精神疾患を抱える方やそのご家族から、「精神疾患がある場合、動かない方が安全でしょうか?」という質問を受けることがあります。この問いに対する答えは単純ではなく、「安全面だけを考えれば一理あるが、人生の充実という観点からは慎重に検討すべき」というのが実際のところです。精神疾患は、本人の生活の質(QOL)だけでなく、社会的な適応にも影響を及ぼします。そのため、再発のリスクを抑えつつも、無理のない範囲で活動を増やしていくことが重要です。本記事では、精神疾患の特徴や再発予防の重要性、そして「リカバリー(回復)」の視点から、どのように生活を充実させていくかについて詳しく解説します。

精神疾患とは、心の不調が長期間続き、日常生活に支障をきたす状態を指します。精神疾患にはさまざまな種類があり、その症状や重症度も個人によって異なります。主な精神疾患には以下のようなものがあります。

うつ病や適応障害は、強い落ち込みや意欲の低下が主な特徴です。適応障害は特定のストレス要因に対する一時的な反応であることが多いですが、うつ病は長期間にわたり症状が続くことがあり、脳の機能低下が関与していると考えられています。

統合失調症や双極性障害は、脳の機能障害が関与する精神疾患であり、再発時の影響が大きいのが特徴です。統合失調症は幻覚や妄想などの症状を伴い、双極性障害は極端な気分の波(躁状態と抑うつ状態)を繰り返します。これらの疾患では、適切な治療と再発予防が特に重要になります。

不安障害は、過度の心配や恐怖を特徴とする精神疾患です。かつては「神経症」とも呼ばれ、性格的な要因が強いと考えられていましたが、現在では脳の機能低下も関係しているとされています。不安障害はうつ病と似た症状を示すこともあり、治療には薬物療法や認知行動療法(CBT)が有効です。
精神疾患の多くは、ストレスが再発の引き金となることが知られています。特に統合失調症や双極性障害では、一度の再発が長期間の治療を要するケースも少なくありません。そのため、ストレスの多い状況を避けることで再発のリスクを減らせる可能性があります。例えば、社会復帰や新しい環境への適応は、多くのストレスを伴います。そのため、「できるだけ動かずに安静にしていた方が再発しにくいのではないか」と考える方もいるでしょう。この考え方には一定の理がありますが、精神疾患の管理は「再発予防」だけが目的ではありません。

動かないことで再発のリスクを下げられる可能性はありますが、一方で以下のような問題も生じる可能性があります。
活動を控えすぎると、生活スキルや社会適応能力が低下し、いざ社会復帰しようとしたときに大きなハードルを感じることになります。日常生活の中で少しずつ行動を増やしていくことで、ストレス耐性や適応力を養うことができます。
精神疾患の治療では、病気を管理することと同時に、充実した人生を送ることも重要な目標です。安全な環境で過ごすことでストレスは減りますが、同時に「何のために生きるのか」「自分の役割は何か」といった生きがいを感じにくくなる可能性もあります。
日常的に活動が少ないと、ちょっとした環境の変化や予想外の出来事が大きなストレスとなり、かえって再発リスクが高まることがあります。適度な刺激を取り入れることで、ストレスに対する耐性を高めることができます。

精神疾患を持つ方が安全に生活しながらも充実した人生を送るためには、「再発予防を意識しながら、無理のない範囲で活動を増やしていく」ことが現実的なアプローチとなります。近年注目されているのが「リカバリー」という考え方です。リカバリーとは、「病気と共存しながら、自分らしい人生を送ること」を目指すアプローチです。単に病気を治すことだけでなく、社会との関わりや生きがいを見つけることも含まれます。
具体的な方法としては、以下の点が挙げられます。
精神疾患がある場合、動かないことで再発を防ぐことは可能かもしれません。しかし、人生の充実という視点から考えると、「ただじっとしている」だけでは解決になりません。
大切なのは、無理のない範囲で少しずつ活動を増やし、ストレス管理をしながら生活を充実させていくことです。リカバリーの考え方を取り入れ、自分のペースで少しずつ前進することで、病気と上手に付き合いながら豊かな人生を送ることができるでしょう。