知的障害【生来の知的機能の困難、成人で発見の場合も。精神科医が9分でまとめ】

はじめに

今回は「知的障害」について、丁寧に解説していきます。

心療内科・精神科の外来では、知的障害のある方の不安や混乱など、感情コントロールに関する治療を行うことがあります。近年では、幼少期から生きづらさを抱えていた方が、最初はADHDなどの発達障害を疑い受診し、検査を経て実は発達障害ではなく知的障害であると判明するケースも増えてきました。今回は、「知的障害」とは何かについて、幅広く見ていきます。

知的障害とは

まず、「知的障害」の定義について確認していきましょう。知的障害とは、脳の機能に関わる障害であり、考えたり動いたりする能力に全般的な困難を伴うものです。一般的な診断基準として、以下の3つが挙げられます。

  1. IQが70未満:知能検査(WAISなど)で測定される全般的な知能指数(IQ)が70未満であること。
  2. 日常生活への支障:単にIQが低いだけではなく、実際に生活の中で困難が見られること。
  3. 発達期からの継続:生まれつきのものであり、例えば30歳で頭を強打してIQが下がった場合などは知的障害には該当しません。

IQは知能検査によって測定され、平均は100とされています。IQ70未満に該当するのは人口の約2%であり、知的障害と診断されるひとつの基準になります。

知的障害の分類

知的障害は、IQの数値に応じて以下のように分類されます。

  • 境界知能(IQ84〜70):知的障害ではありませんが、生活の困難を感じることがあります。
  • 軽度知的障害(IQ69〜50):日常生活はある程度自立できますが、学習や仕事で困難を感じることがあります。
  • 中等度知的障害(IQ49〜35):身の回りのことは部分的にできますが、常に支援が必要です。
  • 重度知的障害(IQ34〜21):基本的な生活習慣の習得が難しく、手厚い支援が求められます。
  • 最重度知的障害(IQ20以下):日常生活において常時介助が必要です。

知的障害の症状

知的障害の症状は、大きく3つに分けることができます。

1. 認知機能の障害

  • 問題解決の困難:複雑な思考や計画を立てることが苦手です。
  • 言語理解の困難:言葉の理解や会話のやり取りに支障をきたします。
  • 対人関係の困難:人間関係の構築や維持が難しい場合があります。

2. 社会生活の困難

  • 学業不振:学校の授業についていけない。
  • 就労困難:仕事を覚えるのに時間がかかり、職場での適応に苦労する。
  • 日常生活の支障:金銭管理や公共交通機関の利用などがうまくできない。

3. 精神的な症状

  • ストレス反応:環境に適応できず、大声を出したり暴力を振るうことがあります。
  • 不安・抑うつ:自信喪失や孤独感から、不安やうつの症状が現れることがあります。
  • 精神病症状:幻覚や記憶が飛ぶ「解離」など、精神疾患に似た症状が見られる場合もあります。

知的障害に気づくタイミング

知的障害に気づく時期は、大きく2つに分かれます。

1. 子供の時に気づく

  • 発達の遅れ:歩行や言葉の発達が遅いことで気づかれる。
  • 学校生活の困難:授業についていけなかったり、友達関係がうまくいかない。

2. 大人になって気づく

  • 社会生活の不適応:仕事が続かない、人間関係がうまくいかないといった状況から判明する。
  • ADHDなど発達障害を疑い受診した結果、知的障害が判明するケースもあります。

合併する精神疾患

知的障害は他の精神疾患を合併することもあります。

  • 発達障害(ASD・ADHD):知的障害と併存する場合、社会的な困難がさらに強く現れることがあります。
  • うつ病・不安障害:慢性的なストレスから、抑うつや強い不安を伴うことがあります。
  • 統合失調症様症状:極度のストレスで、統合失調症に似た症状が出ることもあります。

知的障害への対応・治療

知的能力そのものを向上させる治療法は現状ありませんが、二次的な問題を防ぐために「環境の調整」と「適応の改善」が重要です。

子供の場合

  • 学ぶ環境の調整:通常学級、特別支援教育など、個々に適した環境を選ぶ。
  • 将来の仕事の準備:障害者枠や就労移行支援、作業所などの選択肢を検討する。

大人の場合

  • 知的障害者手帳の取得:福祉サービスを利用するために、心身障害者福祉センターで相談する。
  • 障害者雇用枠での就労:自分に合った働き方を選び、無理のない仕事環境を整える。

まとめ

知的障害は、生まれつきの脳の機能障害により、認知・社会・精神の各側面に困難が現れるものです。早期発見と環境調整が、生活の質を向上させる鍵となります。個々の特性を理解し、支援を受けながら、自分らしく生きる道を模索していくことが大切です。

今後も、知的障害を含むさまざまな障害について、正しい知識と理解を広めていければと思います。