はじめに
統合失調症の治療では、急性期の幻聴や妄想(陽性症状) に注目されがちですが、症状が落ち着いた後に問題となるのが 意欲の低下(陰性症状) や 認知機能障害 です。
特に 認知機能障害 は、記憶力や注意力、実行機能(計画を立てたり、物事を順序立てて行う能力)の低下 につながり、日常生活や社会復帰に影響を及ぼします。
今回は、統合失調症の認知機能障害とは何か、そしてそれに対する具体的な対策 について詳しく見ていきます。
1. 統合失調症とは?
統合失調症は 脳のドーパミン過剰などを背景とする脳の病気 です。
統合失調症の主な症状
- 陽性症状(幻聴、妄想、興奮状態)
- 陰性症状(意欲低下、感情が乏しくなる)
- 認知機能障害(記憶力や実行機能の低下)
認知機能障害とは?
- 記憶力や実行機能など、脳の「考える力」の低下
- 急性期が落ち着いた後から目立つようになり、持続する
- 抗精神病薬の効果は限定的
2. 認知機能障害が目立つ時期
統合失調症の病期ごとに、認知機能障害の現れ方が変わります。
① 急性期
- 幻聴や妄想などの陽性症状が目立つ時期
- 興奮状態や過敏さがある
- 認知機能障害はあまり目立たない
② 休息期
- 陽性症状が落ち着き、意欲低下(陰性症状)が目立つ
- この頃から認知機能障害も顕著になる
- 日常生活に支障が出やすくなる
③ 回復期
- 陰性症状が徐々に改善
- しかし、認知機能障害は基本的に残る
- 統合失調症発症前と比べると、生活のしにくさが続く
3. 代表的な認知機能障害とその影響
認知機能障害には、主に次の3つの種類があります。
① 記憶力の低下
影響
- 必要なことを覚えられず忘れてしまう
- 新しいことや仕事の手順が覚えられない
日常生活の例
- 約束を忘れる
- 料理の手順が覚えられない
- 会話の内容をすぐ忘れてしまう
② 注意力の低下
影響
- 集中力が続かず、すぐ気が散る
- 物音などの刺激で気がそれやすい
- 考えがまとまりにくい
日常生活の例
- テレビを見ていても話の流れがわからなくなる
- 本や新聞を読んでも内容が頭に入らない
- 仕事や勉強の途中で集中が途切れる
③ 実行機能の低下
影響
- 段取りを組んで物事を進めるのが苦手
- 優先順位をつけるのが難しい
- 効率的に物事をこなすのが難しい
日常生活の例
- 料理をするときに何から手をつけたらいいかわからない
- 外出の準備に時間がかかる
- 仕事でタスク管理ができず、混乱してしまう
4. 認知機能障害への対策
認知機能障害への対策は、
① 「頭を使うリハビリ」(認知矯正法)
② 「環境を整える」(認知適応法)
の2つの方法があります。
① 頭を使うリハビリ(認知矯正法)
目的
- 「脳の可塑性」(脳が変化できる力)を活用し、頭を使う活動を繰り返すことで、認知機能を改善する
方法
- 日常生活の中で頭を使う
- デイケアなどのリハビリプログラムを活用する
具体例
日常生活でのトレーニング
- 買い物リストを作り、必要なものを記憶する練習をする
- 家事をしながら段取りを考える(洗濯→掃除→料理の順番を決める)
デイケアのプログラム
- PC教室(記憶力・注意力UP)
- ウォーキング(体を動かしながら脳を活性化)
- 手工芸(手先を使うことで脳に刺激を与える)
② 環境を整える(認知適応法)
目的
- 生活環境を調整し、負荷を減らす
- 反復練習でルーティン化し、負担を軽くする
方法
- タスクを細かく分ける(1つずつやることで負担を軽減)
- 視覚的に分かるようにメモやカレンダーを活用する
具体例
服薬の環境調整
- 服薬の回数を減らし 「一包化」 する
- 「薬カレンダー」 を使い、食後すぐに服薬するルールを作る
生活習慣の工夫
- 予定はホワイトボードやカレンダーに書き、見える場所に置く
- 家事は「今日は掃除、明日は洗濯」など日ごとに分ける
5. まとめ
- 統合失調症では、急性期が過ぎると「認知機能障害」が目立つようになる
- 認知機能障害は「記憶力」「注意力」「実行機能」の低下として現れる
- 対策は「頭を使うリハビリ」と「環境を整える」ことが基本
- デイケアのプログラムを活用するのも有効な手段のひとつ
認知機能障害は、適切な対策をとることで 少しずつ改善することが可能 です。
焦らず、自分に合った方法を見つけながら取り組んでいきましょう!