場面緘黙症

【場面緘黙症についての解説記事】

場面緘黙症とは

場面緘黙症とは

場面緘黙症とは、自宅など安心できる環境では普通に話せるものの、学校や職場など特定の場面では話すことができなくなる疾患です。特に幼少期から学齢期にかけて発症することが多く、入学後に症状が明らかになるケースがよく見られます。しかし、大人になっても症状が残ることがあり、その場合は「部分的に話しにくい」といった状態が続くこともあります。また、社会不安症と併発するケースも多く見られます。

場面緘黙症の主な特徴

場面緘黙症の主な特徴
  • 特定の場面でのみ話せなくなる
  • 自宅や親しい人といるときは問題なく会話ができる
  • 学校や公共の場では極度の緊張を感じる
  • 少しずつ改善する場合もあるが、成人後も一部の状況で話しづらさを感じることがある
  • 社会不安症を伴うことが多い

DSM-5の診断基準

場面緘黙症はDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)では「選択性緘黙」として分類され、以下の条件を満たす場合に診断されます。

  • A. 他の状況では話せるにもかかわらず、話すことが期待される特定の状況では話せない
  • B. その症状が学業や仕事、対人関係に支障をきたしている
  • C. 症状が1か月以上継続している

他の類似疾患との違い

他の類似疾患との違い

場面緘黙症は、社会不安症と症状が類似しているものの、異なる概念の疾患です。場面緘黙症では「話したくない」のではなく、「強い不安のため話せない」という点が特徴です。そのため、本人が自覚していない場合もあり、不安の原因を明確に説明できないこともあります。

治療方法

場面緘黙症の治療は、社会不安症の治療方法に準じることが多いです。

1. 系統的脱感作法

1. 系統的脱感作法

段階的に不安な環境に慣れさせる方法です。例えば、最初は家族や親しい友人といる環境で話す練習をし、徐々に教師やクラスメートの前で話すことに慣れていくといったアプローチが取られます。

2. 刺激フェーディング法

安心できる環境に少しずつ新しい刺激を加え、無理なく適応できるようにする方法です。

  • フェードイン手続き: 話しやすい人がいる場で、徐々に苦手な人を交えて会話を行う
  • フェードアウト手続き: 最初は安心できる要素が多い環境で会話を行い、少しずつその要素を減らしていく

3. 認知行動療法(CBT)

不安を和らげるためのトレーニングを行うことで、場面緘黙症の改善を目指します。例えば、不安を軽減するための呼吸法やポジティブな考え方を身につける練習を行います。

4. 薬物療法

4. 薬物療法

症状が強く、日常生活に大きな支障をきたしている場合には、薬物療法が検討されることもあります。

  • 抗うつ薬(SSRI): 社会不安症を併発している場合、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が処方されることがあります。
  • 漢方薬: 比較的副作用が少なく、安全性が高いため、10代以下の患者にも検討されることがあります。

避けるべき対応

  • 「なぜ話せないのか?」と問い詰める → 本人の不安を強め、症状を悪化させる可能性がある
  • 無理に話させようとする → 圧力をかけると逆効果になることが多い
  • 親の養育が原因と決めつける → 親の養育スタイルが直接の原因ではないため、責めることは適切ではない

予後

場面緘黙症は、多くの場合、適切な対応をとることで徐々に改善していきます。ただし、長期間話せない環境にいるとストレスが蓄積し、二次的にうつ病や強い対人不安を発症する可能性もあります。成人後も部分的に話しにくさが残るケースもありますが、社会不安症と同様の治療を受けることで、改善が期待できます。

まとめ

まとめ
  • 場面緘黙症は特定の場面で話せなくなる疾患であり、社会不安症と共通点が多い
  • 無理に話させることは逆効果であり、段階的に慣らしていく治療が重要
  • 治療には認知行動療法、系統的脱感作法、刺激フェーディング法が有効
  • 重症の場合には薬物療法が検討される
  • 適切な支援を受けることで、多くの人が改善できる

場面緘黙症は適切な治療と環境調整によって改善が可能です。周囲の理解とサポートが重要であり、本人のペースに合わせた支援が求められます。