚が強い人は、困難な状況に直面しても前向きに行動を続けることができます。一方で、自己肯定感が低いと、自分自身を否定しやすくなり、不安や落ち込みが慢性的に続くこともあります。

さらに、極端に自己肯定感が低下すると、うつ症状や不安障害を引き起こし、場合によっては「希死念慮」(死にたいという考え)が慢性的に現れることもあると言われています。そのため、自己肯定感を適切に保つことは、精神的な健康を維持する上でも非常に重要です。

自己肯定感が低いとどんな影響があるのか?

自己肯定感が低いとどんな影響があるのか?

自己肯定感が低いことによる影響は、大きく3つに分けられます。

  1. 本来の実力を発揮しにくくなる
    自己否定の声が強くなることで、自信を持って行動することが難しくなります。本番に弱くなったり、成果を出す場面で自分を信じられず、能力を十分に発揮できないことがあります。
  2. 行動やチャレンジをしにくくなる
    何か新しいことに挑戦する際には、必ずリスクが伴います。自己肯定感が低いと、不安が過度に膨らみ、一歩踏み出すことができなくなる場合があります。「失敗したらどうしよう」「自分には無理かもしれない」といったネガティブな考えが先行し、チャレンジを避けるようになってしまいます。
  3. 対人関係がうまくいかなくなる
    自己肯定感が低いと、人との関係にも影響を及ぼします。例えば、人に流されやすくなり、相手の意見に従いすぎてしまうことがあります。または、逆に他者を信じることができず、疑心暗鬼になったり、人間関係をコントロールしようとしてしまうこともあります。

自己肯定感を決める要素

自己肯定感は、次の3つの要素によって決まると言われています。

  1. 生まれ持った性格
    もともとの性格によって、自己肯定感の持ちやすさは人それぞれ異なります。
  2. 環境からの影響
    幼少期に周囲から褒められることが多かったのか、それとも否定されることが多かったのか。こうした環境要因が自己肯定感の形成に大きく影響します。
  3. 経験と行動の積み重ね
    うまくいった経験が多ければ、自己肯定感は高まりやすくなります。逆に、失敗経験が多いと、「どうせ自分には無理だ」と感じ、自己肯定感が低下しやすくなります。

過去を振り返ることの難しさ

自己肯定感を高めるために、「過去を振り返れば良いのでは?」という考えもありますが、実際には以下のような難しさが伴います。

  1. 過去は変えられない
    過去の出来事を整理することはできますが、その事実自体を変えることはできません。
  2. 過去を思い出すことでストレスが増す可能性がある
    つらい記憶を振り返ることが、かえって精神的な負担となる場合もあります。
  3. 「今」と「未来」に目が向かなくなる
    過去にとらわれすぎると、現在や未来の行動が疎かになり、前進することが難しくなります。

したがって、自己肯定感を高めるためには、「今」を大切にし、「未来」につなげる行動を積み重ねることが重要です。

自己肯定感を高めるための実践方法

自己肯定感を高めるための実践方法

自己肯定感を高めるためには、認知行動療法の一つである「ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)」の考え方が参考になります。ACTでは、以下の3つのステップを重視します。

  1. 自分の目指す方向(価値観)を明確にする
    何を大切にしたいのか、どのような人生を歩みたいのかを明確にしましょう。例えば、「人を助ける仕事をしたい」「クリエイティブなことを続けたい」など、自分にとって意味のある目標を見つけることが大切です。
  2. 現在の自分を受け入れ、客観的に分析する
    目標に対して、今の自分はどの位置にいるのかを冷静に見つめましょう。過去の失敗にとらわれるのではなく、今の自分の状況を理解し、受け入れることが重要です。
  3. 小さな成功体験を積み重ねる
    一歩ずつ前進することが、自己肯定感を高める鍵です。大きな目標をいきなり達成しようとするのではなく、日々の小さな成功体験を重ねることで、「自分にもできる」という実感を得ることができます。

例えば、「毎日5分だけ運動する」「日記を1行でも書く」など、簡単に達成できる目標を設定し、それを継続することが重要です。

まとめ

今回は、「自己肯定感に悩んでいます」というご相談について、自己肯定感の概要や影響、形成要因、そして向上のための具体的な方法について解説しました。

自己肯定感は、「自分を信じられる感覚」であり、行動力や精神的な安定にも大きな影響を与えます。過去の経験が影響することもありますが、今の行動によって未来を変えることができます。

日々の小さな成功体験を積み重ねることで、自己肯定感は徐々に高まっていきます。「今、自分にできること」に集中し、一歩ずつ前進していきましょう。

あなたの努力が、きっと未来の自信につながるはずです。