近年、メンタルヘルスの重要性が広く認識されるようになり、うつ病や適応障害といった精神疾患に対する理解が深まっています。そうした中で、「メンタル不調は採血で判別できるのか?」という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
本記事では、この問いに対して詳しく解説し、採血の重要性についても説明します。

メンタル不調とは、精神的な不安定さや、気分の落ち込み、意欲の低下、極度の疲労感などを伴う状態を指します。
具体的には、以下のような疾患や特性が含まれます。
これらの症状は日常生活に大きな影響を及ぼすため、適切な診断と治療が求められます。
結論から言うと、現段階では採血によってメンタル不調を直接診断することはできません。
うつ病と採血の関係
よく「うつ病は脳内のセロトニン不足が原因」と言われますが、これはあくまで脳内の話であり、採血によってセロトニンの量を測定することはできません。
現在の医療技術では、うつ病を診断できる血液マーカーは確立されていません。
そのため、採血ではうつ病の診断を直接行うことはできないのが現状です。
その他の精神疾患と採血
双極性障害(躁うつ病)や統合失調症などの精神疾患についても、現時点では血液検査による診断基準はありません。同様に、発達障害やパーソナリティ障害についても、血液検査で特定の診断を下すことはできないとされています。

では、なぜ精神科診療の現場でも採血が行われるのでしょうか?
その理由は、メンタル不調の原因が身体的な疾患に隠れている可能性があるためです。
身体的な病気によるメンタル不調(器質性精神病)
身体の病気が原因でメンタル不調が引き起こされるケースがあります。
これを「器質性精神病」と呼びます。以下のような病気が原因となる場合があります。
甲状腺ホルモンは体の代謝を調整する役割を持っていますが、このホルモンが過剰に分泌されたり、不足したりすると、精神症状が現れることがあります。
貧血は、血液中のヘモグロビンが不足する状態です。
貧血によって酸素が十分に供給されないと、
などが生じ、うつ症状と似た状態になることがあります。
特に女性に多い「鉄欠乏性貧血」は注意が必要ですが、他の原因による貧血の可能性もあるため、正確な診断が重要です。
肝臓の機能が低下すると、体内の有害物質の解毒が不十分になり、
が起こることがあります。特にアルコールの過剰摂取による肝障害は、メンタル不調の原因になり得るため、注意が必要です。
糖尿病は、血糖値の異常が続く病気です。血糖値が不安定になることで、
などが起こることがあります。糖尿病が長期間放置されると、血管や腎臓などの機能にも悪影響を及ぼすため、早期の発見と対策が重要です。
メンタル不調の背景にある身体的な要因を見極めるためには、以下の検査を採血で行うことが有効です。
| 項目 | 調べる内容 | 関連する症状 |
| 甲状腺ホルモン(TSH, FT4) | 甲状腺機能異常の有無 | 不安、イライラ、無気力、倦怠感 |
| ヘモグロビン(Hb) | 貧血の有無 | 倦怠感、集中力低下 |
| 肝機能(AST, ALT, γ-GTP) | 肝臓の機能障害 | だるさ、意識障害 |
| 血糖値(HbA1c, 空腹時血糖) | 糖尿病の可能性 | 疲労感、意欲低下 |
メンタル不調の原因を知るために採血を行うことは、非常に重要です。
現段階では、うつ病や精神疾患を直接診断することはできませんが、身体的な病気がメンタル不調の原因になっているケースは多く、その除外のために採血が有効です。
特に、以下の4つの病気(甲状腺機能異常、貧血、肝障害、糖尿病)は、採血で比較的簡単にチェックできるため、しっかり検査を受けることが大切です。
精神的な不調を感じた際には、単に「心の問題」と決めつけるのではなく、身体的な要因も視野に入れ、適切な診察と検査を受けるようにしましょう。