本記事では、「脱感作を試したところ、むしろ症状が悪化してしまった」というご質問について、精神科医の視点から詳しく解説します。脱感作は、不安症やパニック症などの治療においてよく用いられる手法ですが、適切な進め方をしないと逆効果となることがあります。その理由や、効果的な進め方のポイントを詳しくご説明します。
脱感作とは、不安を引き起こす状況に徐々に慣れることで、症状の克服を目指す治療法です。例えば、パニック症(パニック障害)や社会不安症(社交不安障害)、強迫性障害など、不安を伴う疾患に対して広く用いられます。この治療の鍵となるのは、「無理をせず、徐々に慣らしていくこと」。無理に進めてしまうと、かえって症状が悪化することもあるため、慎重に取り組む必要があります。
① パニック症(パニック障害)
電車や人混みなど、発作が起こる可能性のある場面に対して少しずつ慣らしていく方法がとられます。例えば、最初は「各駅停車で2駅だけ乗る」ことから始め、徐々に距離や時間を延ばしていきます。
② 社会不安症(社交不安障害)
人前で話すことや、人混みの中にいることに強い不安を感じる方に対して、少しずつ対人場面に慣らしていく方法がとられます。最初は少人数の場面から始め、徐々に人が多い環境に移行していきます。
③ 全般性不安障害(GAD)
特定の状況ではなく、あらゆることに不安を感じる方に対しては、比較的克服しやすい場面から少しずつ慣らしていく方法がとられます。
① 強迫性障害(OCD)
強迫行為(例:手洗いをしないと不安になる)をあえて行わずに、徐々に不安を克服する方法です。これは「曝露反応妨害法」とも呼ばれます。
② うつ病の復職支援
休職中の方が復職に向けて、まずは短時間の出勤から始めて徐々に仕事に慣らしていく方法がとられます。
③ 不登校の生徒の登校訓練
長期間学校を休んでいた生徒が、いきなり通常の授業に戻るのではなく、保健室登校や短時間の登校から始めて、徐々に学校生活に適応していく方法がとられます。

不安を感じる場面を避けること(回避行動)は、一時的には楽に感じるかもしれません。しかし、回避を続けると次第に行動範囲が狭まり、似た状況でも強い不安を感じるようになり、結果的に症状が悪化することがあります。例えば、「電車に乗ると不安だから避ける」と、次第にバスやタクシーも避けるようになり、最終的には外出自体が難しくなることもあります。したがって、回避するのではなく、少しずつ慣らしていくことが重要になります。
脱感作は適切に行えば効果的ですが、無理をしすぎると逆効果になることがあります。
【例:電車での脱感作を試みた場合】
このように、無理に負荷をかけすぎると、症状が逆戻りする可能性があります。

① 小さなステップから始める
「こんなに軽くて大丈夫?」と思うくらいのレベルからスタートし、焦らず徐々に進めていくことが大切です。
② 成功してもすぐに負荷を上げすぎない
「大丈夫だったから次は一気に難易度を上げよう!」とすると、失敗しやすくなります。
③ 頓服薬を用意する
医師の処方を受けている場合は、必要に応じて頓服薬を持っておくと安心です。
④ 体調が悪いときは無理をしない
疲労やストレスが強いときは発作のリスクが高まるため、その日は無理をせず、落ち着いてから再開することが大切です。
以下のような場合は、脱感作を一時的に控えた方がよいでしょう。
今回は、「脱感作をしたらむしろ悪化した」というご質問について詳しく解説しました。
脱感作は、不安を克服するために有効な手段ですが、進め方を誤ると逆効果になることがあります。
これらのポイントを意識しながら、適切な方法で脱感作を進めていくことが重要です。
無理をせず、自分のペースで進めていきましょう。