うつ病でも体の症状は出ますか?

はじめに

今回いただいたご質問は、「うつ病でも体の症状が出ることはありますか?」というものです。結論からお伝えすると、「はい、出ることはあります。そして、うつ症状よりも“慢性的な体調不良”が前面に現れるケースもある」のです。

多くの方が「うつ病」と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、気分の落ち込みや意欲の低下、不安感などの“心の症状”かもしれません。しかし実際には、「体」に現れる症状も少なくなく、場合によっては精神的な落ち込みよりも体調不良の方が深刻で、日常生活に大きな影響を及ぼすこともあるのです。

今回は、うつ病と体の不調の関係性を、自律神経や他の疾患との違いも交えながら、丁寧に解説していきます。

うつ病とは何か?

うつ病とは、単なる「気分の落ち込み」ではなく、脳内の神経伝達物質(特にセロトニンやノルアドレナリン)のバランスの崩れによって生じる「脳の不調」です。つまり、精神的な問題だけでなく、生物学的な側面も大きく関わっています。

治療においては、以下の3本柱が基本となります。

  • 休養:心身を十分に休めること
  • 薬物療法:抗うつ薬などによる治療
  • 精神療法:認知行動療法など、考え方や行動のパターンに働きかける治療

こうした治療により、少しずつ脳のバランスを整えていくことが目指されます。

うつ病と体の症状

うつ病というと、気分の落ち込みや意欲の低下などが代表的な症状として知られていますが、実は多くの場合、身体的な不調もあらわれます。これには「自律神経の乱れ」が深く関わっているとされています。

自律神経は、私たちの内臓や血管、体温調節など、無意識のうちに体を調整してくれる重要な神経です。うつ病によって脳の働きが不調になると、この自律神経のバランスも崩れ、様々な体の症状が現れるのです。

よくある身体症状の例

うつ病でよくみられる体の不調には以下のようなものがあります。

  • 倦怠感(体のだるさ)
  • 易疲労性(ちょっとしたことで疲れる)
  • 食欲の低下
  • 体重の減少
  • 吐き気や胃の不快感
  • めまい
  • 頭痛や肩こり
  • 睡眠障害(眠れない・寝すぎてしまう)

これらは一般的な体調不良に見えるため、本人や周囲も「うつ病が原因」とは気づきにくいことがあります。しかし、治療を進める中でうつ病が根本原因であることが判明するケースも少なくありません。

日常生活への影響

うつ病に伴う体の不調は、仕事や家事、対人関係など日常生活にさまざまな影響を及ぼします。たとえば、

  • 朝になると強い体調不良が出て、会社や学校に行けない
  • 疲れやすく、家事が思うようにできない
  • お風呂に入るのも億劫になり、身だしなみが乱れる
  • 食事の支度ができず、自炊が困難になる
  • ひどい場合には、食事そのものが取れなくなる

このように、体の症状が長期にわたり続くことで、本人のQOL(生活の質)が大きく低下してしまうのです。そしてこの不調自体がストレスとなり、うつ状態をより悪化させる悪循環に陥ることもあります。

自律神経失調症との関係

「自律神経失調症」は、うつ病の身体症状として現れることが多い病態です。これは、自律神経のバランスが崩れたことで体のあちこちに不調が現れるもので、内科などで検査を受けても異常が見つからない場合が多いのが特徴です。

うつ病が背景にある場合、この自律神経失調症の症状はなかなか治らず、慢性的に続くことがあります。つまり、「自律神経失調症」という名前がついていても、実はうつ病が根本原因だった、というケースも珍しくありません。

仮面うつ病について

うつ病の中には、「仮面うつ病」と呼ばれるタイプもあります。これは、気分の落ち込みなどの精神的な症状が目立たず、身体症状のみが前面に出ているうつ病です。

たとえば、頭痛、胃痛、めまい、息苦しさなど、体の不調が続くのに、どれだけ検査しても原因が分からない……という場合、実はこの仮面うつ病だったということもあります。

このタイプのうつ病は、体の不調が主に出るため、うつ病と気づかれにくく、治療開始が遅れることがよくあります。そのため、「もしかしたら心の問題かも?」と早めに気づけることが非常に重要です。

適応障害との違い

うつ病と混同されやすいのが「適応障害」です。適応障害でもストレスが原因で身体的な症状が出ることがありますが、次のような違いがあります。

項目うつ病適応障害
症状の出方慢性的に続くストレスがかかったときに急に出る
主な身体症状倦怠感、食欲不振、体重減少など吐き気、めまいなど自律神経的な症状
改善のタイミング治療と時間が必要ストレスから離れると改善する傾向

うつ病の身体症状は長期にわたるため、周囲や本人がストレスと切り離して捉えてしまうことが多いのですが、慢性的な体の不調があるときには、うつ病の可能性も疑うことが大切です。

まとめ

今回のご質問「うつ病でも体の症状が出ますか?」に対して、結論としては「はい、出ることがあります。そして体の症状が中心となるケースも少なくありません」となります。

  • うつ病は脳内の神経伝達物質の乱れによる「脳の病気」
  • 自律神経の不調を介して、さまざまな身体症状が出現する
  • 倦怠感、食欲不振、めまいなどの症状はうつ病が原因である場合も
  • 仮面うつ病や自律神経失調症との見極めが難しいケースも多い
  • 適応障害とは症状の持続性やストレスとの関連で見分けることができる

もしあなたや周囲の方が、検査では異常がないのに体調がずっとすぐれない……という場合には、心の状態にも目を向けてみることをおすすめします。身体の不調が実は「こころのサイン」である可能性もあるからです。

うつ病は早期に気づき、正しい治療を受けることで回復が見込める病気です。心と体、両方の声に耳を傾け、少しでも気になることがあれば、専門の医師に相談することをためらわないでください。