【こころの診療所】アセナピン(シクレスト)

アセナピン(シクレスト):統合失調症治療薬の特性と使用方法

はじめに

本記事では、心療内科・精神科で使用される抗精神病薬「アセナピン(シクレスト)」について詳しく解説します。アセナピンは統合失調症の治療に用いられる薬の一つであり、特に糖尿病患者でも使用が可能な「MARTA」というタイプに分類されます。以下で、その特徴や使用方法について詳しく見ていきましょう。

アセナピン(シクレスト)とは?

アセナピン(シクレスト)は統合失調症の治療薬であり、MARTA(多元受容体作用抗精神病薬)に分類されます。MARTAは、ドーパミンやセロトニンをはじめとするさまざまな脳内物質のバランスを調整する薬です。アセナピンは特に気分の波や感情の不安定さに対して有効であり、糖尿病患者にも使用できる点が特徴です。

この薬は「舌下錠」と呼ばれ、舌の下で溶かす特殊な服用方法を取ります。服用の際には、しびれ感や不快感が生じる場合があるため注意が必要です。

統合失調症とは

統合失調症は、脳内のドーパミン作用が過剰となることで、混乱、幻聴、妄想といった症状が引き起こされる精神疾患です。治療には、ドーパミンの作用を抑える「抗精神病薬」の継続使用が基本となります。症状の改善だけでなく、再発や再燃の予防のためにも服薬の継続が重要です。

抗精神病薬の種類

抗精神病薬には、以下の3つのタイプがあります。

  1. ドーパミン系に特化した薬:主に幻覚や妄想に効果がありますが、パーキンソン症状(歩行困難やろれつの回らなさ)が副作用として現れることがあります。
  2. SDA(セロトニン・ドーパミン拮抗薬):ドーパミンとセロトニンのバランスを整え、効果や副作用が中間的なタイプです。プロラクチンというホルモンが増加する可能性があります。
  3. MARTA(多元受容体作用抗精神病薬):感情や気分の安定に強い効果が期待され、パーキンソン症状は少ないものの、食欲増進や体重増加の副作用が目立ちます。

アセナピン(シクレスト)はこの「MARTA」に属し、特に糖尿病患者や体重増加が気になる方に適しています。

アセナピン(シクレスト)の特徴

長所

  • 感情の安定に効果が期待できる
  • 糖尿病患者でも使用可能
  • 体重増加のリスクが比較的低い
  • 副作用が全体的に少ない

短所

  • 舌下錠のため、服用方法に不快感が伴う可能性がある
  • 1日2回の服用が必要
  • 効果に個人差がある

アセナピン(シクレスト)の副作用

副作用は比較的少ないものの、以下の症状が現れる場合があります。

  • 眠気や倦怠感
  • 舌のしびれ感(服用後に数十分続く場合がある)
  • パーキンソン症状(頻度は低め)
  • 血糖値や体重の増加(他のMARTA系薬剤と比べると少なめ)

アセナピン(シクレスト)の服用方法

アセナピンは「舌下錠」であり、服用時には次の点に注意が必要です。

  • 舌の下で溶かし、飲み込まずに10分間飲食を控える
  • 他の薬を服用する場合は、アセナピンを最後に服用する
  • 服用中は舌のしびれ感が起こることがあるが、時間とともに改善します

アセナピン(シクレスト)を検討する場面

アセナピンが適しているケースとして、以下の状況が挙げられます。

  • 感情や気分の不安定さが目立つ場合
  • 糖尿病を患っている方
  • 体重増加が気になる方
  • 他の薬をあまり使用しておらず、単剤での服用が望ましい場合

アセナピン(シクレスト)の使用量と調整方法

アセナピンの初期使用量は、1回5mgを1日2回、または1回5mgを1日1回から始めることが一般的です。効果が不十分であれば、最大20mg(10mg×2回)まで増量が可能です。副作用が強い場合や効果が見られない場合には、薬の変更や減量が検討されます。

安定後は、再燃防止のために維持量を継続することが推奨されます。1日2回の服用が基本ですが、症状が安定している場合には1日1回への移行が検討されることもあります。

まとめ

アセナピン(シクレスト)は、統合失調症治療薬として、特に気分の安定や感情の不安定に効果が期待できる「MARTA」系抗精神病薬です。糖尿病患者でも使用でき、体重増加のリスクが比較的低いことが特徴です。

一方、舌下錠という服用方法に伴う不快感や、1日2回の服用が必要な点には注意が必要です。医師と相談しながら、ご自身の症状や生活習慣に適した治療方法を選択していくことが大切です。