心理検査で知能指数(IQ)が心配です

WAIS検査の理解と活用方法

はじめに

発達障害の診断や自己理解のために心理検査を受けることを検討している方の中には、「知能指数(IQ)が出るのが不安」と感じる方も多いかもしれません。心理検査は客観的なデータを得るための有用な手段ですが、一方で数値が一人歩きしてしまうこともあります。

本記事では、発達障害の診断に関連する「WAIS検査」に焦点を当て、その特徴や知能指数(IQ)の意味、そして数値化されることのメリット・デメリットについて詳しく解説します。

知能指数(IQ)は、あくまで検査結果の一つであり、それがすべてではありません。適切に理解し、活用することで、より良い自己理解や適切なサポートにつなげることができます。

1. 発達障害とは?心理検査を行う目的

(1) 発達障害とは?

発達障害は生まれつきの脳の特性によるもので、以下の2つのタイプが代表的です。

  • ADHD(注意欠如・多動症):不注意や衝動性、多動が目立つ
  • ASD(自閉スペクトラム症):対人関係の苦手さや強いこだわりが特徴

発達障害は幼少期に診断されることが多いですが、大人になってから仕事や人間関係での困難が続き、心理検査を受けることで初めて診断されるケースもあります。

(2) 心理検査を行う目的

発達障害の診断には、問診(医師との対話)が基本となりますが、客観的なデータを得るために心理検査を実施することがあります。その代表的なものが「WAIS検査」です。

2. WAIS検査とは?

(1) WAIS検査の概要

WAIS(Wechsler Adult Intelligence Scale)は、成人向けの知能検査で、約2時間かけてさまざまな問題を解きます。この検査では、「得意・不得意のばらつき」や「認知の特徴」を数値化し、診断や支援の手がかりとすることができます。

(2) WAIS検査でわかること

この検査では、以下のような数値が出ます。

  1. 知能指数(IQ)
    • 全体的な知的能力の目安となる数値(平均は100)
  2. 4つの群指数(認知の特徴)
    • 言語理解(VCI):言葉の理解力、語彙力
    • 知覚推理(PRI):視覚的な情報処理、空間認識能力
    • ワーキングメモリー(WMI):短期記憶、情報の保持と操作能力
    • 処理速度(PSI):作業を素早く正確に行う能力

これらの数値をもとに、「得意なこと・苦手なことの傾向」や「発達障害の可能性」を分析します。

3. 知能指数(IQ)の数値化のメリットとデメリット

(1) 知能指数を数値化するメリット

IQや群指数を数値化することには、以下のような利点があります。

① 非常にわかりやすい

知能指数は数値として示されるため、直感的に理解しやすいです。どの分野が得意で、どの分野が苦手なのかが明確になります。

② 対策を立てやすい

得意・不得意のばらつきが分かるため、どのような工夫や支援が必要なのかが分かりやすくなります。例えば、ワーキングメモリーが低い場合、「メモを取る習慣をつける」といった具体的な対策が考えられます。

③ 伝達しやすい

診断結果を他者(医師、カウンセラー、職場など)と共有しやすくなります。特に職場や学校で合理的配慮を求める際に、客観的なデータとして活用できます。

(2) 知能指数を数値化するデメリット

一方で、知能指数を数値化することには以下のようなデメリットもあります。

① 数字が目立ちすぎる

知能指数(IQ)は「その人の能力のすべて」を示すものではありません。しかし、数値が一人歩きしてしまい、「この数値だからこうだ」と決めつけられることがあります。

② レッテルを貼られる可能性

「IQが低いからダメ」「IQが高いから問題ない」といった誤った認識につながることがあります。また、本人が過剰に気にしてしまい、「この数値だから自分はこういう人間だ」と思い込んでしまうケースもあります。

③ 知能指数は変動する

知能指数は固定されたものではなく、環境や努力によって変化することがあります。特に、ストレスや体調によって一時的に低く出ることもあるため、結果を過剰に気にしすぎないことが重要です。

4. 知能指数(IQ)との向き合い方

(1) IQの限界を知る

  • IQはあくまで「検査の結果としての数値」にすぎない
  • 全体的な傾向は分かるが、細かい個性や能力をすべて反映するわけではない

知能指数は参考になる指標の一つですが、それだけでその人の価値や可能性が決まるわけではありません。数値に囚われすぎず、あくまで「自己理解の一助」として活用することが大切です。

(2) WAIS検査を受けるべきか?

心理検査を受けるかどうかは、以下のポイントを考慮して判断すると良いでしょう。

  • 発達障害の診断を希望している
  • 自己理解を深めたい
  • 今後の対策を考えるための客観的なデータが欲しい

一方で、以下のような場合は慎重に検討したほうが良いでしょう。

  • 数値に過度に囚われてしまいそう
  • 「IQが低かったらどうしよう」と強い不安を感じている

まとめ

  • 発達障害の診断では、問診のほかに「WAIS検査」を行うことが多い
  • WAIS検査では「知能指数(IQ)」や「認知の特徴」が数値化される
  • 数値化にはメリットもデメリットもあり、特にIQに過度に囚われないことが重要
  • IQは「その人全体を表すものではない」と理解し、自己理解や対策に役立てることが大切

WAIS検査を受けるかどうかは、メリット・デメリットをよく理解した上で慎重に判断しましょう。そして、結果を過度に気にするのではなく、今後の生活やサポートにつなげるための材料として活用することが大切です。