発達障害ではうつ病になりやすい?【二次障害について】

 発達障害は、生まれつきの脳機能の偏りによる障害であり、代表的なものとして自閉症スペクトラム障害(ASD)と注意欠如多動症(ADHD)が挙げられます。これらは幼少期に発見されることが多いですが、成人後に診断されるケースもあります。

 ASDは、社会性の困難さや強いこだわりを特徴とし、場の空気を読むのが苦手な傾向があります。一方、ADHDは不注意・多動・衝動性が主な特徴であり、ミスや忘れ物が多いといった特性が見られます。

 発達障害は基本的に薬で完全に治るものではなく、ストレスにより二次障害(合併症)が引き起こされることがあります。特に、発達障害を持つ人はうつ病を発症しやすいとされています。


発達障害の人がうつ病になりやすい理由

 発達障害の人がうつ病を発症する確率は20~50%ともいわれています。これは一般の人と比較して高い割合であり、発達障害の特性がストレスを引き起こしやすいことが影響しています。

1.環境への適応が難しい

 発達障害の特性により、周囲の環境に適応しにくいことが多く、それがストレスの原因になります。例えば、ASDの人は社会的な暗黙のルールを理解しにくいため、職場や学校で孤立しやすくなります。また、ADHDの人はミスを多くしてしまうと、自己肯定感が低下しやすいです。
 この結果、自責の念が強まり、「自分はダメな人間だ」と感じることで、うつ病を引き起こすことがあります。逆に、周囲のせいにしてしまうことで人間関係が悪化し、さらにストレスが増すこともあります。

2.過剰適応によるストレスの蓄積

 一部の発達障害の人は、適応しようとするあまり、無理をしすぎてしまうことがあります。これは過剰適応と呼ばれます。
 例えば、周囲に合わせるために自分を押し殺し続けると、徐々に心の負担が増え、疲労や自己否定感、空虚感を抱きやすくなります。長期間にわたると、うつ病の引き金になることがあります。

3.ストレスへの敏感さ

 ASDの人は嫌なことを繰り返し思い出してしまう反芻思考の傾向があり、ストレスを長期間引きずることがあります。また、ADHDの人は衝動的に行動することが多く、その結果として失敗が重なり、自己肯定感が低下しやすいです。
 さらに、感覚過敏を持つ人は、日常生活のささいな刺激(音や光、人の視線など)に対して強いストレスを感じやすく、それが積み重なることで心の負担が増大します。


発達障害が背景にあるうつ病

 うつ病がなかなか治らない場合、その背景に発達障害がある可能性があります。特に、難治性うつ病や反復性うつ病の人は、発達障害を持っている可能性があります。

 発達障害を持つ人のうつ病は、単純な環境要因だけでなく、生まれ持った特性が影響しているため、通常のうつ病の治療が効果を発揮しにくいことがあります。そのため、うつ病治療と並行して、発達障害の特性に応じた対応を行うことが重要です。


うつ病以外の合併症

発達障害の人は、うつ病以外にもさまざまな精神的不調を抱えることがあります。

 • 社交不安障害(人と関わることが極度に怖くなる)
 • パーソナリティ障害(自己の認識や対人関係に困難を抱える)
 • 愛着障害(人との信頼関係を築くのが難しい)
 • 攻撃性が強まる問題(ストレスが外部に向かうケース)

 このように、複数の精神的不調が合併することを重ね着症候群と呼びます。精神的不調が増えるほど、治療が複雑になり、対策が難しくなるため、できるだけ早い段階で発達障害を診断し、適切な対処をすることが大切です。


発達障害とうつ病の対策

1.早期診断と予防

 発達障害の特性を理解し、ストレスを軽減する環境を整えることが最も重要です。早めに診断を受けることで、適切な対応策を講じやすくなり、二次障害を予防しやすくなります。

2.治療の優先順位をつける

 すでにうつ病などの精神的不調を合併している場合、まずは治療が奏功しやすいものから対策していきます。
 例えば、急性期のうつ病がある場合は、まずはうつ病の治療を優先します。その後、発達障害への対策を進めていきます。また、重ね着症候群の場合は、薬物療法が有効な症状から治療を始め、その後、発達障害やパーソナリティ面の対策を進めていきます。

3.環境調整とカウンセリング

発達障害を持つ人が生きやすい環境を整えることが重要です。例えば、

 • 職場や学校での合理的配慮(ミスしにくい仕組みの導入、柔軟な働き方の調整)
 • ストレスマネジメント(カウンセリングや認知行動療法の活用)
 • 自分の特性を理解する(自己分析を行い、得意・不得意を明確にする)

これらを意識することで、発達障害に伴う二次障害を防ぐことができます。


まとめ

• 発達障害の人は、環境適応の難しさやストレスへの敏感さから、2~5割の確率でうつ病を合併するとされています。
• 不適応や過剰適応がストレスの原因となり、うつ病だけでなく、さまざまな精神的不調を引き起こすことがあります。
• 早期診断と環境調整を行い、二次障害を予防することが最も重要です。

発達障害への理解を深めることで、本人だけでなく、周囲の人々も適切なサポートができるようになります。