今回は「疾患受容と抑うつ」について考えていきます。
特に統合失調症において、症状が安定した後に現れる「抑うつ症状」に焦点を当て、疾患を受け入れていく過程で生じる心の揺れについて丁寧に解説していきます。
統合失調症の治療は薬物療法と心理社会的療法の二本柱で行われます。
症状が安定した後でも、再燃のリスクがあるため薬物療法を続ける必要があります。
その中で、症状が落ち着いた回復期に入ると、意欲の低下や落ち込みといった「抑うつ症状」が現れることがあります。これらは単なる病気の後遺症ではなく、統合失調症を受け入れる過程で生じる「疾患受容の葛藤」に深く関わっています。

統合失調症は、急性期、急速期、回復期という流れで進行します。
回復期において、特に注意が必要なのが「抑うつ症状」です。
これは単なる気分の落ち込みではなく、疾患受容に伴う葛藤が深く関わっています。
疾患受容の過程は、アメリカの精神科医エリザベス・キューブラー・ロスが提唱した「悲嘆の5段階モデル」にも似ています。
特に重要なのは、4番目の「抑うつ」から5番目の「受容」に移行するプロセスです。
この移行期は、強い葛藤を伴うことが多く、慎重に対応する必要があります。

統合失調症を受け入れる過程では、大きく3つの葛藤が生じます。
統合失調症は再燃のリスクが常にあり、薬物治療を継続する必要があります。
副作用に悩まされることもありますし、陰性症状や認知機能障害によって、以前のように活動できないことへの苛立ちも生じるでしょう。
しかし、抑うつまでたどり着いたということは、自分自身が病気と向き合っている証でもあります。
否認や怒りを経て、今ようやく現実を直視しているのです。この事実を自分自身で認めることが、次のステップへ進む鍵となります。
統合失調症に対する偏見は、今なお存在します。
仕事や友人関係、場合によっては家族の中にも無理解があるかもしれません。
ただし、近年では多様性への理解が進み、疾患そのものに対する偏見は少しずつ減ってきています。
それでも、実際に関わる中で「嫌な思いをした」という経験から生まれる感情的な偏見は根強く残っています。このため、疾患を受け入れたうえで、自己管理を徹底し、周囲に自分の状況を理解してもらう努力が必要です。
具体的には、普段から周囲にプラスの影響を与えようと心がけ、不調の兆しがあれば早めに対策を講じることが大切です。
自分の状態をオープンにし、理解を得ることで関係性を再構築する手助けになります。
統合失調症を発症したことで、人生設計を見直さざるを得ない場面が出てきます。
健康なときには考えなかった将来への不安や、人間関係の変化にも直面するでしょう。
ここで重要なのは、過去にとらわれるのではなく、「今、自分にできること」に目を向けることです。
失ったものへの執着ではなく、これから築いていける未来に集中する。
とはいえ、これは一朝一夕にできることではありません。
時間をかけて、自分のペースで一歩ずつ進んでいくことが何よりも大事です。

最後に、「抑うつ」から「受容」へ向かうために、いくつかの方法を紹介します。
抑うつの中にいるときは未来が見えにくいものです。
それでも、少しずつでいいのです。
自分を責めるのではなく、「今できること」に目を向ける。
その積み重ねが、必ず「受容」という光へとつながっていきます。
疾患受容と抑うつは、統合失調症と向き合う過程において避けて通れないテーマです。
抑うつの状態は、自分自身が現実に向き合っている証であり、その先には必ず受容があります。
この記事が、同じ葛藤を抱える方々にとって、少しでも希望の光となれば幸いです。