【双極性障害】双極性障害の原因は?
研究が進む一方で、未だ多くの謎が残る精神疾患
双極性障害(通称:躁うつ病)は、気分が高揚する「躁状態」と、強い落ち込みが特徴の「うつ状態」とを周期的に繰り返す精神疾患です。うつ病と混同されがちですが、脳内での不調のメカニズムは異なると考えられており、診断と治療には細やかな配慮が必要です。
本記事では、双極性障害の原因に関する最新の研究動向や、治療の現状、予防の可能性などについて、丁寧に解説していきます。
双極性障害とはどのような病気か?

双極性障害は、以下の4つの気分状態を特徴とする精神疾患です。
これらの状態を周期的に繰り返すことが、双極性障害の大きな特徴です。
双極性障害の主な治療法

1. 薬物療法
治療の中心となるのは気分安定薬です。代表的な薬として、リチウムやバルプロ酸、さらには必要に応じて抗精神病薬(例:オランザピンなど)も用いられます。これらの薬剤は症状の改善と再発の予防の両方に効果があるとされ、長期的な服薬の継続が重要です。
2. 生活面での調整
規則正しい生活リズムを保ち、睡眠や食事、活動量を安定させることは、気分の波を抑えるうえで極めて大切です。生活記録をつけたり、医師と連携して調整することが求められます。
3. 福祉資源の活用
病状の安定化後も、就労や社会生活において困難を抱える場合があります。その際には、障害者手帳や就労支援、カウンセリングなどの福祉資源の活用が、日常生活の質を高めるために役立ちます。
双極性障害の原因は?
■ 原因は未解明、しかし研究は進んでいる
双極性障害の明確な原因は、現在も科学的には解明されていません。さまざまな仮説が提唱され、研究が進められているものの、「これが原因である」と断言できる要素は今のところ存在しないのが実情です。
一方で、複数の要因が絡み合って発症する多因子疾患として捉えるのが現実的であると考えられています。
双極性障害の研究の方向性
遺伝子(ゲノム)研究
双極性障害は統合失調症と同様に、遺伝的な要素が関与していると考えられています。近年では「AKAP11」という遺伝子の異常が、統合失調症と双極性障害の双方に関連している可能性が示唆されており、注目されています。
ただし、これらの知見も未だ初期段階であり、確定的な結論には至っていません。
脳画像・死後脳研究
MRIやPETなどの脳画像技術を用いた研究や、死後脳を使った組織・遺伝子レベルの研究も進められています。これにより、双極性障害に特有の脳の構造変化や神経伝達物質の不均衡などが探られていますが、依然として決定的な原因の特定には至っていません。
細胞レベルでの研究
iPS細胞を用いた研究も近年活発化しています。患者由来の細胞をもとに、神経細胞のカルシウム濃度や活動性を測定し、正常な細胞との違いを解析することで、病態の本質に迫ろうとする試みが行われています。
治療薬のメカニズムも未解明
双極性障害で使用される治療薬の中でも、リチウムやバルプロ酸などは有効性が確立されている一方で、その作用メカニズムは厳密には未だ解明されていません。
リチウムはイノシトール代謝などを調節している可能性があり、バルプロ酸は神経の興奮を抑制すると考えられていますが、詳細は不明なままです。抗精神病薬においても、躁状態への効果は確認されているものの、うつ状態への影響や再発予防については不明点が多く残ります。
双極性障害は遺伝するのか?
双極性障害は、厳密な意味では遺伝性疾患には分類されませんが、家族内での発症率が一般よりも高いことから、遺伝的な素因が部分的に関与しているとされています。
例えば、一卵性双生児の一方が双極性障害を発症している場合、もう一方も発症する可能性は40%以上とされています。また、兄弟姉妹が双極性障害の場合も、一般より発症率が数倍高くなる傾向があります。
ただし、遺伝的素因があっても実際に発症しないケースも多く、環境要因やストレス、ライフスタイルなどが相互に影響することが考えられています。
予防は可能なのか?
双極性障害の予防は、生活習慣の改善だけで完全に防ぐことは困難です。遺伝的背景や脳の形態といった要因が関与しているため、発症を完全に抑えることは現時点では難しいとされています。
しかし、重要なのは早期発見・早期治療です。特に、うつ状態のみが目立つ「双極性障害Ⅱ型」はうつ病と誤診されやすく、気づかれにくい側面があります。そのため、疑わしい症状がある場合には、専門医の診察を受けることが望まれます。
また、治療中に病状が安定してくると、薬の服用を自己判断で中断してしまう方もいますが、これは再発の大きなリスクとなります。継続的な治療の重要性を理解し、心理的な葛藤に対しても支援を受けながら治療を続けていくことが、予後の改善につながります。
まとめ
双極性障害の原因に関する研究は、遺伝子、脳画像、iPS細胞などの分野で日々進歩していますが、未だ決定的な原因は解明されていません。