ASD診断のきっかけ5つ

はじめに

発達障害の一つであるASD(自閉症スペクトラム障害)は、できるだけ早期に発見し診断を受けることが望ましいとされています。ASDの診断が早ければ早いほど、適切な対策を講じることができ、特に二次障害の予防につながる可能性が高まります。

ASDは、対人関係における困難(社会性の障害)と強いこだわりを特徴とする発達障害です。幼少期に診断されるケースが多いものの、近年では成人になってから診断を受けるケースも増えています。ASDに対する特効薬は存在しませんが、適切な支援や環境調整により、特性に適応した生活を送ることが可能です。

本記事では、ASDの診断に至る主なきっかけについて、具体的な事例とともにご紹介します。

1. 集団生活での不適応

1. 集団生活での不適応

ASDの診断につながる最も一般的なきっかけの一つは、幼少期の集団生活における不適応です。

(1)明らかな孤立

ASDの特性として、対人関係の構築が苦手な場合があります。幼稚園や保育園、小学校などで友達と上手く関わることができず、一人で過ごす時間が多い子どもは、周囲から「他の子と違う」と気づかれることがあります。こうした孤立が目立つ場合、保護者や教師が発達相談を行い、専門機関での診断につながることがあります。

(2)トラブルの頻発

ASDの子どもは、コミュニケーションの難しさから、意図せずに周囲とトラブルを起こすことがあります。特に「積極奇異型」と呼ばれるタイプの人は、自分なりのルールで関わろうとするため、相手の気持ちを考えずに行動しがちです。その結果、友人との摩擦が生じ、教師や保護者の関心を引き、診断に至るケースが少なくありません。

2. 不登校

学校に適応できず、不登校になることが診断のきっかけになる場合もあります。

(1)トラブルによる無力感

対人トラブルを繰り返すうちに、次第に自信を失い、学校へ行くこと自体が負担となることがあります。この場合、本人は自分の特性に気づかないまま「学校が嫌い」「行きたくない」と感じることが多く、長期の不登校を経て、専門機関で診断を受けることになります。

(2)いじめ被害

ASDの子どもは、周囲とのコミュニケーションのずれから、いじめの標的になりやすいことがあります。特に「受動型」と呼ばれるタイプの人は、相手に合わせることが得意ではないため、自分の意見を主張できず、いじめられやすい傾向があります。この場合、学校生活の困難さから診断に至るケースが見られます。

(3)過剰適応による疲弊

自分の特性を自覚せず、無理をして周囲に合わせようとすることを「過剰適応」と呼びます。特に女性に多い傾向があり、細かな不適応を抱えつつも頑張り続けることで、やがて心身ともに疲弊し、不登校につながることがあります。この段階でうつ病を発症するケースもあり、診断と適切な支援が求められます。

3. 仕事での不適応

3. 仕事での不適応

大人になってからASDと診断される場合、職場での適応困難がきっかけとなることが少なくありません。

(1)組織内でのトラブル

学生時代には周囲の理解が得られ、何とか適応できていたものの、社会に出て職場でのルールや暗黙の了解が求められる場面で問題が表面化することがあります。例えば、同僚や上司とのコミュニケーションにおいてすれ違いが生じやすく、業務の進め方にこだわりすぎることでトラブルを引き起こすこともあります。

(2)過剰適応による限界

特に女性に多いケースとして、周囲に合わせる努力を続けるうちに、心身の負担が限界に達し、適応障害やうつ病を発症することがあります。その後、メンタルクリニックを受診した際にASDの診断を受けることが少なくありません。

4. 自分自身で気づく

近年、ASDに関する情報が広まり、自ら調べて診断を受けるケースも増えています。

(1)意図しないトラブルや誤解

幼少期から周囲とのコミュニケーションに違和感を感じ、トラブルが多かった人が、大人になってから「自分はなぜ他の人と違うのか」と疑問を持ち、ASDの特徴と一致することに気づくケースがあります。

(2)慢性的な空虚感

他人に合わせ続けることに疲れ、不全感や虚無感を感じることがあります。こうした違和感がASDの特徴と合致し、自ら診断を求めることがあります。

5. 周囲からの指摘

最後に、周囲の人からの指摘によって診断を受けるケースもあります。

(1)家庭での指摘

家族関係において、ASDの特性が原因でパートナーがストレスを抱え、「カサンドラ症候群」と呼ばれる精神的な疲弊を引き起こすことがあります。この場合、家族が本人に受診を勧め、診断につながることがあります。

(2)職場での指摘

職場での人間関係が上手くいかず、上司や同僚から指摘を受けて診断に至るケースもあります。ただし、自覚がない場合は受け入れることが難しく、診断を拒否することも少なくありません。

おわりに

ASDの診断に至るきっかけは人それぞれですが、早期発見・診断が重要であることは共通しています。診断を受けることで、特性に合った支援や対策を講じることが可能となり、より良い生活を送るための第一歩となります。

ASDに関する正しい知識を持ち、適切な支援を受けることで、個々の特性を活かしながら生きやすい環境を整えていくことが大切です。