身体の痛みもうつ病の症状?
近年、うつ病に関する研究が進む中で、身体の痛みがうつ病と関連している可能性が指摘されています。今回のテーマである「身体の痛みもうつ病の症状なのか?」という疑問に対し、結論としては「うつ病由来の場合もあるが、必ずしもそうとは限らない」と言えます。
うつ病とは?
まず、うつ病について振り返りましょう。うつ病は、脳の不調によって気分の落ち込みが続く病気であり、主に脳内の神経伝達物質であるセロトニンの不足が関与しているとされています。一般的には気分の落ち込みが特徴ですが、それ以外にも様々な症状が現れることがあります。
うつ病の主な症状
うつ病の症状は大きく分けて3つのカテゴリーに分類できます。
- こころの症状
- 気分の落ち込み、不安、罪悪感
- 集中力の低下、思考力の低下
- からだの症状
- 不眠、疲れやすさ
- 吐き気、めまいなどの自律神経症状
- 行動の変化
このように、うつ病は単なる「気分の問題」ではなく、身体にも影響を及ぼすことがあります。
うつ病と身体の痛みの関連
今回の疑問である「身体の痛みもうつ病の症状か?」について考えてみます。結論として、うつ病が原因で痛みが生じることがあり、また痛みがうつ病を悪化させる場合もある ということが分かっています。
うつ病と慢性疼痛
慢性的な痛み(慢性疼痛)とうつ病の関係は、医学的にも多くの研究が行われています。報告によると、
- 慢性疼痛のある人の約3~6割がうつ病を合併している
- うつ病の人の約3~5割に慢性疼痛がみられる
このように、うつ病と慢性疼痛は互いに影響し合い、悪循環に陥ることが多いのです。
うつ病が痛みを引き起こす主な要因
うつ病と身体の痛みの関連には、主に以下の2つの要因が考えられています。
- 生物学的要因
- 神経伝達物質(セロトニン・ノルアドレナリン)が、痛みの調節にも関与している
- ストレスホルモン(コルチゾール)の増加が、痛みを増幅させる可能性がある
- うつ病による脳の神経回路の変化が、痛みの感受性に影響を与える
- 心理学的要因
- 「この痛みはもう治らない」「痛みで動けなくなる」といった否定的思考が、痛みの悪化を引き起こす
- 痛みを避けるために動かなくなると、結果的に筋肉が硬直し、さらに痛みを感じやすくなる
- うつ病による社会的困難がストレスとなり、痛みを強める
うつ病と関連が深い慢性疼痛
特に、以下の3つの慢性疼痛は、うつ病との関連が指摘されています。
- 慢性頭痛
- 1日4時間以上の頭痛が、月15日以上、3ヶ月以上続く状態
- うつ病を合併していることが多く、抗うつ薬が用いられる場合がある
- 慢性腰痛
- 3ヶ月以上続く腰痛で、明確な原因が特定できないケースも多い
- うつ病を合併しやすく、抗うつ薬(例:デュロキセチン)が治療に用いられることがある
- 舌痛症
- 舌や口の中に痛みがあり、3ヶ月以上続くが、明確な原因がない
- うつ病を合併することが多く、抗うつ薬が有効な場合もある
うつ病と慢性疼痛の合併への対応
では、うつ病と慢性疼痛が合併した場合、どのように対応すればよいのでしょうか?
答えは「心身両面からのアプローチを行う」ことです。
治療のポイント
- 薬物療法
- うつ病の治療に準じた抗うつ薬の使用
- 痛みが強い場合には、鎮痛薬の併用
- 心理療法
- 否定的思考の修正(認知行動療法など)
- 生活習慣の改善
- 身体的アプローチ
- 適度な運動(無理のない範囲でのストレッチやリハビリ)
- 理学療法の活用
「身体の痛み=うつ病」ではない
最後に、「身体の痛みがある=うつ病」と決めつけるのは危険です。慢性疼痛とうつ病は関連があるものの、
- 体の病気(器質的な原因)による痛みも多い
- うつ病の可能性ばかりを考えていると、本当の原因が見落とされる恐れがある
そのため、まずは医師の診察を受け、身体的な原因がないか検査を行うことが大切です。その上で、原因が特定できず痛みが続く場合には、うつ病との関連も視野に入れて対応を考えていく必要があります。
まとめ
- うつ病の診断基準には「身体の痛み」は含まれないが、慢性疼痛とうつ病は相互に影響を及ぼしやすい
- 慢性頭痛・慢性腰痛・舌痛症などがうつ病と連動しやすい
- 治療には、心身両面からのアプローチが必要
- 身体の痛みがある場合、まずは体の病気を除外した上で、うつ病との関連を検討する
身体の痛みがある場合には、一人で悩まず、医師に相談することをおすすめします。