うつ病の症状の実感5つ

うつ病という言葉は広く知られていますが、その実際の症状や本人の感じ方について、すべての人が正確に理解しているとは限りません。うつ病は単なる「気分の落ち込み」ではなく、脳の機能に不調が生じることによって心や体にさまざまな影響を及ぼす病気です。

この記事では、うつ病の基本的な症状から、実際にどのように感じられるのかという「実感」の側面まで、丁寧に解説していきます。

はじめに:うつ病は「脳の不調」

うつ病は、主に脳内の神経伝達物質であるセロトニンの不足などが関係する、脳の機能的な不調によって引き起こされる病気です。そのため、単なる気分の問題とは異なり、思考力や判断力、意欲、さらには身体の状態にも幅広い影響が及びます。

また、うつ病の症状については医学的には様々に分類・説明されますが、実際に本人がどのように感じているかという「症状の実感」には個人差が大きく、理論的な説明と実際の感覚が一致しないことも少なくありません。こうした「実感」に目を向けることで、うつ病をより深く理解することができ、早期発見や支援にもつながります。

うつ病の多様な症状

うつ病の多様な症状

うつ病には、気分の落ち込みだけではなく、心・脳・体・行動の各側面にさまざまな症状が現れます。

心の症状

うつ病と聞いてまず思い浮かぶのが、「気分の落ち込み」でしょう。これは「抑うつ気分」とも呼ばれ、代表的な心の症状です。しかしそれだけではありません。罪悪感や自己否定、不安感、焦り、イライラといった感情の変化も見られます。これらの症状は本人の思考や判断に強く影響し、日常生活にも支障をきたすようになります。

脳の機能低下

うつ病は脳の不調によって起こるため、記憶力や集中力の低下、思考力や判断力の低下が見られることがあります。また、意欲の減退や、以前は楽しめていたことへの興味が失われることも多く、行動が鈍くなったり、動き出すのに大きな労力が必要と感じられたりするようになります。

体の症状

うつ病は心や脳だけではなく、身体にも影響を及ぼします。自律神経の乱れが原因とされる身体症状として、倦怠感、疲労感、食欲不振、睡眠障害、吐き気、めまいなどが挙げられます。これらはしばしば風邪や内科的な病気と見分けがつきにくく、身体症状からうつ病が見逃されることもあるため注意が必要です。

行動の変化

うつ病による心や体の不調は、行動にも変化をもたらします。人との関わりを避けるようになる他、表情や話し方が無表情・単調になる、怒りっぽくなる、反応が鈍くなるなど、周囲からも変化が見て取れるようになります。これらは時にトラブルの原因にもなりますが、逆に言えば、早期発見のきっかけにもなります。

症状の「実感」とは?

医学的にはさまざまに分類されるうつ病の症状ですが、実際にうつ病を経験している人は、これらを次のような「感覚」として実感することが多いとされています。

つらい

うつ病においてもっとも一般的な実感が「つらい」という感覚です。これは抑うつ気分そのものであり、特に理由がなくてもつらさがこみ上げてくることもあります。人に会うことがつらい、悪い方にばかり考えてしまってさらに気分が沈むといった、思考の悪循環によってつらさが増幅することもあります。

重い

体が鉛のように重く感じて動けない、頭が重く感じられて思考がうまく働かない、何をするにも億劫で仕方がない――こうした「重さ」の感覚は、意欲の低下や倦怠感によって引き起こされます。自分では「怠けている」と感じてしまう人もいますが、これはうつ病のれっきとした症状です。

落ち着かない

うつ病の中には、気分の落ち込みよりも不安感や焦りが目立つタイプもあります。この場合、「落ち着かない」という感覚が強くなります。ちょっとした物音や予定の変更に過敏に反応し、イライラが表面化することもあります。

このような状態では十分な休養をとることが難しく、症状の悪化にもつながるため注意が必要です。

申し訳ない

うつ病では罪悪感や過度の自責の念が強くなり、「自分の存在が迷惑」「すべて自分のせい」といった思考に陥りがちです。これが「申し訳ない」という実感として現れます。症状が深刻になると、根拠のない罪の意識(罪業妄想)を抱くこともあり、日常生活に深刻な影響を及ぼします。

つまらない

何をしても楽しいと感じられない、以前は大好きだった趣味にも関心が湧かない――こうした「つまらなさ」も、うつ病の大きな特徴です。意欲や興味が著しく低下するため、気分転換を図ろうとしてもうまくいかず、慢性的な悪循環に陥りやすくなります。

人それぞれ異なる「うつ病の顔」

人それぞれ異なる「うつ病の顔」

うつ病の症状は非常に多様であり、どの症状が目立つかは人によって異なります。ある人は気分の落ち込みが強く出る一方で、別の人は身体症状や不安感が先行することもあります。そのため、同じ「うつ病」という診断名であっても、本人の体験する内容は千差万別なのです。

また、理論上説明されている症状と、本人が「どのようにそれを感じているか」という実感は必ずしも一致しません。このギャップを理解することで、本人の苦しみにより寄り添った支援が可能になります。

おわりに:早期の気づきと対応が大切

うつ病は脳の病気であり、誰にでも起こりうるものです。そして、その症状や実感は非常に多様であるため、気づきにくいケースも少なくありません。しかし、「なんとなくつらい」「重い」「落ち着かない」「申し訳ない」「つまらない」といった感覚が続く場合には、それがうつ病のサインである可能性があります。

こうした感覚に気づいたら、我慢するのではなく、できるだけ早い段階で専門機関に相談することが大切です。治療には時間がかかることもありますが、適切な支援と理解によって回復することが可能です。一人で抱え込まず、安心して相談できる環境をつくることが、うつ病と向き合う第一歩となるのです。