― パニック障害以外にも関連する要因を精神科医が解説 ―
突然の強い不安や恐怖心に襲われ、動悸や息苦しさ、発汗などの身体的症状が現れる「パニック発作」。この症状は一般的に「パニック障害」と関連付けられますが、実際には他の精神疾患や身体的要因によっても引き起こされることがあります。本記事では、「パニック発作が起こる10の背景」を解説し、それぞれの特徴や治療の方向性について詳しく見ていきます。

パニック発作の最も一般的な原因が「パニック障害」です。パニック障害の特徴は以下の二つです。
この疾患は、脳内のセロトニン不足が関与していると考えられています。そのため、治療法としては抗うつ薬を用いてセロトニンの量を増やし、発作に対する不安を軽減する「脱感作法」を並行して行うことが推奨されています。
パニック発作は、社会不安障害や全般性不安障害といった他の不安障害と併発することがあります。特に、社会不安障害では「人前に出る」ことが強いストレスとなり、発作を引き起こすことがあります。不安障害全般は共通のメカニズムを持っているため、パニック障害と同様に抗うつ薬や脱感作法による治療が有効とされています。
うつ病や適応障害の発症過程や治療中に、パニック発作が生じることがあります。うつ病とパニック障害は脳内のメカニズムに多くの共通点があり、相互に合併しやすい傾向があります。そのため、うつ病や適応障害の治療を続けながら、不安に対する耐性をつけるための脱感作法を並行して行うことが重要になります。
双極性障害(躁うつ病)でも、うつ状態や気分の急激な変動が原因でパニック発作が起こることがあります。特に、気分が極端に落ち込んでいるときや、感情の起伏が激しいときに発作が出やすくなります。治療の基本は双極性障害そのものを安定させることです。ただし、抗うつ薬は躁状態を引き起こす可能性があるため、慎重に使用する必要があります。
統合失調症の急性期や、過度のストレスがかかったときにパニック発作が発生することがあります。これは、統合失調症の特徴である「脳のストレスに対する過敏性」が影響していると考えられます。治療の基本は統合失調症に適した薬物療法を行い、脳を適切に休ませることです。
ADHDの人はストレスに対する耐性が低く、強いストレスがかかるとパニック発作のような症状が出ることがあります。背景には「衝動性」が関与しており、ストレスに対して敏感に反応しやすい傾向があります。治療としては、ADHDの薬を使用することが検討されます。また、ストレスを感じたときに一歩引く「クールダウンの技術」を身につけることも有効です。
自閉症スペクトラム(ASD)の人は、予想外の出来事や急な変化に対して強いストレスを感じやすい傾向があります。このため、突然の環境の変化がパニック発作を引き起こす要因になります。対策としては、事前に変化に備える工夫をしつつ、必要に応じて頓服薬を持つことが推奨されます。
知的障害や境界知能(IQが70前後)を持つ人は、自身の処理能力を超える負荷がかかったときにパニック発作を起こすことがあります。このような場合、過剰な負担がかからないような環境調整が重要です。また、急な発作に備えて頓服薬を持つことも有効です。
境界性パーソナリティ障害の特徴である「感情の不安定さ」や「衝動的な行動」が、パニック発作を引き起こすことがあります。この疾患では、感情のコントロールが難しく、ストレスへの過剰反応が発作の原因となることが多いです。対策としては、薬物療法を活用しつつ、時間をかけて感情調節のスキルを身につけていくことが重要になります。
パニック発作は精神的な要因だけでなく、身体的な問題によっても引き起こされることがあります。特に「甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)」では、ホルモンの過剰分泌によって動悸や不安感が強まり、パニック発作のような症状が出ることがあります。このような場合は、まず内科的な治療を優先します。内科的な治療後も発作が続く場合は、精神科的なアプローチを検討します。

本記事では、「パニック発作が起こる10の背景」について解説しました。
パニック発作はパニック障害に限らず、不安障害、うつ病、双極性障害、統合失調症、発達障害、パーソナリティ障害、身体的な要因など、多くの背景を持つことがわかります。治療の基本は、原因となる疾患の治療を進めつつ、ストレスを減らす工夫をすることです。また、頓服薬を活用しながら、自分に合ったストレス対策を身につけることが重要になります。
もしパニック発作に悩んでいる場合は、一度専門医に相談してみることをおすすめします。