知的障害児者のみられる年齢別症状や診断に関わるIQ以外の要素について

知的障害とは、幼少期から青年期にかけて発生し、読み書きや数学、
論理的思考、知識、問題解決などの「概念的領域」
対人コミュニケーションや社会的判断、自己制御などの「社会的領域」
金銭管理や行動管理などの「実用的領域」の3つの領域において、
知的機能および適応機能の両方に明らかな制約が見られることが特徴です。
軽度の知的障害においては、適応能力の発達の遅れが目立たないため、
本人や周囲が気付かず、発見が遅れることがよくあります。
大人になってから仕事などで困難を感じ、発達障害の診断を受けてみると、
実は軽度の知的障害が背景にあったというケースもあります。
今回は「知的障害」について、診断における適応行動の意味、
その原因や知的評価に加えて、必要となる情報、
さらに知的障害のその後の経過などについて説明します。

知的障害児者のみられる年齢別症状や診断に関わるIQ以外の要素について

知的障害とは、知的発達の障害であり、精神遅滞とも呼ばれます。
最新の「精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)」では
知的能力障害(知的発達症)」とも記載されています。
知的障害は、知的機能と適応機能に基づいて判断され、その重症度に応じて
軽度」「中等度」「重度」「最重度」に分類されます。
さまざまな中枢神経系疾患が原因となるため、正しい診断を受けて早期に
治療療育教育を行うことが重要です。
本人だけでなく、家族の支援も不可欠な発達障害の一つです。
知的障害の有病率は一般人口の約1%であり、年齢によって変動します。
男女比は軽度で約1.6:1重度で約1.2:1です。
知的機能は知能検査によって測定され、平均が100、
標準偏差15の検査では知能指数(IQ)が70未満を知的機能の低下と判断します。
しかし、知能指数の値だけで知的障害と判断せず、適応機能を総合的に評価して判断します。
また、重い運動障害を伴う重度知的障害を「重度心身障害」と呼ぶこともあります。

適応機能とは
適応機能とは、日常生活でその人に期待される要求に対して、いかに効率よく適切に対処し、
自立しているかを表す機能です。
具体的には、食事の準備、対人関係、お金の管理などが含まれ、
社会生活を営むために重要な要素となります。

知的障害の定義
知的能力障害(ID:Intellectual Disability)は、医学領域の精神遅滞(MR:Mental Retardation)
同じものを指します。
これは、論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、学校や経験による学習、
全般的な精神機能の支障によって特徴づけられる発達障害の一つです。
発達期(18歳頃まで)に発症し、「概念的領域」「社会的領域」「実用的領域」における
知的機能と適応機能の両面の欠陥を含む障害です。
つまり、知能検査によって確認される知的機能の欠陥と、適応機能の明らかな欠陥が
発達期(概ね18歳まで)に生じることを指します。
中枢神経系の機能に影響を与えるさまざまな病態で生じるため、「疾患群」ともいえます。

年齢別の症状(知的障害の場合)
症状が重い場合は、若いうちから気付かれることが多いです。
軽度の知的障害の場合は診断が遅れることがあり、気づかれにくいことがあります。
また、合併症が先に気づかれ、その後に知的障害があると分かることもあります。
知的障害のある人に多い特徴を年齢別に見ていきましょう。

乳幼児(0歳~未就学児)
乳幼児期には心身が未発達なため、はっきりとした特徴が分からないこともありますが、
成長に従って次のような特徴や困りごとが見られるようになることがあります。

  • 言葉や身体の発達が遅い 知的障害のある赤ちゃんは身体的発達が遅れることがあります。
  • 質問に答えることができない 言葉は理解しているものの、質問にうまく答えることができず、
    会話が成立しないことがあります。
    重度の場合、意思表示や相手の言葉の理解が困難なこともあります。
  • 友だちとうまく遊べない 言語やコミュニケーションの遅れから、友だちができにくく、
    周囲の子供たちに馴染めないことがあります。
  • 身体的な特徴 知的障害を引き起こす原因により身体的特徴は異なります。
    例えば、ダウン症の場合は「低身長」「鼻が低い」などの独特の顔つきや
    「体が柔らかい」などの身体的特徴があります。
  • けいれんの回数が多い てんかんの症状などによるけいれんが頻発することがあります。
    高熱などの体調不良でもけいれんは生じますが、頻繁に起きる場合は
    脳や代謝機能に問題がある可能性があるため、早期の受診が必要です。

学齢期(6歳~15歳)

  • 日常の行動に時間がかかる 衣服の着脱や食事に時間がかかることがあります。
    指示されればできることも多いですが、日常生活での困難が増えます。
  • 勉強についていけない 学年相応の学力習得が難しく、
    学校の勉強についていけないことが多いです。
    小学生になって初めて知的障害を疑う親も少なくありません。
  • 対人関係がうまく築けない 勉強ができないことや人間関係の問題から、
    教師や親に反抗的な態度を取ることがあります。
    知的障害に気付かずに、日常生活や人間関係に悩むこともあります。
  • 学校での不適応 人との関わりが苦手で、社会性が低いため友達ができにくいことがあります。
    勉強が嫌で学校に行くのを嫌がることもあります。
  • 自分なりの独特な手順がある ASD(自閉スペクトラム症)との合併症もあるため、
    独自のこだわりがあり、それが変えられるのを極端に嫌がることがあります。

青年/成人期(15歳~)

  • 金銭的なトラブルに巻き込まれやすい 消費トラブルや金銭トラブルに巻き込まれやすいです。
    適切な支援や相談できる人を作ることが重要です。
  • 見通しを立てたり考えをまとめたりすることが苦手 スケジュール管理や予定を立てることが
    苦手で、「明日のために今日はこれをしなければならない」と考えることが難しいです。
    また、何かを決める際に判断が難しく、指示に従うのは得意でも自分で考えるのが苦手です。
  • 成人病のリスクが高い 偏食から糖尿病になるなど、健康管理が難しいことがあります。

知的障害はダウン症や自閉スペクトラム症、てんかんなど他の障害と合併して現れることがある
ため、上記の特徴はすべての知的障害に当てはまるわけではなく、
他の障害との合併症である場合も含まれています。
知的障害を診断する際には、症状の評価とともに原因疾患があるかどうかを調べる必要があります。
原因としては、染色体異常、神経皮膚症候群、先天代謝異常症、胎児期の感染症
(例えば先天性風疹症候群など)、中枢神経感染症(例えば細菌性髄膜炎など)、
脳奇形、てんかんなどの発作性疾患などが考えられます。
どの検査をどこまで行うかは、対象となる子どもの症状に基づいて決定されます。
すなわち、日常生活の様子や保護者の訴え、本人の診察所見を総合して決めるものであり、
ケースバイケースです。

診断に際して重要な情報としては、粗大運動能力微細運動(手先の操作性)、社会性
言語の理解表出の力などが含まれます。
医学的な診断はこのような基準で行われますが、知的障害に対する福祉的な捉え方には
変化が生じています。
福祉的な捉え方とは、知的な能力と日常生活における活動能力が必ずしも同じではなく
その人によって必要な援助が異なるため、必要な援助の内容と強さによって
知的障害を分類しようとするものです。
福祉サービスを受けるための制度として「療育手帳」があります。
これは、知的障害児・者に対して一貫した指導・相談などを行い、様々な
援助・支援を受けやすくすることを目的に都道府県・指定都市が交付します。
窓口は市町村や管轄の児童相談所、障害者センター等で、重症度に応じて
「軽度」「中等度」「重度」「最重度」に分類されます。
申請条件は住んでいる都道府県によって異なることがあるので確認が必要です。

日常生活の適応機能には、概念的領域社会的領域実用的領域の3つがあります。
日常生活・学校・職場など多方面における機能状態の困難さや支援の必要性を評価して
判断する必要があります。
概念的領域には、記憶、言語、読字、書字、数学的思考、実用的な知識の習得、問題解決、
新規場面における判断能力が含まれます。
社会的領域には、他者の思考や感情、体験の認識、共感、対人的コミュニケーション技能、
友情関係を築く能力、社会的判断が含まれます。
実用的領域には、セルフケア、仕事の責任、金銭管理、娯楽、行動の自己管理、
学校と仕事の調整などが含まれます。

日本の適応行動評価の客観的尺度として『日本版Vineland-Ⅱ 適応行動尺度』があり、
0歳から92歳までの幅広い年齢層の適応行動を評価できます。
これには、コミュニケーション日常生活スキル社会性運動スキル
4つの適応行動領域があります。

知的障害児者のみられる年齢別症状や診断に関わるIQ以外の要素について

知的障害の治療とその後については、ほとんどの場合、基礎にある障害そのものを
改善することは難しいですが、適切な環境下では適応機能が向上する可能性があります。
早期に知的障害が発見され、適切な療育が行われた場合、長期的に見て改善が期待されます。
本人だけでなく家族への支援も重要です。
また、知能やその遅れに関する知識が広まり、合理的な理解が進むこと、
その教育を一般社会にも行うこと、家族や遺伝に関するカウンセリングも有益です。
出生前後の適切な医学的対応や、生後の福祉的・教育的支援(特別支援教育)は、
知的障害や二次的な合併症を最小限にとどめることに役立ちます。
以上が、知的障害の診断における適応行動、その原因、知的評価に加えて必要な情報、
およびその後の経過についての説明です。
お読みいただきまして、ありがとうございました。