うつ病と発達障害。一見すると、それぞれ別のカテゴリーに属する精神疾患のように思えるかもしれません。実際、うつ病は一時的な脳の不調を背景に発症する疾患であり、発達障害は生まれつきの脳の特性によるもので、根本的に「治る」ものではないとされています。
しかし、現場ではこの二つが併存するケースが少なくありません。そして、両者が重なり合うことにより、診断・治療・支援のいずれにおいても、より複雑な対応が求められる状況が見られるようになってきています。
本記事では、「うつ病と発達障害」の関係性について、特に重要とされる3つのポイントに焦点をあてて詳しくご紹介します。
うつ病は、落ち込み、意欲の低下、不安感などの精神的症状を中心とした病気で、脳内の神経伝達物質(とくにセロトニンなど)のバランスが崩れることが背景とされています。
主な症状
治療は主に休養、薬物療法(抗うつ薬など)、精神療法(カウンセリングなど)の3本柱によって進められます。
発達障害は、生まれつきの脳の特性によって、注意力、行動のコントロール、人との関わり方などに偏りが見られる状態を指します。大きくは以下の2種類が代表的です。
発達障害は薬で“完治”するものではなく、本人の特性の理解と、周囲の支援や環境調整が重要です。
発達障害のある人は、環境に適応しづらかったり、他者との関係でトラブルを抱えやすい傾向にあり、その結果として強いストレスや自己否定感を抱えやすくなります。こうした慢性的なストレスが積み重なることで、うつ病のリスクが高まるとされています。
発達障害でうつ病の引き金になりやすいストレス例
これらのストレスが続けば続くほど、心身ともに疲弊し、うつ状態に陥りやすくなってしまうのです。
リスクを減らすには

特に大人の場合、「うつ病でメンタルクリニックを受診したことがきっかけで、実は発達障害があったと気づいた」というケースが多く見られます。
発達障害は子どもの頃から存在するものですが、比較的目立たない特性を持つ人は、学生時代には大きな問題が起きにくいため、診断されずに見過ごされてしまうことがあります。しかし、社会に出てから適応の難しさに直面し、ストレスが限界に達した結果、うつ病として症状が表面化するのです。
大人になってから見つかりやすい発達障害の例
このようなタイプは、特に女性に多い傾向があります。家庭や学校で“いい子”とされがちだったため、発達障害の特性が表に出にくかったのです。
特徴的なポイント
うつ病と発達障害が併存している場合、うつ病の治療が長引くケースも多く報告されています。これは、発達障害に由来する「生きづらさ」が根本的に解消されないため、ストレス源が残り続けてしまうからです。
こうした状態を「重ね着症候群」と呼ぶことがあります。これは、発達障害の上に、うつ病や不安障害などの精神疾患が“重なる”ように発症することを指します。
重ね着症候群の特徴
対策

うつ病と発達障害は、原因や治療のアプローチが異なる別々の疾患です。しかし、現実にはお互いに強く影響を及ぼし合い、重なって現れることも少なくありません。
うつ病と発達障害の関係として、特に重要な3つの視点をまとめると以下のようになります。
こうした関係性を知っておくことは、当事者にとっても、支援する側にとっても非常に重要です。早期発見や適切な支援があれば、うつ病の発症リスクを下げることも、併存していてもより良い回復を目指すことも可能です。
一人ひとりの「特性」と「病気」を切り分けながら、無理のない生活や働き方を模索し、必要なサポートを適切に受けられる社会へ――。そのためにも、私たち一人ひとりが「知ること」から始めてみませんか?