知的障害における日本の状況と問題行動の原因/必要とされる支援について

知的障害・軽度の場合

軽度の知的障害はIQ50~55から70程度で、幼児期の感覚運動の遅れはあまり見られず、
小学校に入る頃までには対人的な社会的行動ができるようになります。
しかし、小学校に入ると読み書きや算数などの学業で、通常の子供よりも遅れが見られます。
この遅れは学習障害の子どもとは異なり、知能全般にわたります。
小学校から中学校、高校へと進級するときや、就職や結婚、子育てなど
人生の新たな試みに際しては支援が必要になります。

知的障害・中度の場合

中度の知的障害はIQ35~40から50~55程度で、
幼児期から身体全体を使う運動や微細な運動、コミュニケーション、
日常生活行動に発達的な遅れが見られます。
友達や大人との社会的な付き合いはある程度できますが、対人的な問題が残ることもあります。
学業や仕事の技能も学ぶことができ、自分がよく知っている街では一人で
簡単な買い物ができる人が多いです。
学校を卒業すると、通所施設や支援を受けて会社で働くことができます。
生活場面では支援者が必要ですが、適切な支援があれば主体的に生活することができます。

知的障害・重度の場合

重度の知的障害はIQ20~25から35~40程度で、日常生活での適応行動でも支援が必要となります。
身体全体を使う行動、微細な運動、コミュニケーション、日常生活行動の遅れが
3歳以前にわかることが多いです。
学校では日常生活を行うための指導が中心となり、簡単な単語を読み、
街の中での標識などが分かるようになります。
友達や大人との社会的な付き合いはできますが、対人的な困難で支援が必要な場合もあります。
仕事は通所施設が多いですが、適切な支援を受けて企業で働くことも可能です。
生活場面での見守りや支援が必要ですが、適切な支援があれば地域社会で
主体的な生活を送る
ことができます。

知的障害・最重度の場合

最重度の知的障害はIQ20~25以下で、身体全体を使う運動、微細な運動、コミュニケーション、
日常生活行動に発達的な遅れがはっきりと見られます。
ほとんどの場合、3歳以前に相談機関などで相談を受け、幼児期から成人に至るまで
集中した支援が必要となります。
その人らしい生活を行うためには、介護者との個人的な関係を持てる環境が必要です。
適切な支援があれば、簡単な作業を行うことも可能です。
生活場面では集中的な支援が必要です。
知的障害の軽度・中度・重度・最重度という分類は、一般的な臨床像を伝えるのには便利ですが、
どのような支援が必要かを考える視点から見ると、IQを中心とした分類とは異なる支援内容や
方法を検討する必要があります。

知的障害を行動から理解する方法

知的障害があり、自分の感情や意見を言葉で表現できない比較的重度の障害の人々に対しては、
環境と対応するときの気持ちや感情、考えなどを行動を通じて確認します。
その後、人的および物理的な環境を変更し、望ましい行動を形成したり、行動障害を解消します。
この方法を最初に提唱したスキナー (B.F. Skinner, 1904-1990) は、人が自分の欲求を満たすために
環境に自発的に働きかけることを「オペラント条件付け」と呼び、
環境を操作することで特定の行動を維持したり、新しい行動を形成したり、
望ましくない行動を止めさせる行動分析の方法を開発しました。

環境を操作することで特定の行動を維持したり、新しい行動を形成したり、
望ましくない行動を止めさせる行動分析の方法を開発しました。

知的障害の表現方法

知的障害児者の中には、言葉を使えない人や語彙に制約がある人が多くいます。
言葉があっても、意味理解が不十分であったり、具体的表現と比喩的表現の区別ができなかったり、
発達障害者特有の知覚の仕方が一般と異なる場合やエコラリアが見られることがあります。
したがって、直接的な言語理解には多くの制約があることを理解しておく必要があります。
言葉で自分の意志を表現できない場合には、非言語的コミュニケーションによる表現となるため、
適切な支援がない場合にはこの形態が不適応行動や行動障害となることが多いです。
その人特有の表現方法が必ず存在するという理解のもと、どのような状況でどのような表現をするのかをアセスメントや観察を通じて把握し、その人なりの表現方法を獲得することが重要です。

知的障害児者の不適応行動

知的障害児者の場合、環境に適応するための意思形成に制約があり、
理解できないまま行動に移ることが多く、これが不適応行動となって表出します。
例えば、美味しいご飯が食べたいという欲求があるとき、働いて賃金を得たり、
レストランで順番を待ったり、食べたいものを選んだりすることが適応行動です。
しかし、空腹を我慢できずに隣のテーブルの他の人の食べ物を取ってしまったり、
嬉しさのあまり大声を上げることは不適応行動になります。
適応行動が理解できている場合でも、花壇の水撒きを雨天時にも行ったり、
ケースバイケースでの応用がきかないこともあります。
知的障害は個人の知的機能だけの問題ではなく地域社会との環境や相互作用
文化的・風土的要因を重視して考える必要があります。
それぞれが適切な環境設定と支援を受けることで、知的機能や適応行動が改善されるという
考え方が大切です。

知的障害の意思決定支援

人は日常生活において、起床から就寝までの間に認知・判断・行動を繰り返しています。
ある説によれば、人は1日に7000~9000の意思決定を行っていると言われています。
これを踏まえると、意思決定は習慣の一つとも考えられます。
人のすべての行動の根底には必ず意思決定があり、その意思によって主体的な生活が成り立ちます。
何気なく過ごしている日常ですが、知的障害のある人は支援を受けなければ
生活が困難な状況
にあります。
他者を支援する仕事においては、さまざまな活動結果を出すことが大切ですが、
それ以上に、その結果に至るまでのプロセスが支援を受ける人の主体的活動としての
結果であるか
が重要です。

知的障害のなくてはならない重要なポイント

重度の知的障害のある人は、個人の意思が周囲に伝わりにくいことがありますが、
必ず個人の意思は存在します。
支援者側の判断だけで支援を進めるのではなく、本人の意思決定を支援することが求められます。
また、本人が示す行動の裏にある想いや願いをくみ取り、実際の体験や経験を通じて
本人の価値観と考えを広げ、主体性を育む支援が必要です。
これらは、重症心身障害を含む知的障害のある人の生活を支える上で欠かせない重要なポイントです。

これらは、重症心身障害を含む知的障害のある人の生活を支える上で欠かせない重要なポイントです。

知的障害のある人の暮らしのニーズ

知的障害のある人の暮らしのニーズは、住まいの確保日中活動や就労余暇経済基盤
人間関係権利擁護など広範囲にわたります。
これらのニーズを一体的・総合的に捉えることが重要です。

軽度認知障害の軽度の特徴と大事なこと

軽度の認知障害のある人は、知的機能と適応能力に遅れがあるものの、食事・洗面・着衣・排泄などの身の回りのことは自分で行うことができます。
日常生活に大きな支障はなく、学校での授業などで気づかれることが多いです。
勉強についていけなかったり、友達とのコミュニケーションや仲間関係がうまくいかないことから、
周囲から否定的な評価を受けることがあります。
これにより、年齢が進むにつれて困難な場面に出会うことが増え、
家庭でストレスを爆発させてしまうケースもあります。
しかし、本人の認知特性に合った学習機会を提供することで、
言葉や計算の能力を伸ばすことが可能です。
時間や空間などの抽象的な概念は、本人の経験に結びつけて説明し、
具体的な経験を積む機会を増やしましょう。
合理的配慮によって、学習や社会へ自信を持って参加できるようにする仕組みが重要です。
スマホのアプリを活用するなどして苦手な領域を補い、自己肯定感を低下させないよう
することが大切です。

軽度知的障害の困りごと対処法

軽度の知的障害のある人は、抽象的な概念の理解が難しいことがあります。
「もっとがんばって」と言われても、「もっと」がどれくらいなのか、
「がんばる」とは具体的に何をすればいいのかがイメージしづらい場合があります。
そこで、具体的に伝えるようにすると取り組みやすくなります。
また、一度にすべてのことを伝えると理解が追いつかないことがあります。
そのような場合は、手順を一つひとつスモールステップに分解して説明します。
各項目で理解できたか確認し、躓く箇所があれば繰り返し説明したり、説明の仕方を工夫します。
記憶や理解をサポートできるアプリなどのツールを活用することも、軽度の知的障害のある人の
困りごとを軽減する方法の一つです。
一度に手順を理解することが難しい場合はTODOリストを使う、
忘れ物が多い場合はリマインダーアプリを使う、
時間管理が難しい人の場合はアラームアプリを使うなど、
困りごとに合わせたツールを活用しましょう。

知的障害の診断方法

知的障害の診断は専門機関で行われ、問診や知能検査を通して最終的に診断が下されます。
知能検査では「田中ビネー知能検査Ⅴ」「新版K式発達検査」「ウェクスラー式知能検査」
などの方法を用いることが多く、対象の年齢などによって使い分けられます。

田中ビネー知能検査Ⅴ:2歳から成人までを検査でき、
子どもが興味を持ちやすい検査道具を用いることが特徴です。
新版K式発達検査:姿勢・運動、認知・適応、言語・社会の3領域について評価を行います。
年齢相応の行動や反応と検査を受ける子どもの行動や反応を比較して検査します。
ウェクスラー式知能検査:全体的なIQを評価するだけでなく、個人の強みや苦手も含めて
総合的に判断する検査方法です。
年齢によって以下の3つの種類に分かれています。
WPPSI:幼児(3歳10ヶ月~7歳1ヶ月)
WISC:学生児(5歳~16歳11ヶ月)
WAIS:成人(16歳~)

軽度認知障害、「軽度」の人の特徴

軽度認知障害とは、知的障害の基準のうち「軽度」に該当する人のことを指します。
「軽度知的障害」という診断名があるわけではなく、知的障害の中での分類の
一つとして
使われています。
日常会話や動作をこなせるため、周囲から気付かれにくい傾向にありますが、
「臨機応変な対応が難しい」「複数でのコミュニケーションが苦手」など、
さまざまな面で困難を感じる場合もあります。
自閉症スペクトラムとの併存や、うつ病や不安障害などの二次障害につながることもあります。
日常生活では、おつりの計算などの金銭管理が苦手なことが特徴的です。
軽度知的障害と似た障害として、学習障害(LD)があります。

知的障害と不安障害

知的障害のある人には不安が頻繁に見られ、機能を損なうほど重度の場合には
不安障害の診断がつきます。
エマーソンは知的障害のある子どもの8.7%に不安障害があることを明らかにしています。
不安障害は遺伝的な脆弱性を伴い、単純恐怖症、広場恐怖症、社会不安、強迫性障害などが
発症する可能性があります。
特に青年期や成人期には「心的外傷後ストレス障害」が重要です。
知的障害のある人の多くは言葉による虐待、無価値化、身体的暴行などを繰り返し経験し、
その結果、視床下部-下垂体系を介した覚醒レベルの上昇が起こり、
睡眠と覚醒の障害を伴うことがあります。

知的障害の高齢化の話

知的障害者の高齢化問題は1970年代から議論が始まりました。
かつては知的障害者の平均寿命は短く老化も早いとされていました。
しかし近年では、適切なケアがあれば以前より健康で長く生活することが可能です。
「平成28年全国知的障害児・者施設・事業実態調査報告」によると、
日本知的障害者福祉協会会員事業所の障害者支援施設の施設入所支援利用者のうち、
60歳以上は約12%65歳以上は約7%となっています。
2016年の「生活のしづらさなどに関する調査(厚生労働省)」では、
65歳以上の人が15.5%とされていますが、日本全体の平均よりも低い水準です。
平均寿命は伸びてきたものの、健康で長く生活するための支援が依然として必要です。

知的障害は発達障害に含まれる

発達障害という概念は法律の改正に伴い、その範囲が広がっています。
具体的には、知的障害、脳性麻痺、てんかん、自閉症、失語症などが含まれており、
感覚障害や慢性疾患も含まれるようになりました。
このようにして、発達障害は知的障害と同様の支援が必要とされ、中途障害とは質が異なり、
より多くの支援が必要な一生涯の状態と理解されるようになりました。
日本では1970年代に「発達障害」という用語が導入され、「精神薄弱」に代わる
適正用語の議論が始まりました。
後に「精神薄弱」は診断名としては「精神遅滞」、障害名としては「知的発達障害
(略して知的障害)」
が用いられるようになりました。

知的障害の日本の状況

知的障害について法律に規定はありませんが、知的障害児(者)基礎調査では、
知的機能の障害が発達期(概ね18歳まで)に現れ、日常生活に支障が生じているため、
何らかの特別な援助を必要とする状態にあるもの
」と定義されています。
また、知的障害を軽度(IQ70~51)、中度(IQ50~36)、重度(IQ35~21)、最重度(IQ20以下)に
分けることもあります。
2016年12月の「生活のしづらさなどに関する調査」によれば、療育手帳を所持する
在宅の知的障害児・者は962,000人と推計されています。
障害の程度別では、重度が373,000人(38.8%)、その他が555,000人(57.7%)となっています。