家族がメンタル不調になりました【うつ病等精神疾患の家族対応、精神科医が10分でまとめ】

はじめに

家族がメンタル不調になったとき、どのように向き合い、どのように支えていけばよいのでしょうか。本記事では、その基本的な考え方や対応のポイントについて詳しく解説します。

まず、大前提として重要なのは「受け入れ」と「関わり方」です。メンタル不調とは、何らかの精神疾患に伴う精神的な不調を指します。うつ病や適応障害など比較的よく聞く疾患のほか、統合失調症や双極性障害(躁うつ病)など、生活に大きな影響を及ぼす疾患もあります。

家族がメンタル不調になった際、病名や症状によって違いはあるものの、関わり方には共通点が多くあります。そこで今回は、家族としてどのように向き合い、支えていくべきかについて詳しく説明します。

1. 家族が取るべき基本的な対応

家族がメンタル不調になったときに取るべき対応として、以下の4つが挙げられます。

  1. 穏やかに接する(High-EEを避ける)
  2. 本人の受け入れをサポートする
  3. 病気について学び、共に対策を考える
  4. 緊急時の対応と枠組みの設定

これらの対応を実践するためには、まず家族自身が「実感の受け入れ」を行うことが不可欠です。

2. 家族自身の「受け入れ」の重要性

家族がメンタル不調に直面したとき、多くの場合、驚きや戸惑い、葛藤を抱えることになります。しかし、家族自身が受け入れをしないと、以下のような問題が生じる可能性があります。

  • 本人に対してイライラや攻撃的な態度をとってしまう
  • 病気の受け入れをサポートすることが難しくなる
  • 病気に関する知識を学ぶことが億劫になり、支援が不十分になる

一方で、「受け入れる」といっても、簡単にできるものではありません。受け入れにはいくつかのハードルがあり、例えば以下のようなものが挙げられます。

  1. 病気に対する偏見
    • 社会的な偏見や誤解があり、病気そのものを認めることが難しい場合があります。
  2. 本人の変化への戸惑い
    • これまでとは異なる姿になった家族を見て、「こんなはずではなかった」と感じることがあります。
  3. 周囲の目(親戚・友人・職場など)
    • 「周りにどう思われるか」「家族の評価が下がるのではないか」といった不安が生じることがあります。

3. 受け入れの5段階プロセス

受け入れが難しいと感じる場合、心理学でよく言われる「受け入れの5段階」を参考にするとよいでしょう。

  1. 否認(Denial)
    • 「うちの家族がそんな病気なわけがない」と認めたくない段階。
  2. 怒り(Anger)
    • 「どうしてうちの家族だけが…」と怒りを感じる段階。
  3. 取引(Bargaining)
    • 「少し症状が良くなったら、薬をやめられるのでは?」と交渉しようとする段階。
  4. 抑うつ(Depression)
    • 「もう希望が持てない」と強い落ち込みを感じる段階。
  5. 受け入れ(Acceptance)
    • 「家族としてできることをやろう」と前向きに考えられる段階。

このプロセスには時間がかかります。焦らず、自分のペースで受け入れていくことが大切です。

4. 家族としての具体的な対応

① 穏やかに接する(High-EEを避ける)

「High-EE(Expressed Emotion)」とは、感情的に強く反応しすぎることを指します。例えば、次のような言動が当てはまります。

  • 否定的な発言:「いつまでそんな状態なの?」
  • 攻撃的な態度:「いい加減にしてくれ!」
  • 巻き込まれすぎる:「私まで不安でどうしたらいいかわからない…」

このような態度は、本人の状態を悪化させる原因になり得ます。意識的に「穏やかに接する」ことを心がけましょう。

② 本人の受け入れをサポートする

本人も、病気を受け入れることができなければ、治療や回復に向かうことが難しくなります。家族ができることとして、以下の点が重要です。

  • 病気の存在を否定せずに寄り添う
  • 安心して話せる環境をつくる
  • 本人の気持ちを尊重し、無理に変えようとしない

③ 病気について学び、共に対策を考える

病気を理解しないまま接すると、どう対応すべきかわからず戸惑うことが多くなります。そのため、家族も病気について学ぶことが重要です。

  • 病気の症状や特徴を理解する
  • 治療方法やサポート制度について知る
  • 本人と一緒に対処法を考える

また、本人が孤立しないよう、家族が「相談相手」になれる環境を整えることも大切です。

④ 緊急時の対応と枠組みの設定

メンタル不調が深刻になると、以下のような事態が発生することがあります。

  • 自傷行為(自分を傷つけてしまう)
  • 他害行為(他人に攻撃的になる)
  • 巻き込み(家族を精神的に追い詰める)

これらの事態に備え、次のような対応策を用意しておきましょう。

  • 落ち着かせる工夫(頓服薬、気分転換など)
  • 家族としてのルールを決める(線引きを明確にする)
  • 医療機関と連携する(必要なら緊急対応を依頼する)

特に「巻き込み」については注意が必要です。家族が本人に引っ張られすぎると、結果的に双方の状態が悪化することがあります。「家族も自分を守る」という意識を持つことが大切です。

まとめ

家族がメンタル不調になったとき、まずは「受け入れること」が大切です。そのうえで、穏やかに接し、本人の受け入れをサポートしながら、一緒に病気と向き合っていきましょう。焦らず、無理をせず、できる範囲でサポートしていくことが、長期的な回復につながります。