はじめに
うつ病や適応障害の治療において、ストレス対策は非常に重要 です。しかし、日々の生活の中で新しいことに挑戦したり、困難な状況に直面したりすると、ストレスは避けられないものでもあります。
そこで大切になってくるのが、 「視点を選ぶ」 という考え方です。ストレスを感じる状況でも、視点を適切に変えることで 状況を冷静に見つめ直したり、前向きに行動する力を得たりすることが可能になります。今回は、この「視点を選ぶ」という方法について詳しく解説していきます。
1. 「視点を選ぶ」とは?
今回のテーマである 「視点を選ぶ」 という考え方は、 心理療法の一つである「ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)」 のなかで重要視される「心理的柔軟性」や「視点の取得」に基づいています。
簡単に言えば、 状況に応じて「どの視点で物事を見るか」を意識的に選択する ということです。
視点は大きく 2つ に分かれます。
- 当事者の視点(ミクロ的視点)
- 俯瞰の視点(マクロ的視点)
2. 2つの視点の特徴と使い方
① 当事者の視点(ミクロ的視点)
自分が 「その出来事の中にいる」 という視点です。
メリット
- 物事に熱意を持って取り組める
- 主体的に行動できる
- 感情が動きやすく、行動力につながる
デメリット
- 視野が狭くなりやすい
- 悩みやすく、考えすぎてしまう
- 問題に執着しすぎると、悪循環にはまりやすい
② 俯瞰の視点(マクロ的視点)
自分を 「外側から客観的に見る」 という視点です。
メリット
- 状況を冷静に判断できる
- 広い視野で解決策を見つけやすい
- ストレスを軽減しやすい
デメリット
- 当事者意識が薄くなり、やる気が出にくい
- 感情が動きにくく、行動を起こしづらい
- 現実逃避や回避につながることがある
3. 実際の場面ごとの視点の使い分け
次に、 実生活でのストレス場面 を例に、どのように視点を使い分ければよいかを見ていきましょう。
場面① 考え事の悪循環
状況
何か悩みごとがあり、それを解決しようとするものの、考えても考えても答えが出ず、ぐるぐると 思考のループにはまってしまう。
問題点
- 当事者の視点(ミクロ的視点) に固執しすぎると、問題を大きく捉えすぎてしまう。
- 考えがまとまらず、ストレスが増加する。
- 不眠やうつ状態が悪化するリスクがある。
解決策 : 「俯瞰の視点(マクロ的視点)」に切り替える
- 「この問題を他人が経験したとしたら、どうアドバイスするだろう?」と考える。
- 「今の自分を映画のワンシーンとして眺めてみる」など、客観的な視点を持つ。
- 「5年後の自分にとって、今の悩みはどれくらい重要か?」と考える。
➡ 視点を広げることで、冷静になり、思考の悪循環から抜け出しやすくなる。
場面② 行動の回避
状況
普段から 俯瞰の視点(マクロ的視点) を持ちすぎていて、全体像は見えているのに行動できない。「こうすればいいとわかっているけど、失敗が怖い…」など、行動を回避してしまう。
問題点
- 理論的には理解できているが、実行に移せない。
- 挑戦する意欲が湧かず、現実逃避しがちになる。
解決策 : 「当事者の視点(ミクロ的視点)」に切り替える
- 「まずは小さな行動から始める」と意識する。
- 「完璧じゃなくていい。とりあえずやってみる」ことを優先する。
- 「今この瞬間の感覚」に意識を向け、思考ではなく行動にフォーカスする。
➡ 実際に行動を起こすことで、意欲が湧き、ストレスが軽減される。
4. どちらの視点にも弱点がある
多くの人は どちらかの視点に偏りがち です。
- 当事者の視点(ミクロ的視点) に固執すると… → 考えすぎてストレスが増加 する。
- 俯瞰の視点(マクロ的視点) に固執すると… → 行動を回避しがちになり、意欲が低下 する。
解決策は「状況によって視点を使い分ける」こと
- 行き詰まる場面 → 俯瞰の視点をもつ(冷静に考える)
- 熱量が不足する場面 → 当事者の視点をもつ(行動を起こす)
状況に応じて、視点を切り替えられるようにすることが重要です。
5. 視点を切り替える力を鍛える
視点を柔軟に切り替えるためには、「観察力」 が大切です。
視点切り替えのトレーニング
- 自分の思考を観察する → 「今、自分はどの視点に立っているのか?」を意識する。
- 視点を切り替える練習をする → 意識的に「もう一方の視点」を取り入れてみる。
- 状況に応じて柔軟に視点を選択する → 場面ごとに、どの視点が適しているか判断する。
視点の切り替え力は 才能ではなく、意識的なトレーニングによって鍛えることが可能 です。
まとめ
- うつ病・適応障害の治療では、ストレス対策が重要。
- 「視点を選ぶ」ことで、ストレス状況に対処しやすくなる。
- 当事者の視点(ミクロ的視点)と俯瞰の視点(マクロ的視点)を状況によって使い分ける。
- 視点の切り替え力は、トレーニングによって鍛えることができる。
ストレスを感じたときは、「今の自分はどの視点に立っているか?」 を意識してみましょう。そして、必要に応じて 視点を切り替える習慣をつけることで、より柔軟にストレスに対応できるようになります!