大人の知的障害【IQ70未満、知的機能の困難。成人で見つかる場合も。精神科医が9分でまとめ】

はじめに

近年、「生きづらさ」や「長く続く不調」の背景に発達障害があるのではないかと考えられるケースが増えています。しかし、それ以外にも、知的機能の全般的な困難を伴う「知的障害」が影響している可能性があります。

知的障害は幼少期に発見されることが多いですが、成人するまで気づかれず、不適応やうつ症状をきっかけに発見されることもあります。診断を受けることは、受け入れがたい場合もありますが、一方で適切なサポートを受けるための第一歩にもなります。

本記事では、知的障害の特徴、成人後に発見されるケース、診断方法、そして支援の方向性について詳しく解説します。

知的障害とは?

知的障害とは?

知的障害の定義

知的障害は、考える力や問題解決能力、言語の理解、対人関係など、知的機能全般に困難がある状態を指します。

診断基準の1つとして、IQが70未満であり、生活に支障があることが要件とされています。IQ70未満の割合は全人口の約2%とされています。

知的障害の症状

認知機能の困難

  • 問題解決が苦手
  • 言葉の理解や会話が難しい
  • 物事の優先順位をつけるのが苦手

社会生活の困難

  • 学業や仕事についていけない
  • 日常生活でのミスや忘れ物が多い
  • 周囲とのコミュニケーションが難しい

精神的な症状

  • 落ち込みや不安(うつ症状)
  • イライラや衝動的な行動
  • 強いストレスを受けると幻覚などの精神病症状が出ることもある

知的障害が成人まで気づかれないケース

知的障害が成人まで気づかれないケース

気づかれにくい要因

幼少期に発見されることが多い知的障害ですが、以下の理由で成人するまで気づかれないケースもあります

軽度で見た目に分かりにくい

  • 知的障害が軽度の場合、外見や日常の会話では問題がないように見える

学校で目立った不適応がない

  • 学業面では苦手な部分があっても、なんとか対応できていたため、問題視されなかった

周囲のサポートが充実していた

  • 家族や学校の先生が積極的に支援し、困難が目立たなかった
  • しかし、サポートがなくなると問題が表面化することがある

成人後に発見されるきっかけ

職場での不適応

  • 難しい業務に対応できず、強いストレスを感じる
  • 仕事でミスが多く、叱責や解雇につながる
  • 転職を繰り返したり、職場に適応できない状態が続く

精神的な不調

  • 強いストレスがかかると、うつ症状や不安が増加
  • ストレス対処(ストレスマネジメント)が苦手で、問題が悪化しやすい
  • うつ病を繰り返したり、回復しにくい

知的障害と境界知能の違い

知的障害と似た状態に「境界知能」があります。

項目知的障害境界知能
IQの基準IQ70未満IQ70~85程度
不適応のリスク生活面での困難が大きい環境によって困難が変化する
福祉支援療育手帳の取得が可能支援を受けにくいことが多い

知的障害がある場合、福祉制度の支援を受けられる可能性があるため、サポート体制を整えやすいという違いがあります。

知的障害が疑われる場合の対応

知的障害が疑われる場合の対応

診断方法

知的障害の診断には、WAIS-Ⅳ(ウェクスラー成人知能検査)などの知能検査を実施し、IQを測定します。

  • 過去の学習状況勉強が極端に苦手だったかなど)も参考にする
  • 幼少期の発達の記録があれば、それも診断の助けになる

福祉制度の活用

IQ70未満で知的障害の診断がついた場合、療育手帳の取得を検討します。

  • 療育手帳が取得できると、福祉サービスを受けやすくなる
  • 手帳の申請は「心身障害者福祉センター」に相談する
  • 成人後の申請も可能で、知能検査や幼少期の記録を元に審査が行われる

もし療育手帳が取得できない場合でも、うつ病などの合併があれば「精神障害者保健福祉手帳」の活用が可能です。

環境調整と治療の方向性

環境調整と治療の方向性

知的障害自体を治療する薬はありませんが、環境調整を行うことで、生活の負担を軽減し、精神的な安定を図ることが可能です。

環境調整

  • 障害者枠での就労を検討する
  • 負担が少なく、支援を受けられる環境を整える
  • 福祉サービスを利用し、生活面でのサポートを受ける

環境調整に対して葛藤を感じる場合、実際に福祉サービスの見学をするなどして、徐々に受け入れやすくすることが大切です。

薬物療法

  • うつ病を合併している場合は、抗うつ薬を使用
  • 急な不調に対して、頓服薬を活用する

環境を整えたうえで、それでも精神的な症状が強い場合は、適切な薬物療法を並行して行うことが望ましいです。

まとめ

  • 知的障害は、IQ70未満が基準となる知的機能の全体的な困難で、成人後に見つかることもある
  • 仕事の不適応や、うつ症状の繰り返しをきっかけに診断されることが多い。
  • 診断後は、福祉制度の活用環境調整を行い、精神面の安定を図る。
  • 必要に応じて薬物療法を併用しながら、無理のない生活環境を作ることが大切。

知的障害と診断されることはショックかもしれませんが、適切なサポートを受けることで、より安定した生活を送ることが可能になります。