「相談され過ぎてしんどいんです」。
日々の診察やカウンセリング、または日常の会話の中でも、このような声を耳にすることがあります。相談されること自体は信頼の証とも取れますが、それが頻繁に、あるいは過剰になってくると、相談される側にも大きな負担がかかり、心身に影響を及ぼすことすらあります。
今回は、「人から相談され過ぎてつらくなってしまった」という悩みについて、どのように対応すれば良いのか、また相談する側・される側の双方にとって持続可能な関係とは何かを一緒に考えていきたいと思います。

実際に相談されることでしんどさを感じる場面には、いくつかの共通パターンがあります。
このような相談が続くと、「自分の時間がなくなる」「体力や気力が持たない」といった声が多くなります。中には、眠れなくなったり、気分が落ち込んだりと、明確に生活への悪影響が出る方も少なくありません。
最近よく耳にするフレーズに「つらい時はどんどん頼っていい」があります。この考え方は、普段なかなか人に頼れずに無理をしてしまう人にとっては、大切で必要なメッセージでもあります。しかし一方で、頼られる側には必ず一定の負担がかかるという現実もあります。
特に、頼られることが「依存」や「心理的な支配」のような関係性に発展してしまった場合、相談という行為自体が本来の意味から逸れてしまい、関係が不健全になることすらあるのです。
カウンセリングや法律相談、医療・接客業など、専門職による相談には「時間=対価」が明確に設定されています。しかし、友人や知人、職場の同僚などとの関係では、その線引きが曖昧になりがちです。
「ちょっとだけ聞いて」と始まった相談が、気がつけば何時間も続いていた――そんな経験はありませんか?
このような曖昧さが続くと、相談される側に知らず知らずのうちに負担が蓄積されてしまうのです。

「助けたい気持ちはあるけど、自分の体力が持たない」
このような時には、「無理をしてまでは続けられない」ということを、はっきりと伝えることが必要です。
ただし、伝え方には注意が必要です。強く「もう無理!」と一方的に拒否してしまうと、相手に「見捨てられた」と感じさせたり、逆に怒りを引き出してしまうこともあります。
大切なのは、相手の気持ちを尊重しながらも、「自分には限界がある」ということを丁寧に、そして誠実に伝えることです。
例としては、
「あなたの気持ちは理解したいと思ってる。でも最近、自分の体調が少し厳しくて、すぐには対応できないかもしれない」
といった言い方が良いでしょう。
相談を断っても無理やり話を続けてくる、何度も頼ってくる――このような場合は、すでに関係性にゆがみが生じている可能性があります。そもそも「相談」という行為は、双方の同意のもとで成立するものです。断る自由、やめる自由がない場合、それは「相談」ではなく、ある種の支配に近いものです。
そのような関係が続いていると感じた場合は、距離を取る、連絡頻度を制限するなど、現実的な対策を取ることも必要になります。
もちろん、相談すること自体が悪いわけではありません。自分だけではどうにもならない問題に直面したとき、人に相談することは非常に大切です。AIやネットでは見つからない答えや、共感を得ることもあります。
ただし、相談する側も「相手に負担がかかっているかもしれない」という視点を持っておくことが必要です。
一方的に話すのではなく、「今、少しだけ時間いい?」など、相手の余裕を確認する姿勢が信頼関係を築きます。

相談が継続的に必要になる場合は、「枠組み」を設定しておくことが有効です。例えば、
などのルールを事前に話し合っておくと、お互いが安心して関係を続けることができます。もちろん、こうした枠組みは一方的な押しつけではなく、双方が納得できる形であることが大前提です。
特に注意が必要なのは、関係性の中で生じる「ひずみ」です。1対1の関係では、第三者の目が入りにくく、知らず知らずのうちに一方が過度に依存したり、相手を振り回す関係になってしまうことがあります。
また、「何とかしてほしい」と言いながら、助言を受け入れず、「でもそれは違う」と自己主張を通してしまうような、いわゆる“アンビバレンツ(両価性)”な態度は、相談を受ける側を非常に疲弊させます。これも関係性が不健全になっているサインの一つです。
相談という行為は、本来とても大切で、時には人生を救う力を持っています。ですがその一方で、相談される側の負担が無視されてしまうと、関係そのものが破綻してしまうことにもなりかねません。
だからこそ、「お互いが続けられる形で関わり続ける」ことが重要です。無理をして助けるのではなく、「できる範囲で」「持続可能な方法で」関係を築いていく。その視点が、現代社会における人間関係を健やかに保つ鍵になるのではないでしょうか。