知的障害を伴う自閉症スペクトラムの特徴について

今回は、知的障害を伴う自閉症スペクトラム(Autism Spectrum Disorders:ASD)の特徴
について詳しく説明します。

自閉症スペクトラムとは

自閉症スペクトラムは、その名の通り、様々な特徴が連続的に存在するスペクトラム(連続体)として
理解されています。以下は、関連する主な概念です。

  • 自閉症スペクトラム(Autism Spectrum Disorders:ASD)
  • 広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders:PDD)
  • 知的障害(Intellectual Disability:ID)

これらはそれぞれ異なる定義や概念を持っていますが、知的障害を伴う自閉症スペクトラムの場合、
主な障害は自閉症スペクトラムにあります。
つまり、広汎性発達障害や知的障害とは異なる概念ですが、これらが同時に存在する場合には
「知的障害を伴う自閉症スペクトラム」と呼びます。

ASDの理解と支援の重要性

ASD(自閉症スペクトラム)は非常に困難な障害であり、その特性を正しく理解し、
適切な支援を行わなければ、強度行動障害が現れることがあります。
このため、ASDに関する正しい知識と支援方法の理解が不可欠です。

現在でも、ASDに関する精神医学的研究、脳科学研究、行動研究、教育学的研究が進められており、
想像力の欠如や感覚処理の問題、一つずつ処理する記憶の弱さなど、
ASDの特性がより明確に理解されるようになってきました。
また、ASDのある人の割合は知的障害のある人の割合を上回ることが分かっています。

日本におけるASDの福祉施策

日本では、1961年に「情緒障害短期治療施設」が設置され、「自閉症」の福祉施策が始まりました。1980年には、児童福祉施設として第一種自閉症児施設(医療型)および第二種自閉症児施設(福祉型)が設置されました。
各地の療育センターでは、「ASDに特化」した療育環境が整備され、障害理解のためのアセスメントが行われるなど、ASD療育の専門性が一般的に認められています。
しかし、一部の療育機関や学校、福祉施設では、ASDを知的障害の一部として扱う現状も依然として存在しています。

ソーシャル・インクルージョンとインクルーシブ教育

ソーシャル・インクルージョン(social inclusion)は、社会的弱者も含めた市民一人ひとりを支援し、
地域社会の一員として支え合う考え方です。
インクルーシブ教育システムでは、人間の多様性を尊重し、障害者が可能な限り自由な社会に
参加できることを目指しています。
このシステムは障害者の権利に関する条約24条に基づいており、合理的配慮を提供すること
が求められています。
これらの考え方やシステムは国連主導で推進されています。

具体的な支援としては、地域での生活を支援する意思決定支援などが含まれます。
ASDのある人が地域で暮らせるようにするために、具体的な支援方法が求められています。

自閉症スペクトラムと広汎性発達障害の違い

自閉症スペクトラムと広汎性発達障害の概念は異なります。
広汎性発達障害は、アスペルガー症候群やトゥレット症候群など、独自の診断が存在するため、
両者は併存しません
一方、自閉症スペクトラムは、多様な特徴が連続的に存在するスペクトラム(連続体)
と見なされます。

自閉症スペクトラムの原因はまだ明確ではありませんが、3歳以前に発症し、一定の数の特徴的な症状が見られる場合にASDと診断されます。
この診断は、DSM(精神障害の診断と統計マニュアル)やICD(国際疾病分類)といった操作的診断基準に基づいて行われます。

自閉症スペクトラムの特性

自閉症スペクトラムの人々は、社会性の障害コミュニケーションの質的な障害
イマジネーションの障害といった特徴を持ちます。加えて、不器用さ、感覚処理の問題、不注意などの問題も抱えることがあります。
特に知的障害を伴う自閉症スペクトラムの人々は、日常生活で自立するために、多様なライフスキルを身につける必要があります。

生活の中で必要なスキル

知的障害を伴う自閉症スペクトラムの人々は、日常生活で自立するために、次のようなスキルを身につける必要があります。

  • 衣食住などの日常生活の自立
  • 就労に繋がる技能の習得
  • レジャーを楽しむ力
  • 市民として地域の人々と繋がる力

以上のように、ASDの人々の特性を理解し、適切な支援を提供することが重要です。

DSM-5の診断基準

DSM-5では、自閉症スペクトラムの診断基準が以下の2つに分類されます。

  1. 対人的コミュニケーション及び対人的相互交流の障害
    • 対人-情緒的な相互性の障害(社会性の障害)
    • 対人的相互交流のために用いられる非言語的コミュニケーション行動の障害(コミュニケーションの質的な障害)
    • 仲間関係の発達、維持、理解の障害
  2. 限局された反復する行動や興味
    • 常同的・反復的な言語、運動あるいは物の使用
    • 同じことへの固執、習慣や儀式的パターンへの過度のこだわり
    • 著しく限局的で固着した興味
    • 感覚刺激への過敏あるいは鈍麻

対人的コミュニケーション及び対人的相互交流の障害の詳細

  1. 対人-情緒的な相互性の障害(社会性の障害)
    • 幼児期には、他の人の存在に無関心で、物への興味が強いことがあります。
    • 学童期以降は、友達関係を築くのが困難で、社会性の発達に課題があります。しかし、ソーシャルスキルやコミュニケーションの力が身につくことで、人との関わりが改善されることもあります。
  2. 対人的相互交流のために用いられる非言語的コミュニケーション行動の障害(コミュニケーションの質的な障害)
    • ASDの人々は、冗談を真剣に受け取ったり、会話の一部にしか注目しなかったりすることがあります。
    • コミュニケーションを可能にするためには、わかりやすい環境づくりが重要です。これを「構造化」と呼びます。
  3. 仲間関係の発達、維持、理解の障害
    • 幼児期から学齢期にかけては、ごっこ遊びの共有や友達を作る力が築かれますが、ASDの特徴が原因でこれが難しい場合があります。
    • 学齢期には、適切に振る舞うための行動調整が難しく、「仲間はずれ」や「いじめ」に遭うことがあります。

限局された反復する行動や興味の詳細

  1. 常同的・反復的な言語、運動あるいは物の使用
    • ミニカーを繰り返し並べたり、テレビのコマーシャルを再現したりする行動があります。
  2. 同じことへの固執、習慣や儀式的パターンへの過度のこだわり
    • 独特な日課や手順が決まっていて、変更を嫌がることがあります。
  3. 著しく限局的で固着した興味
    • 特定のテレビ番組や電話番号、時刻表に強い関心を示すことがあります。
  4. 感覚刺激への過敏あるいは鈍麻
    • 感覚処理の問題があり、感覚入力に対して低反応または過反応を示すことがあります。

ASDの人々への支援には、感覚調整障害プラクシスの障害への対応が不可欠です。
感覚調整障害は感覚入力に対する反応が異常な状態であり、プラクシス障害は運動感覚の識別が弱いために器用な動きができない状態です。

感覚調整障害には主に4つのタイプがあります。

低登録:他の人に触れられても気が付かない、読んでも振り向かない、痛みを訴えない等、反応が鈍感に見える
感覚過敏:過度にくすぐったり、他の人に触れられると過敏に反応する、大きな声が苦手等、過敏な反応が見られる
感覚探求:その場でくるくる回ったり、ジャンプしたり、水遊びをやめようとしない等、何らかの刺激を自身に入力してる様子がある
感覚逃避:うるさい部屋に入ろうとしない、人混みを避けるといった、何らかの刺激を避けようとする動きがある

支援者は以上4つのタイプから、子どもがどのタイプに当てはまるのか、もしくは複数のタイプに
あてはまるのかを見て、その結果子どもに何が生じているのかを推定し、
支援の計画を立てることが重要となります。

以上が、知的障害を伴う自閉症スペクトラムの主な特徴についてのお話でした。
お読みいただきまして、ありがとうございました。