はじめに
心療内科・精神科の疾患の一つとして知られる「分離不安症」について詳しく解説していきます。分離不安症とは、家族や愛着のある対象から離れる際に、年齢不相応かつ過剰な不安や恐怖を感じる疾患です。この症状は特に幼少期や10代の若者に多く見られる傾向がありますが、成人になっても症状が持続する場合も少なくありません。本記事では、分離不安症の症状、診断基準、鑑別疾患、治療法について詳しく説明していきます。
① 分離不安症を疑うべきケース
分離不安症が疑われるケースとして、以下のような例が挙げられます。
- 幼少期から登校を嫌がることが多く、家族から離れることに強い不安を感じていた。
- 成長してもその不安が続き、一人暮らしができない。
- 恋人や配偶者との別れに対して極度の不安や混乱を伴う。
これらの特徴がある場合、分離不安症の可能性があるため、専門医の診断を受けることが推奨されます。
② 分離不安症とは?
分離不安症とは、家族や愛着対象との別れに関する発達的に不適切で過剰な恐怖や不安を特徴とする疾患です。
通常、幼少期において親と離れる際に不安を感じることは自然な反応ですが、成長してもこの不安が強く続く場合や、その影響が日常生活に及ぶ場合は、分離不安症と診断される可能性があります。
③ 分離不安症の症状と診断基準
分離不安症の診断は、DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)に基づき行われます。
■診断基準A:分離に対する過剰な恐怖や不安(以下のうち3つ以上)
- 分離を予想または経験する際に、繰り返し強い苦痛を感じる。
- 愛着対象を失うこと(病気・事故など)への持続的かつ過剰な心配。
- 自分が事故や誘拐に遭うことで愛着対象と分離してしまうのではないかという強い恐怖。
- 家や愛着対象から離れることへの強い拒否反応がある。
- 一人でいることに対する過剰な恐怖や抵抗がある。
- 家を離れて寝ることができない、強い拒否反応を示す。
- 分離に関連した悪夢を繰り返し見る。
- 分離を予想・経験する際に、頭痛や胃痛などの身体症状が繰り返し出る。
■診断基準B:症状の持続期間
- 子ども・青年の場合は4週間以上
- 成人の場合は6か月以上
■診断基準C・D:社会生活への影響と他の疾患との鑑別
- 症状により学業・仕事・日常生活に支障をきたしている。
- 他の精神疾患(例えば自閉スペクトラム症、社交不安症など)では説明できないこと。
④ 分離不安症の鑑別疾患と併存症
分離不安症は、他の精神疾患と似た症状を持つことがあり、鑑別診断が必要です。特に以下の疾患と併存または誤診されることがあります。
- 他の不安障害(社交不安症、全般性不安障害など)
- 境界性パーソナリティ障害(見捨てられ不安が主な特徴)
- 依存性パーソナリティ障害(特定の人物に対して強く依存する傾向)
特に成人の分離不安症では、境界性パーソナリティ障害との合併が多いため、診断時に慎重な判断が求められます。
⑤ 分離不安症の治療法
分離不安症の治療は、薬物療法と精神療法(心理療法)の2つが中心になります。
1. 薬物療法
- 抗うつ薬(SSRI):不安症の治療に用いられるが、個人差がある。
- 抗不安薬(タンドスピロンなど):依存のリスクが少なく、不安を軽減する効果がある。
- 漢方薬(安全性を重視する場合に選択されることがある)
2. 精神療法(心理療法)
- 認知行動療法(CBT)
- 不安を引き起こす「考え方のクセ」を見直す(認知再構成)
- 段階的な暴露療法(少しずつ分離に慣れるようにする)
- パーソナリティ障害の治療(合併がある場合)
- 境界性パーソナリティ障害などが背景にある場合、パーソナリティ障害の治療を優先することが多い。
まとめ
本記事では「分離不安症」について詳しく解説しました。
- 分離不安症とは、家族や愛着対象との分離に対して、年齢不相応で過剰な不安や恐怖を感じる疾患。
- 幼少期に多く見られるが、成人にも持続する場合がある。
- 境界性パーソナリティ障害や依存性パーソナリティ障害と合併することが多いため、注意が必要。
- 治療は、抗うつ薬(SSRI)や抗不安薬を使用しつつ、認知行動療法で不安に対する考え方や行動を修正する。
分離不安症は適切な治療を受けることで、症状の改善が可能です。自分や身近な人がこの症状で悩んでいる場合は、専門医に相談することをおすすめします。