今回は、「うつ病でも吐き気が出ますか?」というご質問について詳しく解説していきます。
答えを先にお伝えすると、「吐き気はうつ病の症状として現れることが少なくありません。ただし、抗うつ薬の副作用とは原因が異なります」というのが基本的な見解です。
吐き気は内科的な問題だけでなく、心理的な影響によっても引き起こされることがあります。本記事では、うつ病に伴う吐き気の特徴や、診断・治療の考え方について丁寧に説明していきます。
「吐き気」とは、いわゆる胃のむかつきや、吐きそうになるような不快な感覚を指します。この症状は多くの身体的な疾患によって起こることがありますが、精神的な不調が体に反映されて現れることも少なくありません。
吐き気の出方は人それぞれです。突然強く感じることもあれば、じわじわと慢性的に続くこともあります。原因を見極めるには、身体と心の両面からのアプローチが必要になります。
うつ病は、「落ち込み」や「意欲の低下」といった心の不調が目立つ疾患です。その背景には、脳内の神経伝達物質、とくにセロトニンの不足などが関係していると考えられています。
うつ病では心の症状だけでなく、体にもさまざまな影響が出ることがあります。代表的な症状を整理すると、以下の3つに分類できます。
とくに「体の症状」は見逃されやすい一方で、本人にとっては非常につらいものです。これらの体調不良が、うつ病の存在を知らせるサインになることもあります。

うつ病の症状の一つとして、吐き気が出ることはしばしばあります。とくに、次のような特徴がある吐き気は、うつ病との関連が疑われます。
このようなケースでは、うつ病や自律神経の不調が背景にある可能性があります。精神的なストレスが、体の機能に影響を与えているのです。
吐き気だけではうつ病と断定することはできませんが、次のような要素が加わる場合は、精神的な原因を視野に入れることが大切です。
落ち込みや意欲の低下、不眠など、典型的なうつ病の症状を併発している場合、吐き気もその一環である可能性が高まります。
繰り返し吐き気を訴えていても、検査では特に問題が見つからない。このようなときは、心因的な要因が関与しているかもしれません。
一時的な体調不良ではなく、数週間から数か月にわたって吐き気が続くようであれば、うつ病が背景にあるケースも想定されます。
「落ち込みと吐き気があれば、うつ病と考えてよいのでしょうか?」という質問に対しては、「まず身体的な原因の除外が必要です」とお答えするのが適切です。
たとえうつ病が疑われたとしても、まずは標準的な内科的診断と治療を受けることが基本となります。胃や食道に実際に炎症などが生じている「心身症」というケースもあり、身体の治療が有効な場合もあるからです。
したがって、まずは内科的な診察を受け、異常が見つからない場合に精神科的なアプローチを検討するという流れが大切です。

内科での治療を一定期間続けても改善が見られない場合は、うつ病が背景にあることを考えるタイミングです。とくに以下のような傾向があれば、精神科への相談をおすすめします。
精神的な原因であれば、うつ病の治療を通じて吐き気の改善が期待できることもあります。
もう一つよくあるご質問に、「吐き気があると抗うつ薬は使いにくいのではないか?」というものがあります。
結論から申し上げると、「吐き気があっても抗うつ薬の使用は問題ない場合が多い」です。
うつ病の治療でよく用いられるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、治療開始初期に吐き気などの副作用が出ることがあります。ただし、これは薬に体が慣れていないために起こる一時的な反応であり、数日から1週間程度で自然に収まることが多いです。
一方で、うつ病そのものによる吐き気は、自律神経の乱れなどが関係しており、SSRIの副作用とは原因が異なります。したがって、うつ病の治療を進めることが結果的に吐き気の改善にもつながる場合があります。

心理的な抵抗がある場合には、以下のような対応を取りながら治療を進めていくとよいでしょう。
治療は医師との対話を重ねながら、無理なく続けられる方法を一緒に見つけていくことが大切です。
今回は、「うつ病でも吐き気が出ることはあるのか?」というテーマについて解説しました。
心と体は密接に関わっています。吐き気が長引くときは、心のケアも視野に入れながら、適切な医療機関に相談することをおすすめします。