知的障害とは、18歳までの発達期に知的な発達の遅れが生じ、仕事や日常生活に適応する能力に制限がある状態を指します。この障害の原因はさまざまな中枢神経系の問題によるもので、症状の程度や年齢、体力などにより個人差があります。知的障害のある人が安心して長く働くためには、その人のスキルや状態に合った仕事内容や職場環境が重要です。
今回は、知的障害のある方の働き方や直面しやすい困りごと、対処法、
就職・就労支援についてお話しします。
知的障害は知能指数(IQ)の値だけで判断されるのではなく、社会生活を営むための能力である適応機能も考慮されます。適応機能には食事の準備や金銭管理、
人間関係の構築、集団のルールを守る
などの能力が含まれます。
知的障害の診断方法は医療機関や地域によって異なりますが、厚生労働省の基準では、知能指数(IQ)と日常生活能力水準によって軽度・中度・重度・最重度の
4つの段階に分類されます。
これらの段階は、個人の症状の深刻さや原因となった疾患の有無などに基づいて診断されます。一般的に知的障害の症状が深刻な場合は早期に気づかれることが多いですが、症状が軽い場合は診断が遅れる傾向があります。
アメリカ精神医学会の「DSM-5」によると、知的障害は軽度・中度・重度・最重度の4つの段階に分けられます。
軽度の知的障害では、基本的な日常生活は自分で行えることが多いですが、
言語の発達が遅く、計算や文章の読み書き、スケジュールの立て方などが苦手な場合があります。
中度の知的障害では、適切なサポートがあれば一部の日常生活や家事などを部分的に行うことができますが、言語や運動能力の発達に遅れが見られ、暗黙のルールを理解することが難しいです。
重度の知的障害では、身の回りのことや食事、入浴などの日常生活活動において一人で行うことが困難で、基本的な生活習慣全般にわたってサポートが必要です。言語や運動能力の発達が遅れており、書かれた言葉や数量、時間、金銭などの概念の理解が困難です。
最重度の知的障害では、日常生活で他人からの指示や援助が必要とされ、言語の発達がなく、身振りや絵カード等を使った限られた範囲でのコミュニケーション手段で他人と意思疎通することが可能な場合もあります。
知的障害のある人々の仕事について、
近年では企業が知的障害や他の障害を
持つ人々を「貴重な労働力」として認識し、障害者の雇用を増やす取り組みが増えています。これを支援するために障害者雇用促進法が改正され、民間企業における障害者の雇用率は2022年時点で2.3%に達しています。
厚生労働省の調査によると、2022年時点で民間企業に雇用されている障害者の数は613,958人で、前年比で16,172人、2.7%増加しています。
これは19年連続で過去最高の数であり、障害者の雇用が継続的に増えていることを示しています。その中で知的障害のある人の雇用者数は146,426人で、前年より4.1%増加しています。
知的障害のある人々は個人差があるため、特定の仕事に適しているとは一概には言えませんが、仕事を選ぶ際には自分の特性や体調に合った働き方を見つけることが重要です。
例えば、判断する要素が少なく、単純な作業や反復業務に集中して取り組むことが得意な人は、商品の検品や在庫管理などの軽作業系の仕事や、データ入力業務や紙資料のファイリングなどの事務系の仕事に適性があると考えられます。
これらの仕事は一定の手順や指示に従って作業を行うことが主な特徴で、判断能力や高度な認知能力を必要としません。知的障害のある人が自分に合った仕事を見つけるためには、個々の能力や興味、やる気を考慮する必要があります。
また、サポートや適切な環境が提供されることも重要です。就労支援や職業訓練などのサービスを利用することで、
知的障害のある人々が自分に適した働き方を見つけ、社会参加を促進することが可能となります。
知的障害を持つ人々は、知的能力の状態に応じて様々な困難を抱えることがありますが、適切なサポートや指導、環境の整備を受けることで、仕事を通じて能力を発揮し続けることができます。
障害者雇用においては「合理的配慮」という概念が重要で、これは障害がある人が職場で働きやすいように配慮を受けることを指します。
現在の働き方に困難を感じている場合は、障害者雇用を検討することも一つの選択肢です。障害者雇用では個々の能力やニーズに合わせた柔軟な支援が提供されるため、より良い働き方を見つけることができます。

知的障害のある方の特徴として、
単純な作業において集中力が高く、
継続的に取り組むことができる一方で、
時間や数量などの概念を理解するのが難しく、自分でスケジュールを組むことが苦手な場合があります。
作業量に応じた時間の見積もりが難しいため、予め作業の開始時間と終了時間が書かれた予定表を作成し、職場に掲示することや、声をかけてもらうなどの
サポートが必要です。これにより、仕事の開始と終了の時間を明確にし、作業をスムーズに進めることができます。
また、知的障害のある方へのコミュニケーションのポイントとして、具体的な言葉を使って伝えることが重要です。
曖昧な表現よりも具体的な言葉を使用し、例えば、
「やれる範囲でお願いします」よりも「十件お願いします」と
具体的に言う方が良いです。
さらに、マニュアルや写真、絵などを
使って仕事の手順を視覚的に示すことや、他の人の仕事を観察することで
理解を深めることも有効です。
知的障害のある方とのコミュニケーションでは、具体的な言葉と視覚的手段を用いることで、理解が深まり、仕事の流れを把握しやすくなります。
他の人の模範となる動作を観察することで、自分の仕事に生かすことができ、
コミュニケーションの重要性が強調されます。これにより円滑な仕事の進行が可能となります。
好きな仕事が必ずしも得意な仕事とは限らず、知的障害の有無に関係なく、
自分の得意や不得意な分野を把握せずに仕事を選ぶと、就職後に自分が苦手なことに直面することがあります。
仕事を探す際には、実際にその仕事を
体験し、自分に合っているか確認する
ことが重要です。企業実習などに参加して実際の仕事を経験し、
自分の能力や適性に合った仕事を見つけることが推奨されます。

入社する際には、障害に対する理解や
情報共有が重要です。
自分の障害について周囲の人と話し合い、合理的な配慮やサポートを受けることが大切です。
職場との合意形成がうまくいかない場合やどこまで譲歩すれば良いのか迷った場合は、就労支援機関などのサポートを受けることで、企業側も理解がしやすくなります。
自分の能力や適性に合った仕事を見つけ、障害に対する理解やサポートを得ながら働くことが、長期的な職業生活を築くための重要な要素です。
知的障害のある方が社会人としての
ルールやマナーを習得するためには、
専門の知識や研修が重要です。
集団のルールを守ることや自分の役割を理解するのに苦労する傾向があり、
暗黙の了解として行われる行動にも気を配る必要があります。
例えば、退社時の挨拶などです。
支援スタッフと協力して会社内の暗黙のルールを考えることも有効であり、
定着支援などの取り組みを活用し、
スキルを身につけることができます。
地域の就労支援関係機関では、障害者の職業生活の自立をサポートするために
職業リハビリテーションを行っており、福祉施策との連携を重視しています。
全国の就労支援関係機関としては、
ハローワークが全国に554か所あり、
障害者の状況に合わせて適切な職業を
紹介し、職業指導を行っています。
地域障害者職業センターは全国に47か所あり、職業評価や準備訓練などを通じて障害者の職場適応を支援しており、
ジョブコーチも活動しています。
障害者職業・生活支援センターは全国に338か所あり、民間が運営しています。
就職先の探し方や職場での問題解決、
生活支援や福祉制度の利用方法など、
幅広い領域でのサポートを提供しています。
まとめとして、知的障害のある方は社会生活に適応する能力に制限があるため、日常生活や仕事において様々な困りごとが生じる可能性があります。
知的障害のある方にとって重要なのは、周囲の理解を得ることであり、
理解を得るためには周囲の人々に対して障害についての情報提供や啓発活動が必要です。
適切な仕事内容や職場環境を選ぶことも重要で、知的障害のある方が自分のスキル、状態に合った仕事を見つけることで安心して長期間働き続けることができます。
一人では難しい場合もあるので、専門的な機関やセンターのサポートを活用することが有益です。
ハローワークや
地域障害者職業センター、
障害者職業・生活支援センターなどを
利用できます。
以上が知的障害のある方の仕事や就労支援についてのまとめです。
お読みいただきまして、ありがとう
ございました。