──限界があっても、報われなくても、それでも歩みを止めないために──

「大人になってから、発達障害と診断されました」
そんな相談を受ける機会が、ここ数年で確実に増えています。かつては「子どもに多い」と思われていた発達障害。しかし今では、大人になってから気づく、あるいは周囲の勧めで初めて受診して診断がつく、というケースも少なくありません。
今回は「大人の発達障害をどのように受け入れていけばよいのか?」という、とても重要なテーマについてお話ししていきます。
発達障害とはなにか?
発達障害とは、主にASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)など、生まれつき脳の働きに特性がある状態を指します。子どものうちに診断されることが多い一方で、実際には幼少期には周囲のサポートや本人の工夫で問題化しなかった人が、大人になって社会に出た途端に適応の難しさを感じ、受診に至るというケースも多く見られます。
発達障害は、いわゆる“治る”という病気とは違います。特性は一生つきあっていくものであり、薬で完全に寛解することは期待できません。そのため、自分自身の特性を知り、理解し、工夫しながら生きることが非常に重要になります。
代表的な発達障害の特徴
大人の発達障害について理解するには、まずその代表例であるADHDとASDについて知っておくことが大切です。
ADHD(注意欠如・多動症)
ADHDの主な特徴は、不注意、多動性、衝動性です。以下のような傾向が見られます。
ASD(自閉スペクトラム症)
一方、ASDには以下のような特徴があります。
これらの特徴は人それぞれに異なり、“グレーゾーン”と呼ばれる診断基準を満たさないが困りごとがある人も含めると、非常に多くの人が何らかの発達特性を抱えて生きています。
大人の発達障害とその背景
学生の頃までは成績がよく「ちょっと変わってるけど優秀」と思われていた人でも、社会人になり環境が大きく変化すると一気に適応が難しくなることがあります。上司とのやり取り、複数タスクの同時進行、曖昧な指示──そうした社会の“暗黙のルール”が、発達障害の特性を持つ人にとっては大きな壁となり得るのです。
その結果、抑うつや不安障害などの“二次障害”を発症し、精神科や心療内科を受診したことで、ようやく発達障害の診断に至ることがあります。
診断を受けたときの「ショック」
実際、診断を受けた方の中には「正直、絶望しました」と語る方も少なくありません。
その理由には、以下のような要素が挙げられます。
特に、自分の意思ではなく、家族や職場からのすすめで受診した場合には、診断そのものに強い拒否反応やショックを抱えることが多くなります。
受け入れのプロセス
では、こうしたショックや否定的な感情をどう乗り越えていけばいいのでしょうか。
ここで私が大切にしているのは、「いずれ何かできる、そう信じること」です。
発達障害の特性は、たしかに制限をもたらすこともあります。しかしそれは、可能性をすべて閉ざすものではありません。むしろ、自分の苦手なことを理解することで、自分の得意を活かす方法や、環境の工夫が見えてくるのです。
受け入れのプロセスには、段階があります。
これらの段階を、無理なく、じっくり進んでいくことが何よりも大切です。
希望を持つということ

「障害」という言葉に、どうしても“絶望”のニュアンスを感じる人は多いかもしれません。しかし、発達障害は「終わり」ではなく「始まり」でもあります。
それは、これまで生きづらさを感じてきた理由が明らかになった瞬間であり、これからどう生きていけばいいのか、自分らしさを再定義する第一歩でもあるのです。
限界があっても、報われないと感じることがあっても、それでも「歩き続ける道」は、きっとあなたの目の前に続いています。大切なのは、歩みを止めないこと。そして、あなたを理解し、応援してくれる人が必ずいるということを、忘れないでいてください。