家族がうつ病と診断され、ほとんど一日中ベッドで寝ている様子を見ると、心配や戸惑い、時には苛立ちを感じることがあるかもしれません。「なぜこんなに何もできないの?」「ちゃんと動こうとしているの?」そんな疑問や不安が浮かぶのは、うつ病に対する理解が不十分なままだとごく自然なことです。
しかし、うつ病には「動きたくても動けない」という状態が存在します。これは怠けや甘えではなく、病気による症状の一部であり、本人にとっても非常につらく、苦しい体験なのです。この記事では、うつ病の「動けない」という状態について詳しく説明し、周囲の家族ができる理解と支援について考えていきます。

うつ病は、単なる気分の落ち込みではなく、脳の働きに関係する疾患です。特に、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの不足が背景にあるとされています。セロトニンは気分の安定に深く関わっており、それがうまく働かないことで、長期間にわたって気分が落ち込み、日常生活に支障をきたすようになります。
一般的には「落ち込んでいる」というイメージが強いうつ病ですが、実際には以下のように多岐にわたる症状が見られます。
こうした変化の中で、特に周囲から見て気になるのが「ずっと寝ている」「何もしていない」といった、行動面の変化ではないでしょうか。
うつ病の人は、決して怠けているわけではありません。「やらなければならない」と頭では理解していても、心と体がまるで動かないように感じることがあります。たとえば、
こうした状態は、以下のような症状が背景にあります。
こうした状態は、目に見える「落ち込み」や「泣く」といった表現とは違い、外からは分かりにくいため、周囲から理解されにくいことが多くあります。
「落ち込んでいる」「つらそう」といった状態には、周囲も共感しやすいものです。しかし、「動けない」「何もしていない」姿には共感よりも苛立ちや疑念が湧きやすくなってしまうのが現実です。
その理由として、以下のような点が挙げられます。
その結果、「ちゃんとしなさい」「いつまでそうしているの?」という批判的な言葉が本人に向けられてしまうことがあります。しかし、それは本人にとって大きな負担となり、自己否定感や罪悪感をさらに強め、症状を悪化させるリスクがあります。
うつ病の家族を支えることは簡単なことではありません。家族自身が疲れ、心が折れそうになることもあるでしょう。しかし、少しの理解と接し方の工夫で、本人にとっても家族にとっても過ごしやすい時間を作ることができます。

うつ病の家族に対して、つい「こうすべき」「なぜできないの?」と言いたくなることもあるでしょう。しかし、それが本人をさらに追い詰めてしまうことがあります。大切なのは、アドバイスよりも「聞くこと」。ただ話を聞き、否定せずに受け止める姿勢が、本人にとって安心できる関係を築く第一歩になります。
うつ病の「ずっと寝ている」状態は、病気の回復過程で必要な「休養」かもしれません。無理に動かそうとしたり、責めたりすることは、本人のエネルギーをさらに奪ってしまう恐れがあります。
まずは、「動けない」という状態そのものがうつ病の症状のひとつであるという理解を持ち、批判ではなく寄り添いの気持ちで関わること。そして、家族自身も自分を大切にしながら、必要に応じて支援機関や医療機関とつながることが、長い道のりを歩んでいくうえで大切です。