はじめに
今回のテーマは、「パーソナリティ障害は治りますか?」という質問にお答えするものです。結論から申し上げますと、「パーソナリティ障害は徐々に改善を図ることができますが、本人の意思が大前提となります」。
この記事では、パーソナリティ障害についての基本的な理解から、治療方法、取り組む際の心構えまでを丁寧に解説していきます。
パーソナリティ障害とは?
まず、パーソナリティ障害とは何かを整理しましょう。パーソナリティ障害は、「認知」「対人関係」「感情」「衝動」といった面で強い偏りが見られ、その状態が長期間にわたり、さまざまな状況において持続することで、社会生活に大きな困難をもたらす状態を指します。
この障害の背景には、大きく分けて2つの要因が関係していると考えられています。
- 素因(生まれ持った性格傾向)
人それぞれが持つ元々の性格傾向が、パーソナリティ障害に影響することがあります。
- 経験(環境的要因)
成長過程におけるさまざまな経験、特にネガティブな出来事が性格に影響を与え、偏りを生むことがあります。
パーソナリティ障害の症状
パーソナリティ障害にはいくつかの種類がありますが、主な症状は以下の3つにまとめられます。
- 他者を傷つける行動
種類によっては、攻撃的な態度や他人を傷つける言動が見られることがあります。
- 自己破壊的な行動
自傷行為や過度な自己否定など、自分自身を傷つける行動が現れることもあります。
- 空虚感やストレス対処の困難さ
常に満たされない気持ちを抱えたり、ストレスへの対処がうまくできないことがあります。
パーソナリティ障害の治療方針
パーソナリティ障害には特効薬はありません。そのため、治療の基本は「偏りを修正すること」となります。治療は次の3つのステップで進めていきます。
- 直面と受け入れ
- これまでの自分の言動を振り返り、自分の認知や対人関係にどのような偏りがあるのかを理解する。
- その偏りが自分自身や他人にどのような影響を与えてきたのかを、現実として受け入れる。
- 対処技術の獲得
- アンガーマネジメント:怒りや衝動を抑える練習。
- アサーション:他者に対して攻撃的にも消極的にもならないバランスの取れた自己表現の練習。
- 認知修正:自責や他責に偏りがちな考え方を見直し、別の視点を持つ。
- 実践場面での応用
- 感情が不安定な状況下で、獲得した技術を実際に使う練習をする。
- 失敗も想定しつつ、実践を重ね、技術をより深く身に着けていく。
なぜ「本人の意思」が重要なのか?
パーソナリティ障害の治療では、「本人の意思」が極めて重要です。その理由は、次の3点にあります。
- 嫌な面に直面する必要がある 自分の偏りや、それによって他者や自分自身に与えてきた影響を振り返る作業は、精神的に苦しいものです。それを乗り越えるには、本人の意思が不可欠です。
- 我慢が求められる場面がある 問題となる行動は、ストレスに対する自己流の対処法であることが多いです。それを止める際に、新たな方法を見つけるまでの間、耐える力が必要です。
- 結果がすぐには出ない 長年染みついた思考や行動の癖を修正するには時間がかかります。結果がすぐに出ないことに耐えつつ、地道に努力を続けるには、強い意思が求められます。
補助的な治療方法
治療の主軸は本人の意思と実践ですが、必要に応じて以下の薬物療法を併用することもあります。
- 安定剤(頓服薬) 感情が高ぶったときに、症状を落ち着かせるために使用されます。
- 抗うつ薬 うつ病を併発している場合に処方されます。
- ADHD治療薬 ADHDを合併している場合、その症状を和らげるために使われることがあります。
心療内科とカウンセリングの活用
治療においては、心療内科とカウンセリングも重要な役割を果たします。
- 心療内科:第三者の目で症状や取り組みの方向性を確認する場。限られた診察時間内で、今後の方針を明確にする役割があります。
- カウンセリング:時間をかけて日々の取り組みを振り返り、必要な修正を行う場。費用面での負担はありますが、より細かいサポートが受けられます。
おわりに
今回は、「パーソナリティ障害は治りますか?」というテーマを掘り下げました。結論として、パーソナリティ障害は一朝一夕には治るものではありません。しかし、本人が自分の偏りに向き合い、対処法を学び、実践を重ねることで、確実に改善へと向かうことができます。
治療の過程はつらいこともありますが、その努力は決して無駄にはなりません。周囲のサポートも受けながら、自分自身と向き合う旅路を、一歩ずつ進んでいきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。