はじめに
近年、「生きづらさ」や「長く続く不調」の背景に発達障害があるのではないかと考えられるケースが増えています。しかし、それ以外にも、知的機能の全般的な困難を伴う「知的障害」が影響している可能性があります。
知的障害は幼少期に発見されることが多いですが、成人するまで気づかれず、不適応やうつ症状をきっかけに発見されることもあります。診断を受けることは、受け入れがたい場合もありますが、一方で適切なサポートを受けるための第一歩にもなります。
本記事では、知的障害の特徴、成人後に発見されるケース、診断方法、そして支援の方向性について詳しく解説します。
知的障害とは?
知的障害の定義
知的障害は、考える力や問題解決能力、言語の理解、対人関係など、知的機能全般に困難がある状態を指します。
診断基準の1つとして、IQが70未満であり、生活に支障があることが要件とされています。IQ70未満の割合は全人口の約2%とされています。
知的障害の症状
認知機能の困難
- 問題解決が苦手
- 言葉の理解や会話が難しい
- 物事の優先順位をつけるのが苦手
社会生活の困難
- 学業や仕事についていけない
- 日常生活でのミスや忘れ物が多い
- 周囲とのコミュニケーションが難しい
精神的な症状
- 落ち込みや不安(うつ症状)
- イライラや衝動的な行動
- 強いストレスを受けると幻覚などの精神病症状が出ることもある
知的障害が成人まで気づかれないケース
気づかれにくい要因
幼少期に発見されることが多い知的障害ですが、以下の理由で成人するまで気づかれないケースもあります。
軽度で見た目に分かりにくい
- 知的障害が軽度の場合、外見や日常の会話では問題がないように見える
学校で目立った不適応がない
- 学業面では苦手な部分があっても、なんとか対応できていたため、問題視されなかった
周囲のサポートが充実していた
- 家族や学校の先生が積極的に支援し、困難が目立たなかった
- しかし、サポートがなくなると問題が表面化することがある
成人後に発見されるきっかけ
職場での不適応
- 難しい業務に対応できず、強いストレスを感じる
- 仕事でミスが多く、叱責や解雇につながる
- 転職を繰り返したり、職場に適応できない状態が続く
精神的な不調
- 強いストレスがかかると、うつ症状や不安が増加
- ストレス対処(ストレスマネジメント)が苦手で、問題が悪化しやすい
- うつ病を繰り返したり、回復しにくい
知的障害と境界知能の違い
知的障害と似た状態に「境界知能」があります。
| 項目 | 知的障害 | 境界知能 |
| IQの基準 | IQ70未満 | IQ70~85程度 |
| 不適応のリスク | 生活面での困難が大きい | 環境によって困難が変化する |
| 福祉支援 | 療育手帳の取得が可能 | 支援を受けにくいことが多い |
知的障害がある場合、福祉制度の支援を受けられる可能性があるため、サポート体制を整えやすいという違いがあります。
知的障害が疑われる場合の対応
診断方法
知的障害の診断には、WAIS-Ⅳ(ウェクスラー成人知能検査)などの知能検査を実施し、IQを測定します。
- 過去の学習状況(勉強が極端に苦手だったかなど)も参考にする
- 幼少期の発達の記録があれば、それも診断の助けになる
福祉制度の活用
IQ70未満で知的障害の診断がついた場合、療育手帳の取得を検討します。
- 療育手帳が取得できると、福祉サービスを受けやすくなる
- 手帳の申請は「心身障害者福祉センター」に相談する
- 成人後の申請も可能で、知能検査や幼少期の記録を元に審査が行われる
もし療育手帳が取得できない場合でも、うつ病などの合併があれば「精神障害者保健福祉手帳」の活用が可能です。
環境調整と治療の方向性
知的障害自体を治療する薬はありませんが、環境調整を行うことで、生活の負担を軽減し、精神的な安定を図ることが可能です。
環境調整
- 障害者枠での就労を検討する
- 負担が少なく、支援を受けられる環境を整える
- 福祉サービスを利用し、生活面でのサポートを受ける
環境調整に対して葛藤を感じる場合、実際に福祉サービスの見学をするなどして、徐々に受け入れやすくすることが大切です。
薬物療法
- うつ病を合併している場合は、抗うつ薬を使用
- 急な不調に対して、頓服薬を活用する
環境を整えたうえで、それでも精神的な症状が強い場合は、適切な薬物療法を並行して行うことが望ましいです。
まとめ
- 知的障害は、IQ70未満が基準となる知的機能の全体的な困難で、成人後に見つかることもある。
- 仕事の不適応や、うつ症状の繰り返しをきっかけに診断されることが多い。
- 診断後は、福祉制度の活用や環境調整を行い、精神面の安定を図る。
- 必要に応じて薬物療法を併用しながら、無理のない生活環境を作ることが大切。
知的障害と診断されることはショックかもしれませんが、適切なサポートを受けることで、より安定した生活を送ることが可能になります。