【心療内科】しんどいことが多すぎる

はじめに

私たちは日々、さまざまな困難やストレスに直面しながら生きています。時には、「もう無理」「しんどいことが多すぎる」と感じてしまうこともあるでしょう。今回のご相談は、まさにそんな切実な声に対する答えを考えていくものです。

その結論を先にお伝えするならば、「大きな問題を一つの塊として捉えるのではなく、分けて整理し、優先順位をつけて少しずつ対処していくことが大切である」ということになります。

しかし、実際にそのような考え方を持つことができるまでには、さまざまなハードルがあります。今回は、なぜ「しんどいことが多すぎる」と感じてしまうのか、その背景を丁寧に見つめ直しながら、具体的な対処のヒントを探っていきたいと思います。

【心療内科】しんどいことが多すぎる

「しんどいことが多すぎる」と感じるときの実態

臨床の現場でも、「どうにもならないくらいにしんどい」という訴えはよく耳にします。それは、いくつもの苦しい出来事が偶然同時に起こっているかのように見えることもあります。しかし実際には、すべての問題が本当に深刻であるとは限らない場合もあるのです。

例えば、ある人が「仕事も家庭も人間関係もすべてつらい」と訴えていたとしても、よくよく話を聞いていくと、その中に「実際にはそれほどでもないが気になってしまうこと」が混ざっているケースもあります。特に、他の人が気にしないような細かいことまで拾い上げてしまい、結果的に“しんどさ”が増してしまっているということもあるのです。

否定的な思考としんどさの悪循環

しんどいと感じる状況が長く続くと、私たちの思考は自然と否定的な方向に引きずられていきます。すると、ちょっとしたトラブルや不快な出来事までもが「大きな問題」として認識されやすくなってしまいます。このように、「ストレス → 否定的な思考 → より多くのストレス」という悪循環に陥ることで、実際以上に問題が多く感じられるようになるのです。

では、なぜ「しんどさ」が強く感じられるのか?

この問いに対する答えは、主に3つの要素に整理できます。

① 精神症状の影響

うつ病や統合失調症、自閉スペクトラム症(ASD)注意欠如・多動症(ADHD)、または知的障害などが背景にある場合、それぞれ特有の困難さが影響していることがあります。

うつ病では、思考力や判断力が著しく低下し、問題を適切に整理することが難しくなるため、すべてが圧倒的に感じられる傾向があります。また、ASDでは「細かい点に過敏になる」、ADHDでは「注意が分散しやすく、不要な刺激まで拾ってしまう」など、それぞれの特性に応じた“しんどさの感じ方”が存在します。

②ストレス耐性の問題

人によってストレスへの耐久力には大きな個人差があります。ストレス耐性が低い人は、日常的なトラブルでも過度に反応してしまい、「すべてがしんどい」と感じやすくなる傾向があります。たとえば、「完全主義」や「他人と自分を過度に比較する癖」があると、ほんの些細な失敗にも強い自己否定を感じてしまいます。また、過去の嫌な経験に強く引っ張られてしまうことで、現実以上に問題が大きく見えてしまうこともあります。

一方で、ストレス対処の技術や習慣を学ぶことで、この耐性を徐々に高めていくことも可能です。

③問題をうまく分けられていない

大きな問題を一つの塊として捉えてしまうと、その重みに圧倒されてしまいます。実際には、漠然と「全部つらい」と感じている中にも、「優先して対処すべきこと」と「いまは手をつけなくてもいいこと」が混在しているものです。

このとき、問題を細かく分けていくことで、一つひとつに向き合う余力が生まれます。また、「どの問題から手をつけるべきか」という判断も、問題を可視化することでより明確になります。

圧倒されないための具体的対策とは?

では、「しんどさ」に押しつぶされないためには、どのような対処が可能なのでしょうか。ここでは、上記の3つの要因に応じた対策を簡潔に紹介します。

① 精神症状が原因の場合

精神疾患が背景にある場合は、まずはその治療が最優先です。薬物療法や心理療法を通じて、精神的な安定を取り戻すことが、問題解決に向かうための第一歩になります。

発達障害などの特性に基づく困難がある場合には、自分の特性を理解し、それに合った工夫や支援を取り入れていくことが重要です。また、場合によっては「自分に合った環境を選ぶ」という視点も大切になってきます。

② ストレス耐性が課題の場合

まずは、自分にとってストレスとなる考え方のクセや人間関係を見直してみることが必要です。その上で、反芻思考(嫌なことを繰り返し考えてしまう)から抜け出す技術、ネガティブな言葉を受け流す力を身につけることが有効です。

加えて、体力の維持や生活リズムの安定など、日常的な自己管理を整えることもストレス耐性を支える“土台”になります。

③ 問題を分けられていない場合

「いま本当に取り組むべき問題は何か」を見極めることが重要です。そして、問題を「具体的で小さな要素」に分けた上で、優先順位を決めていきましょう。

また、どうしても解決できない問題については、「受け入れる」という選択も必要になります。すべてを自分一人で何とかしようとするのではなく、「できること」と「できないこと」を分ける勇気も大切です。

【心療内科】しんどいことが多すぎる

おわりに

「しんどいことが多すぎる」と感じたとき、私たちは往々にして問題に圧倒されてしまいがちです。しかし、その背景には精神的な症状、ストレス耐性の差、問題の整理不足といった要因が複雑に絡んでいます。

それぞれの要因に対して丁寧に対処していくことで、「すべてがつらい」という漠然としたしんどさは、少しずつ和らげていくことが可能になります。いま感じている“重さ”も、適切な理解と方法によって、確実に軽くしていけるはずです。